1 00:00:26,317 --> 00:00:29,154 注記のない音楽は マイルスの演奏 2 00:00:29,237 --> 00:00:31,740 マイルスの声: カール・ランブリー 3 00:00:33,908 --> 00:00:37,537 音楽は いつだって 俺の呪いだった 4 00:00:37,662 --> 00:00:39,998 吹かずにはいられない 5 00:00:40,874 --> 00:00:45,462 寝ても覚めても 音楽のことを考えてる 6 00:00:46,087 --> 00:00:47,881 音楽は身近で― 7 00:00:48,423 --> 00:00:50,717 何より大切なものだ 8 00:01:28,296 --> 00:01:31,091 生きるとは冒険と挑戦だ 9 00:01:31,466 --> 00:01:34,344 安定を求めて何になる 10 00:01:35,929 --> 00:01:40,058 これまでも俺は 俺らしく生きてきた 11 00:01:41,267 --> 00:01:45,355 創造し続けたいのなら 変化を恐れるな 12 00:01:49,400 --> 00:01:54,197 1926年 13 00:02:14,884 --> 00:02:20,598 生まれはイリノイ州アルトン ミシシッピ川沿岸の町だ 14 00:02:22,100 --> 00:02:25,103 イーストセントルイスへ移住 15 00:02:27,272 --> 00:02:31,025 田舎者だらけの田舎町だった 16 00:02:31,818 --> 00:02:35,697 特に白人住民は ひどい田舎気質で 17 00:02:36,281 --> 00:02:38,324 根っからの差別主義だ 18 00:02:40,451 --> 00:02:42,704 彼は裕福な家庭で育った 19 00:02:43,496 --> 00:02:45,290 父親は歯科医だ 20 00:02:45,707 --> 00:02:46,291 牧場も所有していて― 21 00:02:46,291 --> 00:02:48,960 牧場も所有していて― 22 00:02:46,291 --> 00:02:48,960 イーストセントルイス 在住 レジナルド・ペティ 23 00:02:48,960 --> 00:02:49,794 イーストセントルイス 在住 レジナルド・ペティ 24 00:02:49,794 --> 00:02:50,712 イーストセントルイス 在住 レジナルド・ペティ 25 00:02:49,794 --> 00:02:50,712 牛や豚を飼っていた 26 00:02:50,712 --> 00:02:51,629 牛や豚を飼っていた 27 00:02:52,130 --> 00:02:54,340 町では一流の家庭だ 28 00:02:54,591 --> 00:02:58,761 作家 クインシー・トループ 29 00:02:54,591 --> 00:02:58,761 父親はイリノイ州で 2番目の金持ちだった 30 00:02:58,845 --> 00:02:59,262 でもマイルスが育ったのは ジム・クロウ時代よ 31 00:02:59,262 --> 00:03:03,808 でもマイルスが育ったのは ジム・クロウ時代よ 32 00:02:59,262 --> 00:03:03,808 作家 ファラ・グリフィン 33 00:03:04,267 --> 00:03:07,395 いくら父親が裕福でも― 34 00:03:07,478 --> 00:03:12,108 彼が差別の対象から 外されることはない 35 00:03:12,192 --> 00:03:14,235 特に田舎町ではね 36 00:03:16,654 --> 00:03:20,450 13歳の誕生日に 父がトランペットをくれた 37 00:03:21,451 --> 00:03:25,580 母はバイオリンを 贈りたかったようだ 38 00:03:26,456 --> 00:03:28,750 両親は大ゲンカした 39 00:03:29,959 --> 00:03:33,213 口論の絶えない2人だった 40 00:03:34,339 --> 00:03:35,924 大声で言い合う人たちよ 41 00:03:35,924 --> 00:03:38,301 大声で言い合う人たちよ 42 00:03:35,924 --> 00:03:38,301 幼少期の友人 リー・アニー・ボナー 43 00:03:38,301 --> 00:03:38,551 幼少期の友人 リー・アニー・ボナー 44 00:03:38,551 --> 00:03:40,511 幼少期の友人 リー・アニー・ボナー 45 00:03:38,551 --> 00:03:40,511 きっと そのことが 若い彼の記憶に刻まれたのね 46 00:03:40,511 --> 00:03:43,932 きっと そのことが 若い彼の記憶に刻まれたのね 47 00:03:44,015 --> 00:03:46,893 そのすべてを吸収した 48 00:03:47,435 --> 00:03:51,564 怒りの感情や 女性に対する態度もだ 49 00:03:53,983 --> 00:03:58,071 母が手近な物を 父に投げつけると― 50 00:03:58,529 --> 00:04:00,823 父は怒って母を殴った 51 00:04:00,907 --> 00:04:03,201 歯が2本 折れた 52 00:04:04,953 --> 00:04:09,415 それから母は変わった 何を思ったんだろうか 53 00:04:11,251 --> 00:04:13,836 マイルスは天才だった 54 00:04:14,545 --> 00:04:18,383 だが変わり者でもあった 55 00:04:18,466 --> 00:04:19,884 〝リンカーン高校〞 56 00:04:19,884 --> 00:04:20,843 〝リンカーン高校〞 57 00:04:19,884 --> 00:04:20,843 彼は森に出かけ― 58 00:04:20,843 --> 00:04:21,886 彼は森に出かけ― 59 00:04:22,387 --> 00:04:28,726 動物や鳥に耳をすまし その音を音楽で表現した 60 00:04:31,187 --> 00:04:34,524 常に彼のやり方があった 61 00:04:36,901 --> 00:04:38,736 若くして活動を始め 62 00:04:38,820 --> 00:04:43,116 エディ・ランドール& ブルー・デビルズに参加した 63 00:04:43,533 --> 00:04:45,994 若くて小柄な男だ 64 00:04:46,077 --> 00:04:49,914 作家 アシュリー・カーン 65 00:04:46,077 --> 00:04:49,914 ステージ用のスーツも ダボダボだった 66 00:04:50,081 --> 00:04:50,707 他のメンバーが 昼間の仕事をするなか 67 00:04:50,707 --> 00:04:53,918 他のメンバーが 昼間の仕事をするなか 68 00:04:50,707 --> 00:04:53,918 歴史学者 ベンジャミン・コースラ 69 00:04:53,918 --> 00:04:54,043 歴史学者 ベンジャミン・コースラ 70 00:04:54,043 --> 00:04:55,378 歴史学者 ベンジャミン・コースラ 71 00:04:54,043 --> 00:04:55,378 マイルスは10代で 音楽監督を務めていた 72 00:04:55,378 --> 00:04:59,465 マイルスは10代で 音楽監督を務めていた 73 00:05:00,008 --> 00:05:04,971 “アイ・ラブ・ザ・リズム・ イン・ア・リフ” ビリー・エクスタイン楽団 74 00:05:08,349 --> 00:05:13,980 マイルスの人生の岐路は 高校卒業後の夏だった 75 00:05:14,063 --> 00:05:18,609 ビリー・エクスタイン楽団で 演奏したんだ 76 00:05:22,488 --> 00:05:26,117 チャーリー・パーカーに ディジー・ガレスピー 77 00:05:26,242 --> 00:05:28,619 先駆者がそろってた 78 00:05:28,703 --> 00:05:32,582 モダン・ジャズの未来が そこにあった 79 00:05:37,545 --> 00:05:40,715 人生最高の気分を 味わったのは― 80 00:05:40,798 --> 00:05:45,011 ディズ(ディジー)とバード(パーカー)に 出会った時だ 81 00:05:45,470 --> 00:05:47,347 俺は18歳だった 82 00:05:48,514 --> 00:05:52,894 この時 ニューヨークの 52丁目に行こうと決めた 83 00:05:53,061 --> 00:05:54,354 ジャズの街だ 84 00:05:55,772 --> 00:06:02,528 1944年 85 00:06:14,374 --> 00:06:15,917 W(ウォルター)・クロンカイトです 86 00:06:16,000 --> 00:06:19,170 戦時は新しいものが 流行します 87 00:06:19,253 --> 00:06:24,300 奇妙な流行といえば ジャズという雑音です 88 00:06:24,384 --> 00:06:26,886 この妙な音楽のせいで― 89 00:06:26,969 --> 00:06:30,348 天候は悪化 モラルが低下しました 90 00:06:34,477 --> 00:06:37,939 52丁目は ジャズクラブのメッカだ 91 00:06:37,939 --> 00:06:39,273 52丁目は ジャズクラブのメッカだ 92 00:06:37,939 --> 00:06:39,273 ミュージシャン ジミー・ヒース 93 00:06:39,273 --> 00:06:39,732 ミュージシャン ジミー・ヒース 94 00:06:39,732 --> 00:06:42,735 ミュージシャン ジミー・ヒース 95 00:06:39,732 --> 00:06:42,735 道路の両側に クラブが並んでる 96 00:06:42,735 --> 00:06:43,027 道路の両側に クラブが並んでる 97 00:06:47,407 --> 00:06:51,411 52丁目で聴く演奏は すべてが新鮮だった 98 00:06:51,953 --> 00:06:54,831 聴くたびに感動する 99 00:06:55,665 --> 00:06:58,543 最高すぎて怖いほどだ 100 00:07:02,255 --> 00:07:05,925 ミュージシャン ジミー・コブ 101 00:07:02,255 --> 00:07:05,925 外のスピーカーで 店内の演奏が聴ける 102 00:07:05,925 --> 00:07:06,384 外のスピーカーで 店内の演奏が聴ける 103 00:07:06,467 --> 00:07:07,218 外で聴いていられるのは ドアマンが来るまでだ 104 00:07:07,218 --> 00:07:11,764 外で聴いていられるのは ドアマンが来るまでだ 105 00:07:07,218 --> 00:07:11,764 作家 ダン・モーゲンスターン 106 00:07:11,764 --> 00:07:12,598 外で聴いていられるのは ドアマンが来るまでだ 107 00:07:12,682 --> 00:07:15,435 見つかれば追い払われる 108 00:07:16,144 --> 00:07:19,188 “ジュリアード音楽院” 109 00:07:20,815 --> 00:07:24,318 彼はジュリアードに入り 音楽を学んだ 110 00:07:25,153 --> 00:07:29,824 彼が音楽家になることを 母親も望んでいた 111 00:07:30,783 --> 00:07:34,579 マイルスは真剣に勉強したわ 112 00:07:34,662 --> 00:07:37,874 そこで学べることを重視した 113 00:07:39,292 --> 00:07:44,505 年寄りたちは反対した “学校は白人の演奏を教える” 114 00:07:45,173 --> 00:07:49,218 “理論から学べば 音から感情が消える”と 115 00:07:50,052 --> 00:07:54,599 俺は偉大な作曲家の 楽譜から学び― 116 00:07:55,308 --> 00:07:58,311 音楽のすべてを知りたかった 117 00:07:59,312 --> 00:08:03,649 でもジュリアードには 何かが欠けていたの 118 00:08:04,442 --> 00:08:08,279 マイルスは昼間に学校に通い 119 00:08:08,362 --> 00:08:11,574 夜は52丁目に向かった 120 00:08:13,618 --> 00:08:17,330 ニューヨークで バードとディズを捜したが 121 00:08:17,830 --> 00:08:20,082 カネが底を尽きた 122 00:08:21,125 --> 00:08:24,170 だが ある晩 背後で声がした 123 00:08:24,253 --> 00:08:27,131 “俺を捜してるのか?”と 124 00:08:28,049 --> 00:08:30,760 ふり返るとバードだった 125 00:08:31,219 --> 00:08:34,472 “ホットハウス” チャーリー・パーカー 126 00:08:37,433 --> 00:08:40,728 ビバップは ミュージシャンにとって― 127 00:08:41,521 --> 00:08:44,899 作家 グレッグ・テイト 128 00:08:41,521 --> 00:08:44,899 科学者の マンハッタン計画と同じ 129 00:08:46,359 --> 00:08:50,321 “音の物理学者”が 本気で作った音楽だ 130 00:08:51,113 --> 00:08:54,325 ビバップが ジャズを進化させた 131 00:08:57,662 --> 00:09:02,208 その開発現場に マイルスが参入したんだ 132 00:09:09,882 --> 00:09:12,385 ビバップは黒人音楽だ 133 00:09:12,468 --> 00:09:15,096 白人のジャズに飽きた 黒人ミュージシャンが作った 134 00:09:15,096 --> 00:09:17,640 白人のジャズに飽きた 黒人ミュージシャンが作った 135 00:09:15,096 --> 00:09:17,640 歴史学者 ジェラルド・アーリー 136 00:09:17,640 --> 00:09:18,349 白人のジャズに飽きた 黒人ミュージシャンが作った 137 00:09:22,728 --> 00:09:26,649 笑って踊って 騒ぎ立てるだけなんて― 138 00:09:27,066 --> 00:09:28,651 面白くない 139 00:09:29,777 --> 00:09:30,069 目指すは ストラヴィンスキーさ 140 00:09:30,069 --> 00:09:32,363 目指すは ストラヴィンスキーさ 141 00:09:30,069 --> 00:09:32,363 ミュージシャン クインシー・ジョーンズ 142 00:09:32,363 --> 00:09:32,780 ミュージシャン クインシー・ジョーンズ 143 00:09:32,780 --> 00:09:34,907 ミュージシャン クインシー・ジョーンズ 144 00:09:32,780 --> 00:09:34,907 生粋のアーティストだ 145 00:09:34,907 --> 00:09:35,199 生粋のアーティストだ 146 00:09:36,867 --> 00:09:41,581 マイルスは 優雅な男たちを目にして 147 00:09:41,706 --> 00:09:45,501 彼らの持つ威厳や 高貴さを学んだ 148 00:09:45,585 --> 00:09:46,586 いばるんだ 149 00:09:51,465 --> 00:09:55,803 ジュリアード音楽院に 入学した直後― 150 00:09:56,178 --> 00:09:59,265 同級生のアイリーンと 再会する 151 00:09:59,432 --> 00:10:03,436 連れ子がいて妊娠もしていた 152 00:10:04,687 --> 00:10:09,900 何の前触れもなく 彼女が玄関の扉をたたいた 153 00:10:10,192 --> 00:10:11,986 母の差し金だ 154 00:10:12,778 --> 00:10:17,783 あの年齢では無理よ すべては抱えきれない 155 00:10:17,867 --> 00:10:21,370 家には子供たちがいたし 156 00:10:21,829 --> 00:10:26,542 本気で音楽院で学ぶには 時間も必要よ 157 00:10:26,626 --> 00:10:31,088 自分の音楽に費やす時間も 必要だった 158 00:10:31,339 --> 00:10:34,133 何かを手放す時がきたの 159 00:10:36,302 --> 00:10:39,138 音楽は彼のすべてだった 160 00:10:39,305 --> 00:10:42,308 セクシーであり官能的であり 161 00:10:42,391 --> 00:10:44,894 権力もユーモアもある 162 00:10:45,394 --> 00:10:47,855 でも誰とも共感できない 163 00:10:48,689 --> 00:10:51,484 パートナーが必要だった 164 00:10:54,445 --> 00:10:57,073 ある日 教授が言った 165 00:10:57,156 --> 00:11:00,368 “ブルースは奴隷制度下の 奴隷の苦しみから生まれた” 166 00:11:00,368 --> 00:11:03,996 “ブルースは奴隷制度下の 奴隷の苦しみから生まれた” 167 00:11:00,368 --> 00:11:03,996 ミュージシャン ウェイン・ショーター 168 00:11:03,996 --> 00:11:04,121 ミュージシャン ウェイン・ショーター 169 00:11:04,121 --> 00:11:04,997 ミュージシャン ウェイン・ショーター 170 00:11:04,121 --> 00:11:04,997 “そして彼らの悲しみの声が” 171 00:11:04,997 --> 00:11:07,917 “そして彼らの悲しみの声が” 172 00:11:08,000 --> 00:11:11,712 “ブルースとなり 人々をつなげた”と 173 00:11:11,796 --> 00:11:15,800 マイルスは教室の後ろで 手を挙げた 174 00:11:17,259 --> 00:11:18,427 “何か?” 175 00:11:18,969 --> 00:11:20,179 彼は― 176 00:11:21,472 --> 00:11:24,183 “このウソつきめ” 177 00:11:26,185 --> 00:11:27,687 教室を去った 178 00:11:30,064 --> 00:11:34,026 マイルスは何ヵ月も バードと過ごし― 179 00:11:34,110 --> 00:11:35,861 録音を共にした 180 00:11:36,404 --> 00:11:39,365 呼べば すぐに現れる 181 00:11:39,990 --> 00:11:42,576 毎晩 バードと演奏した 182 00:11:42,660 --> 00:11:45,788 彼は冒頭を吹いて ステージを降りる 183 00:11:46,288 --> 00:11:48,124 マイルスは当時― 184 00:11:48,791 --> 00:11:52,878 恥ずかしさとストレスで 毎晩 吐いた 185 00:11:53,295 --> 00:11:56,716 いつ倒れても おかしくなかった 186 00:11:57,633 --> 00:11:59,176 対策はあった 187 00:12:11,814 --> 00:12:16,110 彼らしさを象徴する スタイルを見つけた 188 00:12:16,485 --> 00:12:19,530 ストレートで感情のある音 189 00:12:20,281 --> 00:12:21,490 まさに彼よ 190 00:12:20,281 --> 00:12:21,490 音楽学者 タミー・L・カーノドル 191 00:12:21,490 --> 00:12:21,574 音楽学者 タミー・L・カーノドル 192 00:12:21,574 --> 00:12:24,201 音楽学者 タミー・L・カーノドル 193 00:12:21,574 --> 00:12:24,201 独特で彼らしい音だった 194 00:12:32,501 --> 00:12:37,214 ギル・エヴァンスとは 互いに尊敬し合っていた 195 00:12:37,339 --> 00:12:40,301 どちらも音楽に打ち込み― 196 00:12:40,509 --> 00:12:43,053 人生をささげてきた 197 00:12:45,055 --> 00:12:48,684 ギルと俺は認め合っていた 198 00:12:49,018 --> 00:12:51,353 聞こえる音楽が同じだ 199 00:12:52,438 --> 00:12:57,485 ’40年代後半にギルと 「クールの誕生」を制作した 200 00:12:57,610 --> 00:12:58,861 ノネットで― 201 00:12:59,028 --> 00:13:05,326 モダンクラシックと ジャズを融合した作品だ 202 00:13:13,125 --> 00:13:16,754 皆さまに 新しい音楽をお届けします 203 00:13:16,837 --> 00:13:22,009 偉大なマイルス率いる モダン・ジャズの新鋭です 204 00:13:25,137 --> 00:13:29,517 コンサート向けの音楽を 作ったんだと思う 205 00:13:29,600 --> 00:13:33,604 あえて躍動感を消した 206 00:13:33,813 --> 00:13:37,066 52丁目らしいファンクもない 207 00:13:46,033 --> 00:13:49,161 でもジャズの新色を 作るために― 208 00:13:49,286 --> 00:13:52,331 パレットを広げた作品だ 209 00:13:58,671 --> 00:14:00,798 彼には分かっていた 210 00:14:00,881 --> 00:14:03,175 音楽を進化させるには― 211 00:14:03,259 --> 00:14:06,637 未知の場所に行くべきだと 212 00:14:13,352 --> 00:14:16,605 ヨーロッパは 期待に胸を躍らせます 213 00:14:17,147 --> 00:14:18,732 パリは自由です 214 00:14:19,316 --> 00:14:22,194 ナチスから解放されました 215 00:14:23,070 --> 00:14:25,114 “光の都市”が復活 216 00:14:34,832 --> 00:14:39,253 女優 ジュリエット・グレコ 217 00:14:34,832 --> 00:14:39,253 〈フランスにとっては 独特な時代だった〉 218 00:14:39,503 --> 00:14:40,546 〈とても〉 219 00:14:42,006 --> 00:14:45,551 〈戦後の幸福感に満ちていた〉 220 00:14:49,680 --> 00:14:52,975 〈爆弾は2つ “核兵器”と“解放”よ〉 221 00:14:55,853 --> 00:14:58,355 戦後は ヨーロッパ全体が変わり― 222 00:14:58,355 --> 00:14:59,940 戦後は ヨーロッパ全体が変わり― 223 00:14:58,355 --> 00:14:59,940 作家 ヴィンセント・ ベシエール 224 00:14:59,940 --> 00:15:00,024 作家 ヴィンセント・ ベシエール 225 00:15:00,024 --> 00:15:02,776 作家 ヴィンセント・ ベシエール 226 00:15:00,024 --> 00:15:02,776 時代に合う音楽が求められた 227 00:15:02,776 --> 00:15:03,277 時代に合う音楽が求められた 228 00:15:04,069 --> 00:15:05,237 ジャズだ 229 00:15:05,404 --> 00:15:06,572 〈マイルスと―〉 230 00:15:05,404 --> 00:15:06,572 1949年 パリ 231 00:15:06,572 --> 00:15:06,655 1949年 パリ 232 00:15:06,655 --> 00:15:08,782 1949年 パリ 233 00:15:06,655 --> 00:15:08,782 〈タッド・ダメロン& マイルスです〉 234 00:15:08,782 --> 00:15:09,283 〈タッド・ダメロン& マイルスです〉 235 00:15:10,451 --> 00:15:11,911 〈マイルスです〉 236 00:15:14,496 --> 00:15:16,999 初めての海外公演だった 237 00:15:17,458 --> 00:15:21,670 パリは最高だ 俺を歓迎してくれた 238 00:15:22,463 --> 00:15:26,300 フランスは料理もウマいと 言っていた 239 00:15:26,800 --> 00:15:32,014 パリの空気も より美しく香ってるとね 240 00:15:33,140 --> 00:15:36,685 最高のひと時だったはずだ 241 00:15:38,646 --> 00:15:40,689 音楽は俺の人生だ 242 00:15:40,940 --> 00:15:45,986 音楽に夢中で 恋するヒマなどなかった 243 00:15:46,737 --> 00:15:49,156 ジュリエットに会うまでは… 244 00:15:52,409 --> 00:15:56,997 “パリの空の下” ジュリエット・グレコ 245 00:15:58,082 --> 00:16:02,127 〈ステージの袖口から 初めて彼を見た〉 246 00:16:05,381 --> 00:16:09,718 〈すてきだった 芸術的な美さのある人よ〉 247 00:16:12,012 --> 00:16:17,142 〈今でも英語は苦手だけど 当時はもっとひどかった〉 248 00:16:17,935 --> 00:16:19,812 〈でも通じ合えた〉 249 00:16:21,438 --> 00:16:22,690 〈奇跡だわ〉 250 00:16:23,816 --> 00:16:25,943 〈あれこそ愛の力よ〉 251 00:16:32,408 --> 00:16:35,577 セーヌ川のほとりを 一緒に歩き― 252 00:16:35,661 --> 00:16:40,582 手をつなぎ口づけし 見つめ合って口づけた 253 00:16:41,917 --> 00:16:43,836 彼女が大切だった 254 00:16:44,128 --> 00:16:47,339 あんな気持ちは初めてだ 255 00:16:48,632 --> 00:16:52,177 彼女を通じて人脈が広がり 256 00:16:52,261 --> 00:16:57,850 当時の偉大な知識人たちと 交流を持った 257 00:16:58,308 --> 00:17:02,646 ジャズは芸術の極みだと 考えられていた 258 00:17:02,730 --> 00:17:06,358 フランスの知識人の間ではね 259 00:17:07,443 --> 00:17:11,113 ピカソやサルトルとも会い 260 00:17:11,822 --> 00:17:15,743 今では巨匠と呼ばれる人と 対等だった 261 00:17:17,494 --> 00:17:23,167 パリはマイルスの可能性を 開花させてくれた 262 00:17:23,500 --> 00:17:27,796 自分を偽らずに 彼らしくいられる場所よ 263 00:17:28,088 --> 00:17:30,924 人種という壁を越えてね 264 00:17:31,175 --> 00:17:33,886 人種はハンデではなく― 265 00:17:33,969 --> 00:17:37,890 むしろ背中を 押してくれるものだった 266 00:17:38,724 --> 00:17:43,228 こんな白人もいるんだと パリで初めて知った 267 00:17:43,687 --> 00:17:46,440 差別しない白人もいる 268 00:17:47,483 --> 00:17:49,902 ほんの2週間の滞在で― 269 00:17:50,360 --> 00:17:53,155 未来が開けた気がした 270 00:17:53,447 --> 00:17:55,282 奇跡が起きたんだ 271 00:17:56,325 --> 00:18:01,246 〈サルトルが聞いたの なぜグレコと結婚しない?〉 272 00:18:02,664 --> 00:18:05,876 〈彼は“愛してるから”と〉 273 00:18:17,596 --> 00:18:21,183 アメリカに帰るのが嫌で 274 00:18:21,266 --> 00:18:24,478 飛行機では 黙りっぱなしだった 275 00:18:25,187 --> 00:18:28,023 それほど彼女が好きだった 276 00:18:34,696 --> 00:18:39,076 国外で過ごした 黒人アーティストはみんな 277 00:18:39,159 --> 00:18:42,579 帰りたくないと ひどく落ち込む 278 00:18:42,663 --> 00:18:44,915 自分の知るアメリカが― 279 00:18:45,040 --> 00:18:46,083 違う体験をしたことで 別のものに見えてしまう 280 00:18:46,083 --> 00:18:49,586 違う体験をしたことで 別のものに見えてしまう 281 00:18:46,083 --> 00:18:49,586 作家 ファラ・グリフィン 282 00:18:49,586 --> 00:18:49,878 違う体験をしたことで 別のものに見えてしまう 283 00:18:53,215 --> 00:18:55,050 帰国はつらかった 284 00:18:55,134 --> 00:18:59,429 ここは白人の暴挙に 黒人が苦しむ国だ 285 00:18:59,972 --> 00:19:02,266 俺は自制心を失い― 286 00:19:02,641 --> 00:19:06,895 人生がうまくいかず 道を踏み外していった 287 00:19:07,938 --> 00:19:11,650 気付けば俺は ヘロインに溺れていた 288 00:19:12,067 --> 00:19:16,864 ヘロインを打ち続ける 朝も夜も一日中だ 289 00:19:17,990 --> 00:19:19,908 そのために生きた 290 00:19:23,996 --> 00:19:26,748 彼はキャリアから転落 291 00:19:27,749 --> 00:19:30,752 音楽界への復帰も― 292 00:19:30,836 --> 00:19:35,716 ましてや成功なんて 誰も期待していなかった 293 00:19:40,929 --> 00:19:47,102 ハートフォードのクラブに シンフォニー・シドを招いた 294 00:19:48,145 --> 00:19:51,773 彼は“マイルスに カネを渡すな”と言った 295 00:19:52,941 --> 00:19:56,236 だがマイルスは私に “5ドルくれ”と言った 296 00:19:56,236 --> 00:19:57,154 だがマイルスは私に “5ドルくれ”と言った 297 00:19:56,236 --> 00:19:57,154 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 298 00:19:57,154 --> 00:19:57,237 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 299 00:19:57,237 --> 00:19:59,531 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 300 00:19:57,237 --> 00:19:59,531 “マイルス ムリだ” 301 00:19:59,531 --> 00:20:00,490 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 302 00:20:00,490 --> 00:20:00,866 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 303 00:20:00,490 --> 00:20:00,866 “2ドルくれ” 304 00:20:00,866 --> 00:20:02,117 “2ドルくれ” 305 00:20:02,826 --> 00:20:04,828 “できないよ” 306 00:20:05,329 --> 00:20:07,414 “50セントでいい” 307 00:20:07,748 --> 00:20:10,250 “頼む 分かってくれ” 308 00:20:10,584 --> 00:20:12,961 “じゃあ1セントだ” 309 00:20:13,420 --> 00:20:15,297 それが初対面だった 310 00:20:19,134 --> 00:20:22,262 ニューヨークのクラブに― 311 00:20:23,180 --> 00:20:25,891 マイルスの父親が 田舎から訪ねてきた 312 00:20:25,891 --> 00:20:27,267 マイルスの父親が 田舎から訪ねてきた 313 00:20:25,891 --> 00:20:27,267 サックス ジミー・ヒース 314 00:20:27,267 --> 00:20:27,351 サックス ジミー・ヒース 315 00:20:27,351 --> 00:20:30,562 サックス ジミー・ヒース 316 00:20:27,351 --> 00:20:30,562 息子をステージから 引きずり下ろし― 317 00:20:30,646 --> 00:20:32,439 “家に帰るぞ” 318 00:20:38,528 --> 00:20:41,448 子供に戻った気がした 319 00:20:42,741 --> 00:20:47,246 あんなみじめな気持ちは あのとき限りだ 320 00:20:48,789 --> 00:20:51,917 薬物は断つと父に伝えた 321 00:20:52,000 --> 00:20:54,461 必要なのは休息だった 322 00:20:55,879 --> 00:20:58,590 でも すぐに逆戻りした 323 00:20:59,424 --> 00:21:02,427 父からカネを借りては打つ 324 00:21:06,181 --> 00:21:09,309 彼は夜に徘徊していた 325 00:21:10,352 --> 00:21:13,981 町なかで会う彼は 別人のようだった 326 00:21:14,064 --> 00:21:14,564 身に着けている服は まるで― 327 00:21:14,564 --> 00:21:16,817 身に着けている服は まるで― 328 00:21:14,564 --> 00:21:16,817 イーストセントルイス 在住 329 00:21:16,817 --> 00:21:16,900 身に着けている服は まるで― 330 00:21:16,900 --> 00:21:18,235 身に着けている服は まるで― 331 00:21:16,900 --> 00:21:18,235 ユージーン・ レッドモンド 332 00:21:18,235 --> 00:21:19,027 ユージーン・ レッドモンド 333 00:21:19,152 --> 00:21:20,821 ホームレスだ 334 00:21:21,822 --> 00:21:23,657 イーストセントルイス 在住 レジナルド・ペティ 335 00:21:21,822 --> 00:21:23,657 英雄でいてほしい 336 00:21:23,657 --> 00:21:25,951 イーストセントルイス 在住 レジナルド・ペティ 337 00:21:25,951 --> 00:21:26,576 イーストセントルイス 在住 レジナルド・ペティ 338 00:21:25,951 --> 00:21:26,576 だが あの時は違った 339 00:21:26,576 --> 00:21:29,037 だが あの時は違った 340 00:21:34,251 --> 00:21:38,297 どん底にいる彼を見るのは つらかった 341 00:21:40,173 --> 00:21:40,382 幼少期の友人 リー・アニー・ボナー 342 00:21:40,382 --> 00:21:43,593 幼少期の友人 リー・アニー・ボナー 343 00:21:40,382 --> 00:21:43,593 あの頃の話はしたくない 344 00:21:43,593 --> 00:21:44,052 幼少期の友人 リー・アニー・ボナー 345 00:21:48,765 --> 00:21:51,727 俺は父の農場に行った 346 00:21:52,811 --> 00:21:54,229 苦しかった 347 00:21:55,397 --> 00:21:59,943 2秒で死ねる方法があれば 試しただろう 348 00:22:02,571 --> 00:22:06,992 それが7~8日間 続いた 何も食べられない 349 00:22:07,909 --> 00:22:11,538 そしてある日 終わったんだ 350 00:22:13,248 --> 00:22:14,374 回復した 351 00:22:15,042 --> 00:22:16,835 浄化された気分だ 352 00:22:21,131 --> 00:22:26,219 ある白人男がレーベル プレスティッジを立ち上げ 353 00:22:26,303 --> 00:22:29,348 レコードの話を 持ちかけてきた 354 00:22:30,724 --> 00:22:33,143 這(は)い上がるしかない 355 00:22:33,894 --> 00:22:35,729 もう どん底にいる 356 00:22:36,897 --> 00:22:40,192 我ら 黒人市民は バスに乗ることを… 357 00:22:42,486 --> 00:22:44,071 エメット・ティルが… 358 00:22:44,154 --> 00:22:46,490 シボレーが新作を発表 359 00:22:50,452 --> 00:22:52,746 ベティ・クロッカーの… 360 00:22:52,829 --> 00:22:55,916 本日 ディズニーランドが… 361 00:23:01,088 --> 00:23:04,257 ニューポート・ ジャズフェスティバル 362 00:23:06,343 --> 00:23:10,055 “ブルー・モンク” セロニアス・モンク 363 00:23:12,766 --> 00:23:17,979 ニューヨークのクラブで 裏口にいたマイルスに― 364 00:23:19,231 --> 00:23:21,233 声をかけられた 365 00:23:21,316 --> 00:23:24,319 “ニューポートで フェスを?” 366 00:23:24,611 --> 00:23:26,363 “ああ やるよ” 367 00:23:27,072 --> 00:23:29,950 “俺なしじゃダメだ” 368 00:23:30,700 --> 00:23:32,869 “出たいのか?” 369 00:23:32,953 --> 00:23:35,664 “俺なしじゃダメだ” 370 00:23:35,872 --> 00:23:38,458 だから出演を依頼した 371 00:23:47,592 --> 00:23:49,970 オーディション同然だ 372 00:23:51,471 --> 00:23:55,725 コロムビアの重役たちが 観客席にいるフェスだ 373 00:23:55,809 --> 00:23:59,855 彼らはレーベル界の “ティファニー”だった 374 00:23:59,938 --> 00:24:04,276 フェスの意味を マイルスは理解していた 375 00:24:04,901 --> 00:24:09,406 そんなチャンスを 彼が逃すはずがない 376 00:24:09,489 --> 00:24:10,532 反撃の時だ 377 00:24:20,709 --> 00:24:26,131 トランペットの先を マイクに当てるように吹いた 378 00:24:27,549 --> 00:24:31,011 その時 彼は ジャズの常識を変えた 379 00:24:31,094 --> 00:24:33,388 自身のキャリアもだ 380 00:24:33,763 --> 00:24:38,101 曲の美しさの伝わる 見事な演奏だった 381 00:24:38,810 --> 00:24:43,064 これでビバップが 大勢に受け入れられた 382 00:24:51,656 --> 00:24:55,785 夜のBGMに 彼の音楽をかける人もいる 383 00:25:28,735 --> 00:25:31,112 バラードは勇気がいる 384 00:25:31,821 --> 00:25:32,197 音符の数が多いほど ごまかしも利く 385 00:25:32,197 --> 00:25:36,034 音符の数が多いほど ごまかしも利く 386 00:25:32,197 --> 00:25:36,034 ミュージシャン カルロス・サンタナ 387 00:25:36,034 --> 00:25:36,952 ミュージシャン カルロス・サンタナ 388 00:25:37,035 --> 00:25:39,371 見せつけるだけだ 389 00:25:47,254 --> 00:25:51,841 大半の男は 弱さを見せたりしない 390 00:25:52,884 --> 00:25:55,053 そこに女性はひかれる 391 00:26:08,692 --> 00:26:13,029 普段のマイルスは 怖そうに見えても― 392 00:26:13,405 --> 00:26:15,615 トランペットを吹けば… 393 00:26:16,658 --> 00:26:18,702 警戒心を解かれる 394 00:26:29,629 --> 00:26:34,509 マイルスの音は 1音目から独特なの 395 00:26:36,136 --> 00:26:37,512 彼の音は… 396 00:26:38,221 --> 00:26:40,348 喜び 美しさ 397 00:26:42,183 --> 00:26:44,352 とてもロマンチックよ 398 00:26:45,186 --> 00:26:47,439 でも感傷的じゃない 399 00:27:04,956 --> 00:27:07,626 腹の中を見せてくる 400 00:27:08,335 --> 00:27:10,879 何も隠さない 心臓も… 401 00:27:11,796 --> 00:27:14,090 命に関わるすべてをね 402 00:27:24,934 --> 00:27:29,356 マイルスの音の導きを 感じたい 403 00:27:40,700 --> 00:27:42,577 彼の演奏は― 404 00:27:42,952 --> 00:27:44,496 湖の水面をスキップしていく 石のような音なんだ 405 00:27:44,496 --> 00:27:48,583 湖の水面をスキップしていく 石のような音なんだ 406 00:27:44,496 --> 00:27:48,583 ミュージシャン ハービー・ハンコック 407 00:27:48,583 --> 00:27:49,167 ミュージシャン ハービー・ハンコック 408 00:27:53,338 --> 00:27:56,299 波に触れていくようだ 409 00:28:09,979 --> 00:28:11,564 時々 1音残す 410 00:28:12,190 --> 00:28:12,232 観客は こうだ 411 00:28:12,232 --> 00:28:14,067 観客は こうだ 412 00:28:12,232 --> 00:28:14,067 ミュージシャン マーカス・ミラー 413 00:28:14,067 --> 00:28:14,818 ミュージシャン マーカス・ミラー 414 00:28:14,818 --> 00:28:15,902 ミュージシャン マーカス・ミラー 415 00:28:14,818 --> 00:28:15,902 音を待ってる 416 00:28:15,902 --> 00:28:16,111 音を待ってる 417 00:28:27,038 --> 00:28:29,124 とても純粋な音で― 418 00:28:29,958 --> 00:28:31,042 エレガント 419 00:28:32,252 --> 00:28:33,712 味わい深い 420 00:28:34,879 --> 00:28:36,381 そういう音だ 421 00:28:43,138 --> 00:28:44,723 彼の1音は… 422 00:28:45,348 --> 00:28:47,392 たった1音で― 423 00:28:47,767 --> 00:28:52,105 クラブにいる金持ちに こう言わせる 424 00:28:53,064 --> 00:28:56,025 “払ったカネの元は取った” 425 00:28:56,109 --> 00:28:57,527 “帰ろう” 426 00:28:58,611 --> 00:29:01,614 1音で満足させるんだ 427 00:29:05,034 --> 00:29:07,620 1956年2月ごろ― 428 00:29:07,704 --> 00:29:11,499 非がん性腫瘍で 咽頭を切除した 429 00:29:12,333 --> 00:29:14,544 しばらく大変だった 430 00:29:14,919 --> 00:29:17,922 術後10日間は話せない 431 00:29:19,132 --> 00:29:19,758 1週目は よかった 432 00:29:19,758 --> 00:29:21,843 1週目は よかった 433 00:29:19,758 --> 00:29:21,843 友人 コーテス・マッコイ 434 00:29:21,843 --> 00:29:22,802 友人 コーテス・マッコイ 435 00:29:22,802 --> 00:29:23,887 友人 コーテス・マッコイ 436 00:29:22,802 --> 00:29:23,887 2週目は… 437 00:29:23,887 --> 00:29:24,554 友人 コーテス・マッコイ 438 00:29:25,513 --> 00:29:27,223 少しも黙らない 439 00:29:28,475 --> 00:29:30,977 不満が爆発したんだ 440 00:29:33,271 --> 00:29:36,357 それで しゃがれ声になった 441 00:29:37,400 --> 00:29:38,943 治らなかった 442 00:29:40,111 --> 00:29:43,907 当時 手術のことも 声が出ないことも― 443 00:29:40,111 --> 00:29:43,907 友人 サンドラ・マッコイ 444 00:29:43,907 --> 00:29:43,990 友人 サンドラ・マッコイ 445 00:29:43,990 --> 00:29:44,824 友人 サンドラ・マッコイ 446 00:29:43,990 --> 00:29:44,824 誰も知らなかった 447 00:29:44,824 --> 00:29:46,034 誰も知らなかった 448 00:29:46,201 --> 00:29:47,744 ステージに立ち― 449 00:29:47,827 --> 00:29:51,998 あのしゃがれ声で 曲名を言おうとした 450 00:29:52,081 --> 00:29:54,959 ほんの2~3文話すと― 451 00:29:55,043 --> 00:29:58,213 観客が笑い始めたの 452 00:29:59,255 --> 00:30:02,300 マイルスは観客に背を向け 453 00:30:02,383 --> 00:30:06,763 奇妙な表情を見せると 会場を去った 454 00:30:15,522 --> 00:30:19,400 俺は表情だけで メンバーと通じ合える 455 00:30:20,151 --> 00:30:23,905 観客に背を向けて それをやったんだ 456 00:30:24,322 --> 00:30:27,992 演奏中に 余計な話をされたら― 457 00:30:28,952 --> 00:30:31,746 音楽で語りかけられない 458 00:30:43,633 --> 00:30:47,387 コロムビアの ジョージ・アヴァキアンが 459 00:30:47,470 --> 00:30:49,597 専属契約を求めてきた 460 00:30:50,557 --> 00:30:52,725 俺は契約を承諾した 461 00:30:52,809 --> 00:30:55,061 条件がよかったんだ 462 00:30:57,522 --> 00:30:58,940 契約の際― 463 00:30:59,023 --> 00:31:02,110 いくつか約束ごとがあった 464 00:31:03,027 --> 00:31:07,031 “薬物はしないこと 固定バンドを持つこと” 465 00:31:07,740 --> 00:31:11,202 “プレスティッジの契約を 済ますこと” 466 00:31:11,286 --> 00:31:13,454 曲名は後で教える 467 00:31:26,509 --> 00:31:31,472 ジョン・コルトレーンを含む 新クインテットを結成し― 468 00:31:31,556 --> 00:31:36,936 メンバーを引き連れて スタジオに向かった 469 00:31:37,520 --> 00:31:39,480 そこで何曲も演奏し続け 470 00:31:39,480 --> 00:31:41,149 そこで何曲も演奏し続け 471 00:31:39,480 --> 00:31:41,149 歴史学者 ジャック・チェンバース 472 00:31:41,149 --> 00:31:41,482 歴史学者 ジャック・チェンバース 473 00:31:41,482 --> 00:31:44,152 歴史学者 ジャック・チェンバース 474 00:31:41,482 --> 00:31:44,152 十分な量の曲を 2日間で録音した 475 00:31:44,152 --> 00:31:45,069 十分な量の曲を 2日間で録音した 476 00:31:45,570 --> 00:31:48,072 残りの契約は終了だ 477 00:31:57,123 --> 00:31:58,041 マイルスはメンバーに 自由を与えたの 478 00:31:58,041 --> 00:32:00,543 マイルスはメンバーに 自由を与えたの 479 00:31:58,041 --> 00:32:00,543 音楽学者 タミー・L・カーノドル 480 00:32:00,543 --> 00:32:00,627 音楽学者 タミー・L・カーノドル 481 00:32:00,627 --> 00:32:01,753 音楽学者 タミー・L・カーノドル 482 00:32:00,627 --> 00:32:01,753 “ほら” 483 00:32:01,753 --> 00:32:02,712 音楽学者 タミー・L・カーノドル 484 00:32:02,837 --> 00:32:05,214 “自分らしくやれ” 485 00:32:05,965 --> 00:32:11,012 “俺はただ音楽を生かし 呼吸をさせて育てる” 486 00:32:11,137 --> 00:32:12,680 “感じるままに” 487 00:32:20,396 --> 00:32:25,109 マイルスは自分の責務を 遂行しただけだが― 488 00:32:25,276 --> 00:32:28,988 そこにはジャズの原石が 集まっていた 489 00:32:33,326 --> 00:32:37,830 1回3時間以上の マラソン・セッションを2回 490 00:32:39,958 --> 00:32:42,710 ジャズ史に残る偉業だ 491 00:32:42,794 --> 00:32:45,046 マイルス・デイビス・ クインテット 492 00:32:45,129 --> 00:32:46,297 「ワーキン」 493 00:32:46,381 --> 00:32:47,674 「リラクシン」 494 00:32:47,757 --> 00:32:48,967 「スティーミン」 495 00:32:49,050 --> 00:32:50,218 「クッキン」 496 00:33:03,523 --> 00:33:08,444 マイルスと出会ったのは 舞台で踊っていた頃よ 497 00:33:10,780 --> 00:33:12,532 当時 ショービジネス界で 人脈が広がり始めていた 498 00:33:12,532 --> 00:33:15,201 当時 ショービジネス界で 人脈が広がり始めていた 499 00:33:12,532 --> 00:33:15,201 〝ヨーロッパの ダンス人形〞 500 00:33:15,201 --> 00:33:16,619 当時 ショービジネス界で 人脈が広がり始めていた 501 00:33:17,912 --> 00:33:18,538 〝パリを震撼〞 502 00:33:18,538 --> 00:33:19,372 〝パリを震撼〞 503 00:33:18,538 --> 00:33:19,372 パリやベルリン 世界中で踊った 504 00:33:19,372 --> 00:33:21,791 パリやベルリン 世界中で踊った 505 00:33:23,209 --> 00:33:26,045 “最高の脚”と称されたわ 506 00:33:29,424 --> 00:33:31,592 H(ヒュー)・オブライアンや― 507 00:33:32,093 --> 00:33:35,805 R(ロリー)・カルホーンに デートに誘われた 508 00:33:37,056 --> 00:33:41,811 ダンサー フランシス・テイラー 509 00:33:37,056 --> 00:33:41,811 他にも大勢いたけど 思い出せないわ 510 00:33:44,022 --> 00:33:46,566 私にはダンサーとしての 才能があったから 511 00:33:46,566 --> 00:33:48,443 私にはダンサーとしての 才能があったから 512 00:33:46,566 --> 00:33:48,443 〝ヨーロッパの ダンス人形〞 513 00:33:48,443 --> 00:33:48,526 〝ヨーロッパの ダンス人形〞 514 00:33:48,526 --> 00:33:49,277 〝ヨーロッパの ダンス人形〞 515 00:33:48,526 --> 00:33:49,277 引く手あまただった 516 00:33:49,277 --> 00:33:50,987 引く手あまただった 517 00:33:53,072 --> 00:33:56,284 でもジャズには疎かったの 518 00:33:56,909 --> 00:34:00,121 知ってたのは ジョニー・マティス 519 00:34:01,456 --> 00:34:05,460 “恋のチャンス” ジョニー・マティス 520 00:34:13,968 --> 00:34:16,554 シローズで踊った時 521 00:34:17,263 --> 00:34:19,557 マイルスが来た 522 00:34:20,141 --> 00:34:22,393 私に釘づけだったわ 523 00:34:22,477 --> 00:34:24,687 観客は みんなね 524 00:34:28,232 --> 00:34:31,152 また1人の男性が― 525 00:34:31,944 --> 00:34:33,738 私にホレただけ 526 00:34:39,327 --> 00:34:42,872 サミー・デイビスJr.に 誘われて― 527 00:34:42,997 --> 00:34:45,875 彼の舞台に出演した 528 00:34:45,958 --> 00:34:47,251 「ミスター・ ワンダフル」 529 00:34:47,251 --> 00:34:49,587 「ミスター・ ワンダフル」 530 00:34:47,251 --> 00:34:49,587 リハーサルに向かう時 マイルスと鉢合わせた 531 00:34:49,587 --> 00:34:52,381 リハーサルに向かう時 マイルスと鉢合わせた 532 00:34:52,924 --> 00:34:56,052 彼は私を見て言ったわ 533 00:34:56,511 --> 00:34:59,430 “見つけた もう逃がさない” 534 00:35:00,932 --> 00:35:04,435 それから一緒に暮らした 535 00:35:17,448 --> 00:35:22,286 フランシス・テイラーは 知的で刺激的な女性だ 536 00:35:22,662 --> 00:35:24,330 マイルスの女性の中では 最も影響力があり― 537 00:35:24,330 --> 00:35:27,375 マイルスの女性の中では 最も影響力があり― 538 00:35:24,330 --> 00:35:27,375 歴史学者 ベンジャミン・コースラ 539 00:35:27,375 --> 00:35:27,875 歴史学者 ベンジャミン・コースラ 540 00:35:27,875 --> 00:35:29,043 歴史学者 ベンジャミン・コースラ 541 00:35:27,875 --> 00:35:29,043 最も長く続いた 542 00:35:29,043 --> 00:35:29,710 最も長く続いた 543 00:35:30,336 --> 00:35:34,215 マイルスに 安定した関係と愛情を与え 544 00:35:34,298 --> 00:35:37,468 革新的な曲作りを支えた 545 00:35:42,557 --> 00:35:44,642 彼はパリに発つとき 546 00:35:45,977 --> 00:35:47,562 曲をくれたの 547 00:35:49,897 --> 00:35:53,818 すごく気に入ったわ 心に響いた 548 00:35:56,571 --> 00:35:58,739 何度も聴いた 549 00:36:00,116 --> 00:36:03,119 それが初めての彼の音楽よ 550 00:36:12,170 --> 00:36:15,339 1956年に マイルスがパリに来て― 551 00:36:15,590 --> 00:36:16,048 リハーサルがあった 552 00:36:16,048 --> 00:36:17,925 リハーサルがあった 553 00:36:16,048 --> 00:36:17,925 ピアノ ルネ・ユルトルジェ 554 00:36:17,925 --> 00:36:18,050 ピアノ ルネ・ユルトルジェ 555 00:36:18,050 --> 00:36:19,302 ピアノ ルネ・ユルトルジェ 556 00:36:18,050 --> 00:36:19,302 彼は欧州人の奏者とは 初共演だ 557 00:36:19,302 --> 00:36:22,096 彼は欧州人の奏者とは 初共演だ 558 00:36:23,055 --> 00:36:27,643 メンバーに あいさつも笑顔もなく 559 00:36:28,352 --> 00:36:32,106 ひと言も話さずに 演奏を始めた 560 00:36:42,700 --> 00:36:46,913 私も すぐに続いた 彼の音楽は知ってる 561 00:36:46,996 --> 00:36:48,664 ファンなんだ 562 00:36:49,707 --> 00:36:52,335 いつも自問してたよ 563 00:36:52,418 --> 00:36:57,840 “何の曲なのか 聞いてもいいだろうか”と 564 00:36:58,799 --> 00:37:02,261 話したくなさそうだった 565 00:37:02,845 --> 00:37:07,475 演奏が終わると “よし”と言って終わりだ 566 00:37:07,725 --> 00:37:09,936 それで つながった 567 00:37:12,688 --> 00:37:14,106 〈愛してる〉 568 00:37:15,650 --> 00:37:17,777 〈離れないわ〉 569 00:37:18,277 --> 00:37:19,654 〈愛してる〉 570 00:37:20,529 --> 00:37:23,866 〈君なしの僕は 沈黙の地の迷子だ〉 571 00:37:23,950 --> 00:37:26,452 〈それは大変ね〉 572 00:37:23,950 --> 00:37:26,452 ジャンヌ・モロー 573 00:37:26,535 --> 00:37:30,581 マイルスがパリに来た頃 ルイ・マル監督が― 574 00:37:30,665 --> 00:37:35,336 「死刑台の エレベーター」を撮った 575 00:37:38,631 --> 00:37:40,341 〈何のマネだ?〉 576 00:37:40,925 --> 00:37:45,846 マル監督は まだ若く キャリアの入り口にいて― 577 00:37:45,930 --> 00:37:46,889 〈カネ?〉 578 00:37:46,973 --> 00:37:48,975 映画を数多く 撮りたがっていた 579 00:37:48,975 --> 00:37:50,518 映画を数多く 撮りたがっていた 580 00:37:48,975 --> 00:37:50,518 作家 ヴィンセント・ ベシエール 581 00:37:50,518 --> 00:37:50,643 作家 ヴィンセント・ ベシエール 582 00:37:50,643 --> 00:37:52,019 作家 ヴィンセント・ ベシエール 583 00:37:50,643 --> 00:37:52,019 撮影方法を変えてね 584 00:37:52,019 --> 00:37:53,145 撮影方法を変えてね 585 00:37:53,229 --> 00:37:58,609 実際の人の生活風景を 利用したこともある 586 00:38:02,947 --> 00:38:05,157 マイルスに持ちかけた 587 00:38:05,241 --> 00:38:08,995 “ジャズのサントラを 作らないか”と 588 00:38:14,917 --> 00:38:17,586 映画のオーケストラは― 589 00:38:17,670 --> 00:38:22,008 30人ほどの奏者を集める 590 00:38:22,091 --> 00:38:26,304 弦楽器 打楽器 金管楽器… 591 00:38:26,387 --> 00:38:29,307 準備を整えて始める 592 00:38:31,684 --> 00:38:36,605 作曲家はシーンの長さを 正確に把握してる 593 00:38:36,689 --> 00:38:39,275 ここは2分40秒とかね 594 00:38:39,358 --> 00:38:41,110 マイルスは違う 595 00:38:51,746 --> 00:38:54,707 彼は楽譜を書かなかった 596 00:38:56,375 --> 00:38:59,295 全曲 その場で演奏したんだ 597 00:38:59,670 --> 00:39:02,340 銀幕に向かってね 598 00:39:13,184 --> 00:39:19,774 銀幕のイメージを音にして 即興で音楽を作った 599 00:39:32,286 --> 00:39:37,541 映画を見ながら 演奏することが重要だった 600 00:39:37,666 --> 00:39:39,960 主人公になりきれる 601 00:39:41,879 --> 00:39:45,633 主人公の苦しみを 音楽で表現した 602 00:39:52,515 --> 00:39:54,266 すぐに気付いたよ 603 00:39:54,350 --> 00:39:58,229 “我われは すごい事をしているぞ”と 604 00:40:04,235 --> 00:40:06,570 映画は注目された 605 00:40:06,654 --> 00:40:08,030 マイルス・デイビス 「死刑台の エレベーター」 606 00:40:08,030 --> 00:40:11,325 マイルス・デイビス 「死刑台の エレベーター」 607 00:40:08,030 --> 00:40:11,325 レコードを聴いた人が― 608 00:40:11,409 --> 00:40:13,994 映画館に足を運んだ 609 00:40:19,834 --> 00:40:26,215 彼は この映画の録音で 新しい即興演奏法を見出した 610 00:40:26,966 --> 00:40:30,594 その技術を数年かけて磨く 611 00:40:31,720 --> 00:40:35,266 この映画の 録音スタジオから― 612 00:40:35,474 --> 00:40:37,810 何かが始まったんだ 613 00:40:42,189 --> 00:40:43,441 もう一度 614 00:40:45,192 --> 00:40:46,193 やるぞ 615 00:40:46,318 --> 00:40:48,362 0-62-291 616 00:40:48,446 --> 00:40:50,656 シーン2 テイク1 617 00:40:51,991 --> 00:40:54,702 スタジオには1番に入った 618 00:40:56,620 --> 00:41:01,375 ドラムをセッティングして みんなを待った 619 00:41:04,753 --> 00:41:09,091 マイルスが楽譜を手に 入ってきた 620 00:41:10,968 --> 00:41:12,678 そして ひと言 621 00:41:12,887 --> 00:41:15,848 “スイングするだけでいい”と 622 00:41:12,887 --> 00:41:15,848 ドラム ジミー・コブ 623 00:41:15,848 --> 00:41:16,307 “スイングするだけでいい”と 624 00:41:19,685 --> 00:41:24,148 「カインド・オブ・ブルー」は スケッチだけを使った 625 00:41:24,231 --> 00:41:27,359 自発的な演奏を 引き出すためだ 626 00:41:28,986 --> 00:41:33,657 偉大な演奏家とは 状況に応えるものだ 627 00:41:33,741 --> 00:41:37,786 そして期待以上の音を 出してみせる 628 00:41:39,288 --> 00:41:41,123 “ソー・ワット”冒頭 629 00:41:48,380 --> 00:41:51,008 ポールのベースが続く 630 00:41:56,680 --> 00:41:59,600 あんなマイルスは 初めてだった 631 00:41:59,892 --> 00:42:02,478 父親のレコードを借りたよ 632 00:42:05,272 --> 00:42:08,984 印象的なのは ポールのベースラインだ 633 00:42:16,575 --> 00:42:18,661 聖書に疑問は持たない 634 00:42:18,661 --> 00:42:19,453 聖書に疑問は持たない 635 00:42:18,661 --> 00:42:19,453 ミュージシャン ジョシュア・レッドマン 636 00:42:19,453 --> 00:42:19,537 ミュージシャン ジョシュア・レッドマン 637 00:42:19,537 --> 00:42:23,415 ミュージシャン ジョシュア・レッドマン 638 00:42:19,537 --> 00:42:23,415 “なぜ聖書なのか”って 聖書だからさ 639 00:42:23,415 --> 00:42:23,457 ミュージシャン ジョシュア・レッドマン 640 00:42:23,499 --> 00:42:26,752 「カインド・オブ・ ブルー」も同じだ 641 00:42:26,835 --> 00:42:30,673 あの音楽が生まれ ジャズが変わった 642 00:42:38,556 --> 00:42:42,518 冒頭のシンバルが 強すぎたと思った 643 00:42:42,685 --> 00:42:45,437 予定より大きい音が出た 644 00:42:48,399 --> 00:42:53,195 でも あのシンバルが 曲の中に導いてくれる 645 00:42:54,196 --> 00:42:59,243 シンバルが先頭を切って 全員が それに従う感じだ 646 00:43:12,506 --> 00:43:15,843 彼がメンバーに 求めたことは― 647 00:43:16,343 --> 00:43:20,889 どんな音を生み出せるか よく考えること 648 00:43:24,643 --> 00:43:28,272 “これが俺のアイデアだ やるぞ” 649 00:43:31,025 --> 00:43:35,362 マイルスのやり方は 生涯 変わらなかった 650 00:43:47,416 --> 00:43:51,170 マイルスは この作品に 満足しなかった 651 00:43:51,253 --> 00:43:55,883 でも音楽が1つになった時 垣間見えるんだ 652 00:43:56,759 --> 00:44:01,680 彼らが どれだけ独創的で 人に感動を与えるかをね 653 00:44:25,371 --> 00:44:27,581 「カインド・オブ・ブルー」は 654 00:44:27,665 --> 00:44:33,087 メンバーの音楽に対する 考え方や接し方を変えた 655 00:44:33,420 --> 00:44:37,091 コルトレーンには 必要な仕事だったの 656 00:44:37,257 --> 00:44:39,468 自分の個性を見つけた 657 00:44:45,349 --> 00:44:48,977 若いコルトレーンの才能を 信じた人は少ない 658 00:44:49,853 --> 00:44:54,358 でも彼はマイルスに 居場所を与えてもらい― 659 00:44:54,441 --> 00:44:58,570 のちに愛される アーティストに成長した 660 00:45:18,048 --> 00:45:20,718 ジャズに疎くても聴く 661 00:45:21,385 --> 00:45:23,345 10年に1人くらいは― 662 00:45:23,429 --> 00:45:28,517 このアルバムから ジャズを聴き始める人がいる 663 00:45:33,522 --> 00:45:36,525 何百回でも聴けるし 聴くたびに発見がある 664 00:45:36,525 --> 00:45:38,277 何百回でも聴けるし 聴くたびに発見がある 665 00:45:36,525 --> 00:45:38,277 作家 アシュリー・カーン 666 00:45:38,277 --> 00:45:39,611 作家 アシュリー・カーン 667 00:45:39,611 --> 00:45:41,238 作家 アシュリー・カーン 668 00:45:39,611 --> 00:45:41,238 マスターピースの証拠だ 669 00:45:41,238 --> 00:45:43,449 マスターピースの証拠だ 670 00:45:57,629 --> 00:46:00,382 マイルスも驚いてるはずさ 671 00:46:00,466 --> 00:46:06,221 この作品がジャズ史上最高の 売上を記録するとはね 672 00:46:06,930 --> 00:46:11,477 売れたと知ったら ビルを買ってるさ 673 00:46:12,519 --> 00:46:15,939 あとフェラーリを2台だ 674 00:46:16,356 --> 00:46:18,317 制御不能になる 675 00:46:19,109 --> 00:46:23,071 売れると知ってたら 買っただろうな 676 00:46:40,547 --> 00:46:43,801 アルバムは瞬時にヒットした 677 00:46:44,259 --> 00:46:47,888 人気スターの仲間入りだ 678 00:46:49,515 --> 00:46:55,270 コロムビアとの契約で 彼の音楽はメジャーになった 679 00:46:59,399 --> 00:47:03,862 音楽の巨匠と呼ばれる領域に 到達したんだ 680 00:47:10,828 --> 00:47:15,499 俺が音楽から感じたものを 伝えたかった 681 00:47:16,416 --> 00:47:19,211 コロムビアの報酬は上等だ 682 00:47:19,336 --> 00:47:23,090 だが才能の対価としては 当然の額だ 683 00:47:33,350 --> 00:47:35,894 黒人の時代になり― 684 00:47:36,019 --> 00:47:39,898 彼はプライドを持ち始めた 685 00:47:40,399 --> 00:47:42,901 マイルスは顕著だった 686 00:47:42,985 --> 00:47:46,363 できるだけ装いを整えたんだ 687 00:47:57,666 --> 00:48:00,961 マイルスは“クール”の化身よ 688 00:48:01,503 --> 00:48:03,630 伝説のヒーローなの 689 00:48:08,176 --> 00:48:10,721 黒人のスーパーマンよ 690 00:48:14,725 --> 00:48:16,852 マイルスのアルバムだ 691 00:48:17,436 --> 00:48:20,147 みんな持ち歩いた 692 00:48:17,436 --> 00:48:20,147 ミュージシャン ジェームズ・ エムトゥーメ 693 00:48:20,147 --> 00:48:21,189 ミュージシャン ジェームズ・ エムトゥーメ 694 00:48:21,189 --> 00:48:21,857 ミュージシャン ジェームズ・ エムトゥーメ 695 00:48:21,189 --> 00:48:21,857 彼のファンであることが かっこよさの定義なんだ 696 00:48:21,857 --> 00:48:26,528 彼のファンであることが かっこよさの定義なんだ 697 00:48:32,951 --> 00:48:37,039 滑らかな服を着て 速い車を走らせ― 698 00:48:37,122 --> 00:48:39,124 女性を はべらせた 699 00:48:39,499 --> 00:48:40,167 誰もが彼のマネじゃなく 彼になりたかった 700 00:48:40,167 --> 00:48:43,295 誰もが彼のマネじゃなく 彼になりたかった 701 00:48:40,167 --> 00:48:43,295 ミュージシャン レニー・ホワイト 702 00:48:43,295 --> 00:48:43,670 誰もが彼のマネじゃなく 彼になりたかった 703 00:48:49,968 --> 00:48:53,180 フェラーリは子供の席がない 704 00:48:53,263 --> 00:48:55,933 出かける時はどうする? 705 00:48:56,016 --> 00:48:58,727 “タクシーに乗せる” 706 00:49:08,153 --> 00:49:11,907 マイルスは クールの象徴になった 707 00:49:11,990 --> 00:49:14,034 おしゃれで― 708 00:49:14,117 --> 00:49:16,036 男らしい人 709 00:49:17,621 --> 00:49:21,291 くだらないことは 気にしない黒人男性よ 710 00:49:28,757 --> 00:49:33,804 クールでヒップで怒りっぽく おしゃれでこぎれい 711 00:49:34,179 --> 00:49:36,640 全部に当てはまったが― 712 00:49:37,099 --> 00:49:40,102 トランペットは必死で吹いた 713 00:49:40,602 --> 00:49:44,606 世間にワルだと 思われないようにだ 714 00:49:45,774 --> 00:49:49,569 人々は俺をカリスマと呼んだ 715 00:49:55,534 --> 00:49:59,079 マイルスは自分の肌の色を― 716 00:49:59,162 --> 00:50:03,875 欠点ではなく 利点だと考えていたはずよ 717 00:50:06,920 --> 00:50:12,843 当時のテレビや映画で 描かれていた黒人とは違う 718 00:50:13,593 --> 00:50:18,432 マイルスは黒人を クールで憧れの存在に変えた 719 00:50:19,850 --> 00:50:23,145 人前に出るときは シャープにキメる 720 00:50:23,228 --> 00:50:25,022 フランシスもだ 721 00:50:25,564 --> 00:50:30,861 俺のような黒人が こんな美女を連れて歩く 722 00:50:31,028 --> 00:50:32,612 最高だぜ 723 00:50:32,946 --> 00:50:35,866 みんな口を開けて立ち止まる 724 00:50:43,248 --> 00:50:46,334 彼は よく服を買ってくれた 725 00:50:46,460 --> 00:50:50,297 周知のとおり 脚が美しいからよ 726 00:50:52,340 --> 00:50:54,718 2人でおしゃれして― 727 00:50:56,595 --> 00:50:59,681 フェラーリを乗り回す 728 00:50:59,765 --> 00:51:02,976 誰が見ても 魅力的な2人だった 729 00:51:03,602 --> 00:51:06,313 私たちは絶好調だった 730 00:51:37,928 --> 00:51:40,514 子供ながらに2人を見て― 731 00:51:37,928 --> 00:51:40,514 甥(おい) ヴィンス・ウィルバーン 732 00:51:41,056 --> 00:51:42,891 すごいと思ったよ 733 00:51:43,225 --> 00:51:47,145 カッチリとキメて こぎれいだった 734 00:51:48,188 --> 00:51:49,356 愛もある 735 00:51:50,690 --> 00:51:53,318 王子と王女のようだった 736 00:51:59,699 --> 00:52:02,869 作家の ジョージ・フレイジャーが― 737 00:52:03,537 --> 00:52:05,497 こんな話をした 738 00:52:06,039 --> 00:52:08,041 マイルスにぴったりだ 739 00:52:10,544 --> 00:52:15,549 確かスペインの 闘牛士の話だったと思う 740 00:52:18,051 --> 00:52:18,802 牛は殺せる男は多い 741 00:52:18,802 --> 00:52:20,178 牛は殺せる男は多い 742 00:52:18,802 --> 00:52:20,178 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 743 00:52:20,178 --> 00:52:20,345 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 744 00:52:20,345 --> 00:52:22,764 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 745 00:52:20,345 --> 00:52:22,764 果敢に戦う男もいる 746 00:52:22,764 --> 00:52:22,973 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 747 00:52:22,973 --> 00:52:23,431 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 748 00:52:22,973 --> 00:52:23,431 なかには闘牛場に 立っているだけで― 749 00:52:23,431 --> 00:52:27,018 なかには闘牛場に 立っているだけで― 750 00:52:27,519 --> 00:52:32,691 牛を興奮させる男がいる 観客は息をのむ 751 00:52:35,277 --> 00:52:38,196 彼には“魅了する力(デュエンデ)”がある 752 00:52:40,115 --> 00:52:43,702 マイルスには デュエンデがある 753 00:52:47,497 --> 00:52:50,959 彼は好き嫌いが明確だった 754 00:52:51,042 --> 00:52:54,212 好きな人は好き 嫌いな人は嫌い 755 00:52:54,296 --> 00:52:56,798 そういう男だった 756 00:52:57,090 --> 00:53:01,845 最初に味方になれば 味方であり続ける 757 00:53:01,928 --> 00:53:05,265 敵になれば ずっと敵だ 758 00:53:05,599 --> 00:53:06,433 だろ? 759 00:53:09,394 --> 00:53:12,314 俺は誰にでも冷たかった 760 00:53:12,939 --> 00:53:15,066 自分を守るためだ 761 00:53:15,358 --> 00:53:19,112 感情の中には 誰も踏み込ませなかった 762 00:53:19,571 --> 00:53:22,032 ずっと それでよかった 763 00:53:24,034 --> 00:53:25,785 マイルスが演奏していた ビレッジバンガードに行き 764 00:53:25,785 --> 00:53:28,914 マイルスが演奏していた ビレッジバンガードに行き 765 00:53:25,785 --> 00:53:28,914 ミュージシャン アーチー・シェップ 766 00:53:28,914 --> 00:53:29,414 マイルスが演奏していた ビレッジバンガードに行き 767 00:53:30,373 --> 00:53:36,087 こう聞いた “デイビスさん アーチー・シェップです” 768 00:53:36,713 --> 00:53:39,049 “一緒に演奏しても?” 769 00:53:39,424 --> 00:53:41,801 彼は“誰だって?” 770 00:53:43,386 --> 00:53:46,264 “アーチー・シェップです” 771 00:53:46,723 --> 00:53:48,683 “くたばれ” 772 00:53:49,809 --> 00:53:51,770 “お前とはやらん” 773 00:53:51,853 --> 00:53:52,854 無関心だった 774 00:53:52,854 --> 00:53:53,480 無関心だった 775 00:53:52,854 --> 00:53:53,480 友人 コーテス・マッコイ 776 00:53:53,480 --> 00:53:54,439 友人 コーテス・マッコイ 777 00:53:54,439 --> 00:53:56,608 友人 コーテス・マッコイ 778 00:53:54,439 --> 00:53:56,608 彼が喜ばせるべきは― 779 00:53:56,608 --> 00:53:57,400 友人 コーテス・マッコイ 780 00:53:57,484 --> 00:53:58,735 自分だけ 781 00:54:02,989 --> 00:54:06,159 彼は興味がなかった 782 00:54:08,119 --> 00:54:11,164 誰のことにも興味がない 783 00:54:12,123 --> 00:54:14,125 それがマイルスだ 784 00:54:16,962 --> 00:54:19,839 彼の性格にはクセがあった 785 00:54:20,799 --> 00:54:23,551 怒りっぽくて非社交的 786 00:54:24,761 --> 00:54:28,473 でも そういった 不安定さや心の闇は― 787 00:54:28,556 --> 00:54:31,601 芸術の土台になることが多い 788 00:54:31,685 --> 00:54:35,230 表現することが癒しになる 789 00:54:36,815 --> 00:54:40,277 彼は自分の弱さを表現した 790 00:54:40,402 --> 00:54:44,739 誰にも見せられない もうひとつの顔をね 791 00:54:48,493 --> 00:54:51,830 “バードランド” 792 00:54:54,666 --> 00:54:56,918 バードランドでのこと 793 00:54:57,752 --> 00:55:02,132 マイルスがたばこを吸いに 地上に出た 794 00:55:05,343 --> 00:55:08,513 俺はクラブの入り口に立ち― 795 00:55:08,680 --> 00:55:11,766 8月の夜の熱気で 汗だくだった 796 00:55:12,726 --> 00:55:16,604 白人女性に タクシーを拾ってやった 797 00:55:18,148 --> 00:55:22,235 すると白人警官が来て 俺に立ち去れと言う 798 00:55:24,321 --> 00:55:27,157 “なぜだ 一服してる” 799 00:55:27,240 --> 00:55:29,784 “ここは俺の職場だ” 800 00:55:29,868 --> 00:55:32,120 看板は彼の名前だ 801 00:55:32,370 --> 00:55:34,122 作家 スタンリー・クラウチ 802 00:55:32,370 --> 00:55:34,122 “M-I-L-E-S(マイルス)” 803 00:55:34,122 --> 00:55:34,205 作家 スタンリー・クラウチ 804 00:55:34,205 --> 00:55:37,334 作家 スタンリー・クラウチ 805 00:55:34,205 --> 00:55:37,334 “読めるか? 俺の名前だ” 806 00:55:37,667 --> 00:55:38,918 “お前は?” 807 00:55:39,002 --> 00:55:40,587 「カインド・オブ・ブルー」の 発売直後で― 808 00:55:40,587 --> 00:55:41,755 「カインド・オブ・ブルー」の 発売直後で― 809 00:55:40,587 --> 00:55:41,755 〝マイルス・デイビス・ クインテット〞 810 00:55:41,755 --> 00:55:41,838 〝マイルス・デイビス・ クインテット〞 811 00:55:41,838 --> 00:55:46,176 〝マイルス・デイビス・ クインテット〞 812 00:55:41,838 --> 00:55:46,176 マイルスは注目され 頂点に立つ男だった 813 00:55:46,968 --> 00:55:48,553 大スターだ 814 00:55:50,388 --> 00:55:52,766 “誰だろうと立ち去れ” 815 00:55:52,849 --> 00:55:54,768 “俺はどかない” 816 00:55:55,518 --> 00:56:00,273 警官の顔を にらみつけ 立ち去らなかった 817 00:56:01,816 --> 00:56:04,778 マイルスが絶好調の頃だ 818 00:56:05,362 --> 00:56:08,031 殴られたのはつらい 819 00:56:09,783 --> 00:56:14,412 突然 白人の刑事が現れ 俺の頭を殴った 820 00:56:15,747 --> 00:56:17,540 不意打ちだった 821 00:56:18,625 --> 00:56:20,543 電話に出ると― 822 00:56:20,627 --> 00:56:23,129 警察署に呼び出された 823 00:56:24,464 --> 00:56:26,049 彼の顔を見た 824 00:56:28,510 --> 00:56:30,428 ただ怖かったわ 825 00:56:31,429 --> 00:56:32,889 涙が出た 826 00:56:39,771 --> 00:56:43,900 イーストセントルイスなら あり得るが― 827 00:56:43,983 --> 00:56:50,031 ここはニューヨーク 世界の最先端の街のはずだ 828 00:56:52,534 --> 00:56:55,537 あの一件は差別だった 829 00:56:55,620 --> 00:57:00,375 街中が 世界中が 黒人を差別していた証拠だ 830 00:57:01,042 --> 00:57:02,293 他にあるか? 831 00:57:03,253 --> 00:57:05,380 それ以外にはない 832 00:57:09,092 --> 00:57:10,969 この時 分かったの 833 00:57:11,052 --> 00:57:14,639 成功しても功績があっても 834 00:57:14,722 --> 00:57:19,477 財力があっても 評価されていても意味がない 835 00:57:20,395 --> 00:57:22,772 何も守ってはくれない 836 00:57:23,690 --> 00:57:26,109 米国の差別は終わらない 837 00:57:26,943 --> 00:57:28,486 ひどいものよ 838 00:57:29,279 --> 00:57:31,489 出口がないの 839 00:57:34,951 --> 00:57:37,412 この事件で俺は変わった 840 00:57:38,037 --> 00:57:41,833 今まで以上に 冷たい人間になった 841 00:57:48,089 --> 00:57:51,176 急に思い出して言うんだ 842 00:57:51,259 --> 00:57:52,969 “あの警官ども” 843 00:57:53,303 --> 00:57:58,224 何でもない時に 突然 警官のことを思い出す 844 00:57:59,559 --> 00:58:03,229 ミュージシャン マーカス・ミラー 845 00:57:59,559 --> 00:58:03,229 成功したからって 消える記憶じゃない 846 00:58:03,229 --> 00:58:03,313 ミュージシャン マーカス・ミラー 847 00:58:03,313 --> 00:58:04,439 ミュージシャン マーカス・ミラー 848 00:58:03,313 --> 00:58:04,439 若い頃に受けた差別は 一生 記憶に残り続ける 849 00:58:04,439 --> 00:58:08,359 若い頃に受けた差別は 一生 記憶に残り続ける 850 00:58:21,789 --> 00:58:26,544 「マイルス・アヘッド」は コロムビア移籍後に初めて 851 00:58:26,628 --> 00:58:29,130 ギルと共演した作品だ 852 00:58:29,297 --> 00:58:32,717 移籍した理由の1つでもある 853 00:58:32,800 --> 00:58:38,139 彼らには計画を実現する 資金と手段があった 854 00:58:50,151 --> 00:58:53,613 ギルとは音楽の相性がいい 855 00:58:54,155 --> 00:58:58,743 彼はこだわるし独創的で いい仕事ができる 856 00:58:59,244 --> 00:59:02,038 彼の編曲は信頼してる 857 00:59:07,252 --> 00:59:07,585 いつもピアノを囲んで 一緒に曲を作った 858 00:59:07,585 --> 00:59:10,463 いつもピアノを囲んで 一緒に曲を作った 859 00:59:07,585 --> 00:59:10,463 編曲家 ギル・エヴァンス 860 00:59:10,463 --> 00:59:10,922 いつもピアノを囲んで 一緒に曲を作った 861 00:59:12,048 --> 00:59:15,426 マイルスの解釈を 形にすると― 862 00:59:16,177 --> 00:59:18,179 すごく自然なんだ 863 00:59:24,018 --> 00:59:28,481 「マイルス・アヘッド」 マイルス・デイビス 864 00:59:28,898 --> 00:59:30,733 このアルバムには― 865 00:59:30,817 --> 00:59:36,322 ヨットのデッキに座る 白人の女性モデルが使われた 866 00:59:37,031 --> 00:59:39,534 初版のジャケットにね 867 00:59:42,245 --> 00:59:47,000 写真は 優雅な生活を 連想させるものだった 868 00:59:47,417 --> 00:59:49,752 このジャケットで― 869 00:59:49,836 --> 00:59:52,922 レコードは 白人客にも人気が出た 870 00:59:53,715 --> 00:59:57,677 だがマイルスは ジョージ・アヴァキアンに― 871 00:59:58,136 --> 01:00:01,556 “なぜ俺のアルバムに 白人女を使う!” 872 01:00:05,268 --> 01:00:07,228 彼は気付いたの 873 01:00:07,353 --> 01:00:08,479 レーベルの稼ぎ頭ならば― 874 01:00:08,479 --> 01:00:10,565 レーベルの稼ぎ頭ならば― 875 01:00:08,479 --> 01:00:10,565 作家 ファラ・グリフィン 876 01:00:10,565 --> 01:00:10,648 作家 ファラ・グリフィン 877 01:00:10,648 --> 01:00:13,151 作家 ファラ・グリフィン 878 01:00:10,648 --> 01:00:13,151 自分も会社の決定に 意見する力があると 879 01:00:13,151 --> 01:00:14,736 自分も会社の決定に 意見する力があると 880 01:00:15,903 --> 01:00:22,201 第2版からタイトルを変更し ジャケットを変えた 881 01:00:22,285 --> 01:00:24,495 写真はマイルスだ 882 01:00:31,169 --> 01:00:32,378 これはマイルス&ギルの コラボ3作品の第1作だ 883 01:00:32,378 --> 01:00:37,091 これはマイルス&ギルの コラボ3作品の第1作だ 884 01:00:32,378 --> 01:00:37,091 歴史学者 ジャック・チェンバース 885 01:00:37,091 --> 01:00:38,134 これはマイルス&ギルの コラボ3作品の第1作だ 886 01:00:38,676 --> 01:00:41,679 2年後に「ポーギー&ベス」 887 01:00:43,765 --> 01:00:45,683 その2年後に… 888 01:00:53,566 --> 01:00:57,111 私はバルセロナにいた 889 01:00:59,572 --> 01:01:02,075 舞台を終えたあと― 890 01:01:02,158 --> 01:01:07,497 フラメンコを見に行って 魅力に取りつかれたの 891 01:01:10,792 --> 01:01:13,044 マイルスを誘ったわ 892 01:01:13,127 --> 01:01:13,628 同じ感動を 味わってほしかった 893 01:01:13,628 --> 01:01:16,506 同じ感動を 味わってほしかった 894 01:01:13,628 --> 01:01:16,506 妻 フランシス・テイラー・ デイビス 895 01:01:16,506 --> 01:01:16,589 妻 フランシス・テイラー・ デイビス 896 01:01:16,589 --> 01:01:18,257 妻 フランシス・テイラー・ デイビス 897 01:01:16,589 --> 01:01:18,257 彼は しぶしぶ承諾したわ 898 01:01:18,257 --> 01:01:19,258 彼は しぶしぶ承諾したわ 899 01:01:20,093 --> 01:01:23,721 フラメンコを見た 音楽と踊りをね 900 01:01:29,018 --> 01:01:30,645 劇場を出ると― 901 01:01:31,562 --> 01:01:32,480 2人で… 902 01:01:33,272 --> 01:01:36,317 レコード店にかけこんだわ 903 01:01:37,276 --> 01:01:40,196 フラメンコ音楽を買い占めた 904 01:02:00,883 --> 01:02:04,887 「スケッチ・オブ・ スペイン」は難しかった 905 01:02:05,638 --> 01:02:09,392 歌のパートを トランペットで吹くんだ 906 01:02:09,684 --> 01:02:11,561 アドリブは難しい 907 01:02:13,438 --> 01:02:18,568 喜びと悲しみを 同時に表現しなきゃならない 908 01:02:20,153 --> 01:02:25,533 そんな曲を何度も吹けば 表現すべき感情を見失う 909 01:02:30,830 --> 01:02:32,707 仕上がりは上々だ 910 01:02:33,040 --> 01:02:35,084 レコードも売れた 911 01:02:38,463 --> 01:02:40,173 あるとき王女が… 912 01:02:40,256 --> 01:02:42,175 それは君のこと? 913 01:02:42,258 --> 01:02:43,593 恋をしたの 914 01:02:43,676 --> 01:02:45,595 難しいこと? 915 01:02:45,678 --> 01:02:47,513 とっても簡単よ 916 01:02:48,097 --> 01:02:51,142 すてきな王子様だったもの 917 01:02:51,851 --> 01:02:53,436 運命のお方よ 918 01:03:07,784 --> 01:03:10,161 力強いメロディーを好む 919 01:03:12,914 --> 01:03:17,835 力強いメロディーは メッセージを伝えられる 920 01:03:18,044 --> 01:03:19,086 “聞き慣れた音楽も―” 921 01:03:19,086 --> 01:03:20,880 “聞き慣れた音楽も―” 922 01:03:19,086 --> 01:03:20,880 作家 グレッグ・テイト 923 01:03:20,880 --> 01:03:21,172 作家 グレッグ・テイト 924 01:03:21,172 --> 01:03:23,758 作家 グレッグ・テイト 925 01:03:21,172 --> 01:03:23,758 “こんなに美しい音に なるんだぞ”と 926 01:03:23,758 --> 01:03:24,634 “こんなに美しい音に なるんだぞ”と 927 01:03:28,471 --> 01:03:33,601 ディズニー映画から “いつか王子様が”を選び 928 01:03:34,143 --> 01:03:38,815 すばらしく感情的で 深い音楽に変化させた 929 01:03:38,981 --> 01:03:42,276 “妻フランシスに捧げる”と 930 01:03:43,027 --> 01:03:48,533 彼の演奏には彼女への愛と 思いが感じられた 931 01:03:56,749 --> 01:03:58,501 ジャケットに― 932 01:03:58,584 --> 01:04:01,420 初めて私が起用されたわ 933 01:04:02,255 --> 01:04:04,340 彼は別の街にいた 934 01:04:05,049 --> 01:04:07,760 だけど撮影中に― 935 01:04:08,594 --> 01:04:12,849 何度も衣装のことで 電話をかけてきた 936 01:04:12,932 --> 01:04:17,436 私が完璧な姿かどうか 確かめたかったの 937 01:04:18,145 --> 01:04:20,857 もちろん完璧よ 938 01:04:26,487 --> 01:04:29,365 頬にホクロをつけた 939 01:04:29,448 --> 01:04:31,784 おしゃれでしょ? 940 01:04:35,580 --> 01:04:37,498 マイルス・デイビス 「サムデイ・マイ・ プリンス・ウィル・カム」 941 01:04:37,498 --> 01:04:39,834 マイルス・デイビス 「サムデイ・マイ・ プリンス・ウィル・カム」 942 01:04:37,498 --> 01:04:39,834 このアルバム以降― 943 01:04:39,834 --> 01:04:39,917 マイルス・デイビス 「サムデイ・マイ・ プリンス・ウィル・カム」 944 01:04:39,917 --> 01:04:41,419 マイルス・デイビス 「サムデイ・マイ・ プリンス・ウィル・カム」 945 01:04:39,917 --> 01:04:41,419 ジャケットには 黒人女性を使うよう要求した 946 01:04:41,419 --> 01:04:45,172 ジャケットには 黒人女性を使うよう要求した 947 01:04:46,173 --> 01:04:50,052 俺のアルバムだし 妻の王子様は俺だ 948 01:04:50,136 --> 01:04:52,680 だから妻を起用した 949 01:04:54,473 --> 01:04:58,269 黒人女性の美しさを称えてる 950 01:04:58,352 --> 01:05:02,523 “この女性の美しさを 表現したい” 951 01:05:02,607 --> 01:05:06,736 “俺の音楽と 俺の楽器を通してな”と 952 01:05:07,445 --> 01:05:11,073 ただ奥さんが 魅力的だったのさ 953 01:05:20,666 --> 01:05:22,043 誰もが憧れた舞台よ 954 01:05:22,043 --> 01:05:22,919 誰もが憧れた舞台よ 955 01:05:22,043 --> 01:05:22,919 「ウエスト・サイド 物語」 956 01:05:22,919 --> 01:05:23,502 「ウエスト・サイド 物語」 957 01:05:23,502 --> 01:05:23,920 「ウエスト・サイド 物語」 958 01:05:23,502 --> 01:05:23,920 ミュージカルの巨匠たちが 集結してた 959 01:05:23,920 --> 01:05:28,007 ミュージカルの巨匠たちが 集結してた 960 01:05:33,346 --> 01:05:37,683 オーディションには 300人以上が応募した 961 01:05:39,101 --> 01:05:43,147 私はステージに上がり 指を鳴らして… 962 01:05:47,652 --> 01:05:50,071 スキャットを歌ったの 963 01:05:50,196 --> 01:05:53,240 みんな目を丸くしてた 964 01:05:53,324 --> 01:05:54,992 それで合格よ 965 01:06:07,505 --> 01:06:11,342 この頃の俺は 大量の酒をあおり 966 01:06:11,425 --> 01:06:13,719 コカインを吸っていた 967 01:06:14,679 --> 01:06:17,473 そのせいでイライラした 968 01:06:19,642 --> 01:06:23,229 俺もフランシスにだけは 嫉妬する 969 01:06:24,271 --> 01:06:26,899 嫉妬心に薬物に酒 970 01:06:27,316 --> 01:06:31,570 彼女は俺を 異常者を見る目で見た 971 01:06:33,531 --> 01:06:36,617 俺は正気のつもりだった 972 01:06:38,828 --> 01:06:41,372 私に関しては嫉妬した 973 01:06:41,956 --> 01:06:43,791 耐えられないの 974 01:06:43,874 --> 01:06:47,211 私が別の誰かといたり 世間に― 975 01:06:48,212 --> 01:06:49,839 注目されるとね 976 01:06:51,465 --> 01:06:56,012 劇場まで迎えにきて こう言った 977 01:06:56,095 --> 01:07:00,891 “ミュージカルを降りて 俺と一緒にいろ” 978 01:07:04,979 --> 01:07:06,605 言葉がなかった 979 01:07:11,569 --> 01:07:13,029 でも愛してた 980 01:07:13,738 --> 01:07:15,072 従ったわ 981 01:07:16,365 --> 01:07:17,491 降板した 982 01:07:20,661 --> 01:07:22,663 子供たちを呼び寄せた 983 01:07:22,830 --> 01:07:26,250 シェリルとグレゴリーと リトル・マイルス 984 01:07:28,085 --> 01:07:31,797 私の新しい舞台はキッチンよ 985 01:07:34,633 --> 01:07:37,303 ニューヨークに引っ越し 学校に入った 986 01:07:37,303 --> 01:07:38,637 ニューヨークに引っ越し 学校に入った 987 01:07:37,303 --> 01:07:38,637 娘 シェリル・デイビス 988 01:07:38,637 --> 01:07:38,721 娘 シェリル・デイビス 989 01:07:38,721 --> 01:07:42,099 娘 シェリル・デイビス 990 01:07:38,721 --> 01:07:42,099 学校に行き 帰ったら宿題をする日々 991 01:07:42,099 --> 01:07:42,933 学校に行き 帰ったら宿題をする日々 992 01:07:44,310 --> 01:07:46,312 母の生活も一変した 993 01:07:48,397 --> 01:07:52,068 ずっと舞台中心で 料理はできない 994 01:07:54,111 --> 01:07:55,071 彼は― 995 01:07:55,946 --> 01:07:57,740 “よく見て 聞け” 996 01:07:58,491 --> 01:08:00,618 “俺のマネをしろ” 997 01:08:03,204 --> 01:08:04,705 料理を覚えた 998 01:08:06,624 --> 01:08:08,542 彼女は料理中に― 999 01:08:08,626 --> 01:08:11,337 時々 2階に上がった 1000 01:08:11,921 --> 01:08:15,716 その時のことを のちに教えてくれた 1001 01:08:15,841 --> 01:08:20,304 “2階でバレーシューズを 見ていた”と 1002 01:08:25,559 --> 01:08:29,188 あまり口には 出さない人だった 1003 01:08:31,065 --> 01:08:32,983 踊り続けていたら― 1004 01:08:34,026 --> 01:08:35,611 何ができたか 1005 01:08:40,282 --> 01:08:44,245 1965年4月 股関節の置換手術で― 1006 01:08:44,328 --> 01:08:47,248 スネの骨を移植した 1007 01:08:47,957 --> 01:08:51,752 でも失敗して 8月に再手術をした 1008 01:08:52,670 --> 01:08:55,005 ひどい痛みが続き 1009 01:08:55,881 --> 01:09:00,344 大量の酒と鎮痛剤を 飲むようになった 1010 01:09:01,220 --> 01:09:03,305 コカインも増えた 1011 01:09:04,306 --> 01:09:06,392 絶望感からだ 1012 01:09:08,185 --> 01:09:10,396 嫉妬心と― 1013 01:09:11,397 --> 01:09:12,398 コカイン 1014 01:09:13,691 --> 01:09:14,733 鎮痛剤 1015 01:09:15,568 --> 01:09:18,070 ウィスキー&ミルクよ 1016 01:09:19,029 --> 01:09:20,573 あとで知った 1017 01:09:23,534 --> 01:09:27,580 4つを合わせると 人は限界を超える 1018 01:09:29,248 --> 01:09:30,666 彼も超えた 1019 01:09:38,132 --> 01:09:41,594 バードランドで彼といた時… 1020 01:09:50,019 --> 01:09:53,397 クインシー・ ジョーンズがいた 1021 01:10:06,243 --> 01:10:07,703 家に帰って 1022 01:10:08,204 --> 01:10:13,083 マイルスに言ったの “クインシーはステキ”って 1023 01:10:19,173 --> 01:10:20,507 突然だったわ 1024 01:10:22,468 --> 01:10:23,677 一瞬のこと 1025 01:10:25,804 --> 01:10:28,599 星が見えて 私は倒れてた 1026 01:10:30,726 --> 01:10:33,938 信じられない出来事だった 1027 01:10:34,021 --> 01:10:36,190 殴られたのは初めてよ 1028 01:10:39,193 --> 01:10:40,444 それが最初 1029 01:10:41,654 --> 01:10:45,241 残念ながら最後じゃなかった 1030 01:10:50,704 --> 01:10:53,624 彼とは別れないと思ってた 1031 01:10:54,667 --> 01:10:55,542 でも― 1032 01:10:56,543 --> 01:10:58,170 この時に別れた 1033 01:11:05,511 --> 01:11:07,179 今なら分かる 1034 01:11:08,347 --> 01:11:11,100 彼女は最高の妻だった 1035 01:11:13,310 --> 01:11:17,314 俺がひどいことをして 関係を壊した 1036 01:11:18,691 --> 01:11:20,276 今 気付いたんだ 1037 01:11:20,985 --> 01:11:23,195 あの時 気付きたかった 1038 01:11:25,656 --> 01:11:27,533 彼女の話ばかりした 1039 01:11:28,075 --> 01:11:28,284 友人 コーテス・マッコイ 1040 01:11:28,284 --> 01:11:32,746 友人 コーテス・マッコイ 1041 01:11:28,284 --> 01:11:32,746 離婚して5年がたっても こう話してた 1042 01:11:32,746 --> 01:11:33,998 離婚して5年がたっても こう話してた 1043 01:11:35,332 --> 01:11:39,878 “あの女性の服 妻に買った服に似てる” 1044 01:11:43,215 --> 01:11:44,508 別れたあと 1045 01:11:45,217 --> 01:11:48,220 “悪かった”と言ってきた 1046 01:11:48,929 --> 01:11:50,389 それから― 1047 01:11:50,973 --> 01:11:54,810 “私を手に入れる男は 幸せな野郎だ”と 1048 01:11:59,356 --> 01:12:01,066 そう言ったわ 1049 01:12:03,444 --> 01:12:04,820 そのとおりよ 1050 01:12:31,138 --> 01:12:33,974 コルトレーンは脱退前に― 1051 01:12:34,058 --> 01:12:36,143 独り立ちを始めた 1052 01:12:37,227 --> 01:12:40,314 その時 バンドの魔法は解け 1053 01:12:40,397 --> 01:12:44,526 メンバーは 無関心になっていった 1054 01:12:45,069 --> 01:12:47,363 バンドは解散だ 1055 01:12:48,489 --> 01:12:51,367 悲しくないと言えば ウソになる 1056 01:12:51,450 --> 01:12:53,786 このバンドが好きだった 1057 01:12:55,287 --> 01:12:57,956 最高の小楽団だった 1058 01:12:59,750 --> 01:13:02,378 少なくとも当時はな 1059 01:13:03,253 --> 01:13:06,757 俺は常に 新しい音楽を求めていた 1060 01:13:06,840 --> 01:13:09,635 音楽への新しい挑戦だ 1061 01:13:10,636 --> 01:13:12,930 踏み出す時がきた 1062 01:13:20,729 --> 01:13:25,442 私が演奏していたクラブに マイルスが来た 1063 01:13:25,526 --> 01:13:28,904 ベース ロン・カーター 1064 01:13:25,526 --> 01:13:28,904 黒のケープとハットで 謎めいていた 1065 01:13:28,904 --> 01:13:29,279 黒のケープとハットで 謎めいていた 1066 01:13:29,822 --> 01:13:33,700 “ベース奏者を探してる 興味あるか?” 1067 01:13:33,951 --> 01:13:37,913 彼よりホットなのは ホットケーキだけだ 1068 01:13:40,207 --> 01:13:41,792 電話が鳴って 1069 01:13:42,042 --> 01:13:43,168 ギターが聞こえた 1070 01:13:43,168 --> 01:13:43,710 ギターが聞こえた 1071 01:13:43,168 --> 01:13:43,710 サックス ウェイン・ショーター 1072 01:13:43,710 --> 01:13:44,378 サックス ウェイン・ショーター 1073 01:13:44,378 --> 01:13:46,964 サックス ウェイン・ショーター 1074 01:13:44,378 --> 01:13:46,964 誰かがギターを弾いてる 1075 01:13:46,964 --> 01:13:47,631 サックス ウェイン・ショーター 1076 01:13:47,631 --> 01:13:48,173 サックス ウェイン・ショーター 1077 01:13:47,631 --> 01:13:48,173 電話口で声が― 1078 01:13:48,173 --> 01:13:49,091 電話口で声が― 1079 01:13:49,550 --> 01:13:51,969 “ギターは最高だろ” 1080 01:13:53,262 --> 01:13:54,179 “明日 俺の家に来い” 1081 01:13:54,179 --> 01:13:55,931 “明日 俺の家に来い” 1082 01:13:54,179 --> 01:13:55,931 ピアノ ハービー・ハンコック 1083 01:13:55,931 --> 01:13:56,682 ピアノ ハービー・ハンコック 1084 01:13:56,682 --> 01:13:57,683 ピアノ ハービー・ハンコック 1085 01:13:56,682 --> 01:13:57,683 ガチャン 1086 01:13:57,683 --> 01:13:58,559 ピアノ ハービー・ハンコック 1087 01:13:58,559 --> 01:13:58,934 ピアノ ハービー・ハンコック 1088 01:13:58,559 --> 01:13:58,934 名乗りもせず 1089 01:13:58,934 --> 01:14:00,310 名乗りもせず 1090 01:14:00,727 --> 01:14:03,730 住所も電話番号も言わない 1091 01:14:04,148 --> 01:14:05,899 でもマイルスだ 1092 01:14:09,528 --> 01:14:11,822 彼から航空券が届き― 1093 01:14:11,905 --> 01:14:15,200 タキシードを作らせてくれた 1094 01:14:15,576 --> 01:14:17,953 行き先はカリフォルニア 1095 01:14:18,412 --> 01:14:20,414 マイルス 曲名は? 1096 01:14:21,582 --> 01:14:24,334 誰か? 彼はのどが悪い 1097 01:14:27,087 --> 01:14:31,049 ではマイルス・デイビス・ クインテットです 1098 01:14:36,722 --> 01:14:39,600 ’60年代最高の クインテットだ 1099 01:14:39,683 --> 01:14:43,187 まったく新しい 即興演奏法によって― 1100 01:14:43,270 --> 01:14:48,984 高レベルの民主主義の思想を 音楽に取り入れた 1101 01:14:49,193 --> 01:14:52,738 誰でも好きなように 解釈できる 1102 01:15:04,166 --> 01:15:10,380 若くて新しい無名の奏者を 集め続けた 1103 01:15:10,881 --> 01:15:12,174 バンドに招き 個人の音楽を確立させるの 1104 01:15:12,174 --> 01:15:14,885 バンドに招き 個人の音楽を確立させるの 1105 01:15:12,174 --> 01:15:14,885 音楽学者 タミー・L・カーノドル 1106 01:15:14,885 --> 01:15:15,260 バンドに招き 個人の音楽を確立させるの 1107 01:15:15,761 --> 01:15:21,266 そしてバンドの再編成を 何度も繰り返していった 1108 01:15:25,145 --> 01:15:28,273 参加した時 僕は23歳だった 1109 01:15:28,357 --> 01:15:31,318 トニー・ウィリアムスは17歳 1110 01:15:32,903 --> 01:15:35,322 ほんの子供だ 1111 01:15:48,752 --> 01:15:50,712 創造力と才能は― 1112 01:15:50,796 --> 01:15:54,967 どんな芸術表現でも 年齢とは関係ない 1113 01:15:55,050 --> 01:15:56,969 あるか ないかだ 1114 01:15:58,345 --> 01:16:00,973 年月では得られない 1115 01:16:03,267 --> 01:16:06,395 毎晩 実験室に向かう気分さ 1116 01:16:07,271 --> 01:16:08,730 化学の実験だ 1117 01:16:09,356 --> 01:16:14,611 変調やテンポといった 音楽の成分を組み合わせ 1118 01:16:15,362 --> 01:16:19,658 少々のスリルと共に 安全に爆発させる 1119 01:16:20,951 --> 01:16:22,119 毎晩だ 1120 01:16:34,464 --> 01:16:36,508 決まり文句は― 1121 01:16:36,592 --> 01:16:39,761 “ステージの上で生きろ” 1122 01:16:39,845 --> 01:16:41,805 “客前で生み出せ” 1123 01:16:42,514 --> 01:16:46,059 “経験に頼るな”ってことだ 1124 01:16:46,685 --> 01:16:49,229 未知の領域に踏み込む 1125 01:16:56,987 --> 01:17:00,866 リハーサルは嫌いだ いい案が無駄になる 1126 01:17:00,949 --> 01:17:03,702 弾きながら修正すればいい 1127 01:17:05,621 --> 01:17:07,039 彼に言われた 1128 01:17:07,122 --> 01:17:12,669 “客前で練習させるために カネを払ってるんだ”と 1129 01:17:12,919 --> 01:17:15,130 観客が嫌がるだろ 1130 01:17:16,590 --> 01:17:18,383 “観客は任せろ” 1131 01:17:19,718 --> 01:17:20,969 “黙って弾け” 1132 01:17:30,604 --> 01:17:32,731 こんなの吹けない 1133 01:17:32,814 --> 01:17:33,857 大丈夫さ 1134 01:17:35,859 --> 01:17:36,693 いいぞ 1135 01:17:37,110 --> 01:17:39,780 ハービー どう思う? 1136 01:17:41,239 --> 01:17:42,532 分けよう 1137 01:17:42,616 --> 01:17:43,784 そうだな 1138 01:17:44,993 --> 01:17:46,203 6だ 1139 01:17:46,953 --> 01:17:49,790 待てよ テオ 何を吹けって? 1140 01:17:49,873 --> 01:17:51,083 最初は吹くな 1141 01:17:51,166 --> 01:17:52,125 始めて 1142 01:17:53,418 --> 01:17:56,296 演奏は1テイクだ 1143 01:17:57,172 --> 01:18:01,885 ホーン奏者が全員 メロディーを正しく吹き 1144 01:18:01,968 --> 01:18:06,264 1つもミスがなければ レコードに収録する 1145 01:18:21,947 --> 01:18:26,660 私が軍隊時代に使っていた ノートがあった 1146 01:18:26,910 --> 01:18:30,789 マイルスに “曲はあるか?”と聞かれ 1147 01:18:31,456 --> 01:18:33,709 ノートを見せた 1148 01:18:33,792 --> 01:18:36,253 すぐ“これをやろう”と 1149 01:18:36,336 --> 01:18:37,212 曲名は? 1150 01:18:37,295 --> 01:18:39,506 “フットプリント” 1151 01:18:43,260 --> 01:18:45,011 ぶっつけ本番だ 1152 01:18:45,345 --> 01:18:47,973 楽譜を読んで録音する 1153 01:18:54,479 --> 01:18:56,815 次の録音の話になると 1154 01:18:56,898 --> 01:19:00,777 “次の水曜だ ノートを持ってこい” 1155 01:19:03,613 --> 01:19:07,492 1969年 1156 01:19:24,551 --> 01:19:27,929 1969年は歴史的にみると 人間が月を歩いた年だ 1157 01:19:27,929 --> 01:19:29,514 1969年は歴史的にみると 人間が月を歩いた年だ 1158 01:19:27,929 --> 01:19:29,514 ドラム レニー・ホワイト 1159 01:19:29,514 --> 01:19:30,140 ドラム レニー・ホワイト 1160 01:19:30,140 --> 01:19:32,768 ドラム レニー・ホワイト 1161 01:19:30,140 --> 01:19:32,768 そしてアメリカは まだ― 1162 01:19:32,768 --> 01:19:33,351 そしてアメリカは まだ― 1163 01:19:33,727 --> 01:19:36,813 ベトナム戦争の 真っただ中にいた 1164 01:19:36,897 --> 01:19:41,193 若い世代の大切さを 察知していたはずだ 1165 01:19:41,276 --> 01:19:43,612 未来を見る男だからね 1166 01:19:46,573 --> 01:19:51,161 1969年はロックとファンクが 爆発的に売れた 1167 01:19:51,703 --> 01:19:55,248 観客はスタジアムに集まり 1168 01:19:55,707 --> 01:19:58,710 ジャズ音楽は廃れていった 1169 01:19:59,294 --> 01:20:03,381 俺たちのクラブは 客も まばらだった 1170 01:20:04,299 --> 01:20:06,051 それで考えた 1171 01:20:13,600 --> 01:20:17,562 J(ジミ)・ヘンドリックス S(スライ)・ストーン J(ジェームズ)・ブラウン 1172 01:20:17,729 --> 01:20:20,357 彼らを見て気付いたんだ コンサートには人が集まる 1173 01:20:20,357 --> 01:20:22,859 彼らを見て気付いたんだ コンサートには人が集まる 1174 01:20:20,357 --> 01:20:22,859 友人 カルロス・サンタナ 1175 01:20:22,859 --> 01:20:23,109 彼らを見て気付いたんだ コンサートには人が集まる 1176 01:20:25,862 --> 01:20:28,949 45分のコンサート1回で 1177 01:20:29,032 --> 01:20:33,662 クラブの一晩3公演の 1週間分が稼げる 1178 01:20:35,205 --> 01:20:38,708 スライ&ザ・ファミリー・ ストーンから― 1179 01:20:38,792 --> 01:20:40,794 影響を受けた 1180 01:20:42,295 --> 01:20:46,383 スライの収入を知り “何だって!”と 1181 01:20:47,884 --> 01:20:51,680 その後 マイルスは やり方を変えた 1182 01:20:53,890 --> 01:20:58,478 ロックミュージシャンは 音楽を何も分かってない 1183 01:20:59,521 --> 01:21:05,694 あいつらに あれだけの レコードが売れるなら 1184 01:21:05,777 --> 01:21:09,155 俺にも売れる もっと多くだ 1185 01:21:11,616 --> 01:21:13,326 マイルスが会いに来て 1186 01:21:13,326 --> 01:21:14,411 マイルスが会いに来て コロムビア社長 クライヴ・デイビス 1187 01:21:14,411 --> 01:21:14,494 コロムビア社長 クライヴ・デイビス 1188 01:21:14,494 --> 01:21:17,539 コロムビア社長 クライヴ・デイビス とても緊迫した 話し合いをした 1189 01:21:17,539 --> 01:21:18,039 とても緊迫した 話し合いをした 1190 01:21:19,374 --> 01:21:22,210 “ロン毛の白人野郎どもが” 1191 01:21:22,294 --> 01:21:26,965 “俺の音楽 俺のリフを 盗んでやがる”と 1192 01:21:27,465 --> 01:21:31,094 息まいて 契約解除を求めてきた 1193 01:21:32,137 --> 01:21:35,432 私は“よし 共演者をつける” 1194 01:21:35,849 --> 01:21:40,562 “異なる世代の ミュージシャンたちと―” 1195 01:21:40,812 --> 01:21:43,315 “様々な音楽をやろう” 1196 01:21:43,398 --> 01:21:49,195 分かってたんだ 共演から何かが始まるとね 1197 01:21:50,989 --> 01:21:54,075 “イフ・アイム・イン・ラック・ アイ・マイト・ゲット・ ピックド・アップ” 1198 01:21:54,159 --> 01:21:55,660 ベティー・デイビス 1199 01:21:58,079 --> 01:22:00,165 この頃 出会ったのが 1200 01:22:00,248 --> 01:22:03,627 若くて美しい ベティー・メイブリーだ 1201 01:22:04,210 --> 01:22:09,174 斬新な女性で 進むべき道を照らしてくれた 1202 01:22:09,966 --> 01:22:15,305 ベティー・デイビスは 過激で力強い黒人女性で― 1203 01:22:15,388 --> 01:22:19,392 NYとCAのロック界を 席巻していた 1204 01:22:20,477 --> 01:22:25,315 音楽界で起きてることを 彼女を通して知ったんだ 1205 01:22:30,528 --> 01:22:35,450 俺の私生活にも音楽にも 大きな影響を与えた 1206 01:22:35,533 --> 01:22:38,370 俺の服装の趣味も変えた 1207 01:22:39,621 --> 01:22:44,834 マイルスの自宅に 奇妙な服がたくさんあった 1208 01:22:44,918 --> 01:22:47,379 妙な形の靴に 帽子もだ 1209 01:22:47,462 --> 01:22:48,838 “何ごとだ?” 1210 01:22:49,756 --> 01:22:52,425 カッチリから転換した 1211 01:23:04,771 --> 01:23:06,439 進路を変更した 1212 01:23:06,523 --> 01:23:10,610 自分の音楽を信じ 愛し続けるためにだ 1213 01:23:13,697 --> 01:23:16,992 俺はエレキベースに 興味があった 1214 01:23:17,075 --> 01:23:21,079 コントラバスよりも 聞きたい音をくれる 1215 01:23:25,375 --> 01:23:28,128 マイルスが説得に来た 1216 01:23:28,837 --> 01:23:29,754 “コントラバスと同じだ” 1217 01:23:29,754 --> 01:23:31,506 “コントラバスと同じだ” 1218 01:23:29,754 --> 01:23:31,506 ベース ロン・カーター 1219 01:23:31,506 --> 01:23:31,589 ベース ロン・カーター 1220 01:23:31,589 --> 01:23:33,008 ベース ロン・カーター 1221 01:23:31,589 --> 01:23:33,008 同じじゃない 1222 01:23:33,008 --> 01:23:33,842 ベース ロン・カーター 1223 01:23:33,842 --> 01:23:34,467 ベース ロン・カーター 1224 01:23:33,842 --> 01:23:34,467 楽譜も音色も違う 1225 01:23:34,467 --> 01:23:35,885 楽譜も音色も違う 1226 01:23:35,969 --> 01:23:41,141 響きも音の長さも違う 同じなのは音符の形だけ 1227 01:23:44,644 --> 01:23:49,566 “18歳からやってるんだ 辞めるはずない” 1228 01:23:49,858 --> 01:23:52,193 “君のためでも断る” 1229 01:23:53,319 --> 01:23:54,696 “そうか” 1230 01:23:57,991 --> 01:24:00,702 私は帽子をかぶって去った 1231 01:24:08,043 --> 01:24:13,465 ロンはエレキベースを拒否し バンドを脱退 1232 01:24:13,715 --> 01:24:18,219 新しいアプローチを 考える必要があった 1233 01:24:20,180 --> 01:24:23,933 1969年8月 俺はスタジオに入った 1234 01:24:26,019 --> 01:24:30,231 コロムビアスタジオに 10時と言われ― 1235 01:24:31,024 --> 01:24:34,527 9時半に行って 清掃員に案内された 1236 01:24:37,572 --> 01:24:41,159 用意したのは 新しいスケッチだけ 1237 01:24:41,242 --> 01:24:43,369 「カインド・オブ・ ブルー」と同じだ 1238 01:24:44,871 --> 01:24:50,668 メンバーには“好きな音を 好きなように弾け”と伝えた 1239 01:24:51,294 --> 01:24:53,296 みんな そうした 1240 01:24:58,009 --> 01:25:00,553 パーカッションが4人 1241 01:25:01,262 --> 01:25:03,598 ベースが2人 1242 01:25:03,681 --> 01:25:07,852 キーボードが2~3人 ギターが1人 1243 01:25:09,562 --> 01:25:12,857 壮大な即興演奏バンドだ 1244 01:25:18,613 --> 01:25:21,825 ドラムは シンバルとスネアだけ 1245 01:25:22,075 --> 01:25:27,163 「ビッチェズ・ブリュー」の 冒頭を演奏した 1246 01:25:30,625 --> 01:25:31,501 そして… 1247 01:25:39,384 --> 01:25:45,265 トランペットの音が ビルに こだまするみたいだ 1248 01:25:45,348 --> 01:25:46,975 午前3時にね 1249 01:25:49,310 --> 01:25:53,481 高層ビルが グランドキャニオンに感じる 1250 01:26:05,285 --> 01:26:07,996 不吉なメロディーなんだ 1251 01:26:08,079 --> 01:26:10,874 何かが起きそうな予感がする 1252 01:26:23,928 --> 01:26:28,433 動くアメーバのように メロディーが進む 1253 01:26:29,142 --> 01:26:30,685 こんな感じだ 1254 01:26:30,852 --> 01:26:33,104 飛び出す音もあるが 1255 01:26:33,271 --> 01:26:38,902 音楽全体が こんなふうに 一緒に動いていく 1256 01:26:56,169 --> 01:26:58,546 ラジオで誰かが言った 1257 01:26:58,630 --> 01:27:01,883 “新生マイルスの誕生だ” 1258 01:27:08,932 --> 01:27:12,352 CBS覚書 1969年11月14日 マイルスがタイトルを提案: 1259 01:27:12,435 --> 01:27:14,479 「ビッチェズ・ブリュー」 1260 01:27:14,562 --> 01:27:15,813 助言 求む 1261 01:27:16,522 --> 01:27:17,065 マイルス・デイビス 「ビッチェズ・ ブリュー」 1262 01:27:17,065 --> 01:27:20,443 マイルス・デイビス 「ビッチェズ・ ブリュー」 1263 01:27:17,065 --> 01:27:20,443 放送禁止用語じゃないかと 心配した 1264 01:27:20,944 --> 01:27:25,114 彼は“それより このジャケットを見ろ” 1265 01:27:28,368 --> 01:27:33,206 今までのアルバムの中で 最も売れ行きが早く 1266 01:27:33,289 --> 01:27:37,085 ジャズ史上最高の 販売枚数を記録した 1267 01:27:40,213 --> 01:27:44,217 この頃からコンサート会場で 演奏を始めた 1268 01:27:45,343 --> 01:27:48,179 小切手を持って楽屋に来ると 1269 01:27:49,681 --> 01:27:52,517 それを見て こう言った 1270 01:27:53,601 --> 01:27:55,186 “泥棒の気分だ” 1271 01:28:00,525 --> 01:28:03,736 125丁目のインド料理店で 1272 01:28:04,696 --> 01:28:06,364 マイルスと2時間ほど話した 1273 01:28:06,364 --> 01:28:07,907 マイルスと2時間ほど話した 1274 01:28:06,364 --> 01:28:07,907 パーカッション ジェームズ・ エムトゥーメ 1275 01:28:07,907 --> 01:28:08,074 パーカッション ジェームズ・ エムトゥーメ 1276 01:28:08,074 --> 01:28:11,160 パーカッション ジェームズ・ エムトゥーメ 1277 01:28:08,074 --> 01:28:11,160 帰り際にマイルスが言う 1278 01:28:11,995 --> 01:28:13,913 “どう思う?” 1279 01:28:14,539 --> 01:28:15,331 僕は… 1280 01:28:15,748 --> 01:28:18,376 “待てよ 何の話だ?” 1281 01:28:18,459 --> 01:28:21,337 唐突すぎて分からなかった 1282 01:28:21,421 --> 01:28:23,673 “この音楽だよ” 1283 01:28:25,383 --> 01:28:29,220 店ではインド音楽が流れてる 1284 01:28:29,762 --> 01:28:34,350 “次のアルバムで これをやりたいと思う” 1285 01:28:34,434 --> 01:28:39,689 “タブラとエレキシタールを ファンクに融合する” 1286 01:28:57,623 --> 01:29:00,585 「オン・ザ・コーナー」は 明解だ 1287 01:29:00,668 --> 01:29:02,003 こうするだけ 1288 01:29:04,589 --> 01:29:06,382 強さを増していく 1289 01:29:06,466 --> 01:29:09,135 1、2… これがファンクだ 1290 01:29:16,517 --> 01:29:19,312 爆発させる ビッグバンだ 1291 01:29:19,395 --> 01:29:21,397 毎晩 激しくなる 1292 01:29:21,481 --> 01:29:25,651 荒々しく危険な感じを かもし出すんだ 1293 01:29:25,735 --> 01:29:30,073 パーカッションや ディストーションを使ってね 1294 01:29:36,996 --> 01:29:39,165 コズミックジャングルさ 1295 01:29:41,709 --> 01:29:43,294 この時からマイルスは― 1296 01:29:43,294 --> 01:29:44,379 この時からマイルスは― 1297 01:29:43,294 --> 01:29:44,379 作家 グレッグ・テイト 1298 01:29:44,379 --> 01:29:44,462 作家 グレッグ・テイト 1299 01:29:44,462 --> 01:29:48,049 作家 グレッグ・テイト 1300 01:29:44,462 --> 01:29:48,049 ブードゥー教の司祭のような 存在になった 1301 01:29:48,049 --> 01:29:48,299 ブードゥー教の司祭のような 存在になった 1302 01:29:52,637 --> 01:29:55,348 麻薬のような音楽だ 1303 01:29:56,391 --> 01:29:59,143 大麻でハイになった人が 1304 01:29:59,227 --> 01:30:01,354 急にシラフになる 1305 01:30:01,437 --> 01:30:03,564 シラフがハイなんだ 1306 01:30:04,440 --> 01:30:07,443 彼の音楽で すべてが逆になる 1307 01:30:14,700 --> 01:30:18,037 音楽の変化で客層が変わった 1308 01:30:18,663 --> 01:30:20,998 時代を反映する音楽だ 1309 01:30:21,332 --> 01:30:25,169 作家 クインシー・トループ 1310 01:30:21,332 --> 01:30:25,169 “今” 何が起きているかだ 10年前じゃない 1311 01:30:25,169 --> 01:30:25,461 “今” 何が起きているかだ 10年前じゃない 1312 01:30:30,675 --> 01:30:34,429 作家 スタンリー・クラウチ 1313 01:30:30,675 --> 01:30:34,429 何が人を引きつけたのか 今でも分からない 1314 01:30:34,429 --> 01:30:34,971 何が人を引きつけたのか 今でも分からない 1315 01:30:37,974 --> 01:30:41,269 何を伝えたかったのか さっぱりだ 1316 01:30:42,186 --> 01:30:43,938 音もよくない 1317 01:30:48,151 --> 01:30:51,696 理解できない人には こう言ってた 1318 01:30:51,779 --> 01:30:55,533 “音を聴かずに 彼に嫉妬してるだけだ” 1319 01:30:55,616 --> 01:30:59,245 “君は彼になれないし 理解もできない" 1320 01:30:59,829 --> 01:31:04,625 “歪んで曲がった精神を 超える存在だから” 1321 01:31:05,334 --> 01:31:07,462 “おい 冷たいな” 1322 01:31:07,587 --> 01:31:08,796 でも正しい 1323 01:31:16,345 --> 01:31:20,349 レコードを多く聴けば 分かるはずだ 1324 01:31:20,433 --> 01:31:25,521 マイルスは’69年~’75年に 急成長した 1325 01:31:25,605 --> 01:31:30,985 どんな音楽や楽器の テンプレートを聴いても 1326 01:31:31,694 --> 01:31:34,572 全部’70年前半のマイルスだ 1327 01:31:35,490 --> 01:31:39,702 新しい音楽を作り 波風を立てていた 1328 01:31:51,923 --> 01:31:54,634 友人 マルグリット・カントゥ 1329 01:31:51,923 --> 01:31:54,634 あの頃の彼は健康だった 1330 01:31:54,634 --> 01:31:55,051 あの頃の彼は健康だった 1331 01:31:56,552 --> 01:31:59,722 食事に気を使い 薬物はせず 1332 01:32:00,806 --> 01:32:04,143 ジムでボクシングをやってた 1333 01:32:04,644 --> 01:32:08,731 当時の彼にとって 健康の優先度は高かった 1334 01:32:18,115 --> 01:32:21,077 でも また薬物を使い始めた 1335 01:32:21,369 --> 01:32:26,123 私の前で使っていなくても 態度で気付くわ 1336 01:32:27,500 --> 01:32:30,378 暴力的で 私に手も上げた 1337 01:32:32,213 --> 01:32:34,715 それで別れたの 1338 01:32:39,637 --> 01:32:43,766 1972年10月 俺は居眠り運転をして― 1339 01:32:43,849 --> 01:32:46,852 愛車で分離帯に突っ込んだ 1340 01:32:47,478 --> 01:32:52,567 3ヵ月近く入院して 退院後は松葉づえ生活だ 1341 01:32:52,650 --> 01:32:55,069 股関節も悪化した 1342 01:32:56,571 --> 01:33:00,449 あの事故は 彼の岐路となる出来事だ 1343 01:33:01,534 --> 01:33:04,704 起きてから寝るまで ひどい痛みが続き 1344 01:33:04,704 --> 01:33:05,538 起きてから寝るまで ひどい痛みが続き 1345 01:33:04,704 --> 01:33:05,538 マネジャー マーク・ロスバウム 1346 01:33:05,538 --> 01:33:06,038 マネジャー マーク・ロスバウム 1347 01:33:06,038 --> 01:33:08,916 マネジャー マーク・ロスバウム 1348 01:33:06,038 --> 01:33:08,916 仕方なく使い始めた 1349 01:33:08,916 --> 01:33:09,000 マネジャー マーク・ロスバウム 1350 01:33:09,000 --> 01:33:09,458 マネジャー マーク・ロスバウム 1351 01:33:09,000 --> 01:33:09,458 処方鎮痛剤やコカイン 1352 01:33:09,458 --> 01:33:11,460 処方鎮痛剤やコカイン 1353 01:33:11,877 --> 01:33:15,256 酒 たばこ 痛みを和らげたかった 1354 01:33:16,340 --> 01:33:20,553 次第に仕事を減らし ツアーも避けた 1355 01:33:21,929 --> 01:33:25,433 マイルスのバンドも なくなった 1356 01:33:28,269 --> 01:33:34,025 何年も苦労を重ねて 精神的に疲れてしまった 1357 01:33:34,525 --> 01:33:36,652 音楽が枯渇した 1358 01:33:38,321 --> 01:33:40,906 表現するものがない 1359 01:33:41,824 --> 01:33:44,994 休息が必要だった 1360 01:33:45,828 --> 01:33:49,498 何より愛してきた音楽から 離れた 1361 01:33:50,583 --> 01:33:55,671 だが離れるほど 俺は闇の世界に沈んでいった 1362 01:33:57,882 --> 01:34:03,054 彼は自宅のアパートに 閉じこもり― 1363 01:34:03,888 --> 01:34:06,390 そこに自分を隔離した 1364 01:34:07,266 --> 01:34:10,645 何週間も出てこなかった 1365 01:34:13,481 --> 01:34:18,861 16歳の頃 暗黒期の彼と ニューヨークで暮らした 1366 01:34:19,904 --> 01:34:21,072 あの頃は家中が暗かった 1367 01:34:21,072 --> 01:34:23,157 あの頃は家中が暗かった 1368 01:34:21,072 --> 01:34:23,157 甥 ヴィンス・ウィルバーン 1369 01:34:23,157 --> 01:34:23,324 甥 ヴィンス・ウィルバーン 1370 01:34:23,324 --> 01:34:24,909 甥 ヴィンス・ウィルバーン 1371 01:34:23,324 --> 01:34:24,909 覚えてるのは― 1372 01:34:24,909 --> 01:34:25,034 甥 ヴィンス・ウィルバーン 1373 01:34:25,034 --> 01:34:25,826 甥 ヴィンス・ウィルバーン 1374 01:34:25,034 --> 01:34:25,826 たばこ ビール瓶 コカインだ 1375 01:34:25,826 --> 01:34:28,746 たばこ ビール瓶 コカインだ 1376 01:34:32,375 --> 01:34:35,670 何度か父の自宅を訪ねた 1377 01:34:36,295 --> 01:34:37,672 暗黒期だ 1378 01:34:38,923 --> 01:34:40,925 父のことは… 1379 01:34:38,923 --> 01:34:40,925 息子 エリン・デイビス 1380 01:34:40,925 --> 01:34:42,760 息子 エリン・デイビス 1381 01:34:42,760 --> 01:34:43,552 息子 エリン・デイビス 1382 01:34:42,760 --> 01:34:43,552 怖かった 1383 01:34:43,552 --> 01:34:43,886 怖かった 1384 01:34:46,430 --> 01:34:50,267 1人で痛みに耐え 音楽もやめてる 1385 01:34:51,519 --> 01:34:54,105 音楽は父にとって 1386 01:34:54,730 --> 01:34:57,024 飲み水と同じなのにだ 1387 01:35:00,152 --> 01:35:03,698 早く終わってほしかった 1388 01:35:05,157 --> 01:35:06,826 まるで別人だ 1389 01:35:07,493 --> 01:35:10,121 戻って欲しかった 1390 01:35:10,996 --> 01:35:13,582 “憧れのおじさん”に 1391 01:35:20,923 --> 01:35:25,261 彼とハーレムに行った 女性が一緒だった 1392 01:35:26,470 --> 01:35:31,559 マイルスは到着すると 僕と彼女に“待ってろ”と 1393 01:35:34,270 --> 01:35:39,483 建物から出てくると ひどくハイになってたよ 1394 01:35:41,652 --> 01:35:44,655 顔にコカインがついてた 1395 01:35:44,739 --> 01:35:48,159 でも怖いから何も言えない 1396 01:35:50,453 --> 01:35:55,374 軽く僕を突いて “彼女とヤッたか?” 1397 01:35:56,208 --> 01:35:58,794 “何もしてない” 1398 01:35:58,878 --> 01:36:02,214 “ヤッたと言うまで 帰らせない” 1399 01:36:04,175 --> 01:36:05,718 エンジンを切る 1400 01:36:06,635 --> 01:36:09,096 “ヤッた”と言うと 1401 01:36:09,180 --> 01:36:12,641 “友達だと思ってたのに” 1402 01:36:12,808 --> 01:36:15,853 彼とは これでも序の口だ 1403 01:36:23,944 --> 01:36:26,781 暗黒期に よく私を訪ねてきた 1404 01:36:26,864 --> 01:36:27,782 “カネが必要だ”とね 1405 01:36:27,782 --> 01:36:29,617 “カネが必要だ”とね 1406 01:36:27,782 --> 01:36:29,617 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 1407 01:36:29,617 --> 01:36:29,700 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 1408 01:36:29,700 --> 01:36:32,578 ジャズプロモーター ジョージ・ウェイン 1409 01:36:29,700 --> 01:36:32,578 貸しても使い果たすんだ 1410 01:36:32,578 --> 01:36:33,037 貸しても使い果たすんだ 1411 01:36:34,330 --> 01:36:37,458 ある日 私はマリーに言った 1412 01:36:38,125 --> 01:36:41,754 “ここからの再起は 難しいだろう” 1413 01:36:42,630 --> 01:36:45,549 “でも まだ分からない” 1414 01:36:47,968 --> 01:36:52,932 この頃 シシリー・タイソンが 俺の元に戻ってきた 1415 01:36:53,808 --> 01:36:59,230 暗黒期を支えてくれた 会う機会も増えた 1416 01:37:00,940 --> 01:37:04,401 彼の状態は最悪だった 1417 01:37:05,069 --> 01:37:05,736 周りの人も 彼自身も― 1418 01:37:05,736 --> 01:37:07,571 周りの人も 彼自身も― 1419 01:37:05,736 --> 01:37:07,571 歴史学者 ジェラルド・アーリー 1420 01:37:07,571 --> 01:37:07,655 歴史学者 ジェラルド・アーリー 1421 01:37:07,655 --> 01:37:10,491 歴史学者 ジェラルド・アーリー 1422 01:37:07,655 --> 01:37:10,491 音楽に復帰できるとは 思わなかった 1423 01:37:10,491 --> 01:37:11,575 音楽に復帰できるとは 思わなかった 1424 01:37:12,827 --> 01:37:18,374 シシリーが彼に教えたの “まだ何かできる” 1425 01:37:18,874 --> 01:37:23,879 彼の創造力は まだ頂点に達していないと 1426 01:37:26,048 --> 01:37:28,717 彼女は来客を追い払ったり 1427 01:37:28,884 --> 01:37:33,848 食生活を正し 飲酒を やめるよう気遣ってくれた 1428 01:37:33,931 --> 01:37:36,058 おかげで薬物も抜けた 1429 01:37:36,934 --> 01:37:42,231 野菜たっぷりの料理と ジュースを作ってくれた 1430 01:37:43,524 --> 01:37:48,529 海辺をランニングして 菜食主義を目指してた 1431 01:37:48,612 --> 01:37:52,408 すごいことだよ 結局 挫折した 1432 01:37:53,951 --> 01:37:56,996 彼は“迎えに来てくれ” 1433 01:37:57,079 --> 01:37:59,123 “肉を食わせろ” 1434 01:38:01,208 --> 01:38:06,964 “肉のにおいを嗅がせろ ソーセージサンドをくれ” 1435 01:38:10,384 --> 01:38:14,221 あれは力を養うための 時期だった 1436 01:38:14,930 --> 01:38:21,645 薬物を断ち 音楽に復帰し 世間に対処する力 1437 01:38:22,187 --> 01:38:24,857 ツアーや評論家に 対応する力 1438 01:38:25,608 --> 01:38:26,859 生きる力をね 1439 01:38:28,485 --> 01:38:33,407 ’75年~’80年前半まで 俺は楽器を持たなかった 1440 01:38:33,949 --> 01:38:37,411 4年以上の間 一度もだ 1441 01:38:39,622 --> 01:38:42,291 結局 6年近く続いた 1442 01:38:45,085 --> 01:38:47,546 何度もテープを渡された 1443 01:38:48,005 --> 01:38:51,467 あらゆるエレキバンドの 音楽だ 1444 01:38:52,301 --> 01:38:57,932 “コンサート2回に 7万ドル払う”と話すと― 1445 01:38:59,350 --> 01:39:02,227 すごい目で私を見た 1446 01:39:04,438 --> 01:39:10,569 それで3万5千ドルの 小切手を渡したんだ 1447 01:39:14,949 --> 01:39:16,367 息をのんだ 1448 01:39:18,118 --> 01:39:25,084 新車でフェラーリ308 GTSi スポーツクーペを購入 1449 01:39:25,167 --> 01:39:26,961 タルガトップだ 1450 01:39:28,170 --> 01:39:30,422 戻る準備はできた 1451 01:39:34,259 --> 01:39:35,719 復帰コンサートのために 新車を買った 1452 01:39:35,719 --> 01:39:37,888 復帰コンサートのために 新車を買った 1453 01:39:35,719 --> 01:39:37,888 ベース マーカス・ミラー 1454 01:39:37,888 --> 01:39:37,972 ベース マーカス・ミラー 1455 01:39:37,972 --> 01:39:40,474 ベース マーカス・ミラー 1456 01:39:37,972 --> 01:39:40,474 僕もシャツを新調 1457 01:39:42,101 --> 01:39:43,644 彼はフェラーリ 1458 01:39:47,147 --> 01:39:48,983 マイルス復活だ 1459 01:39:55,614 --> 01:39:58,867 新しい音を聞かせてくれた 1460 01:40:06,667 --> 01:40:08,627 7年間のブランクがあった 1461 01:40:08,627 --> 01:40:09,670 7年間のブランクがあった 1462 01:40:08,627 --> 01:40:09,670 ギター マイク・スターン 1463 01:40:09,670 --> 01:40:10,671 ギター マイク・スターン 1464 01:40:10,671 --> 01:40:13,382 ギター マイク・スターン 1465 01:40:10,671 --> 01:40:13,382 休止時点で辞めたと言っても 1466 01:40:13,382 --> 01:40:14,633 休止時点で辞めたと言っても 1467 01:40:14,717 --> 01:40:17,094 誰も文句は言わなかったさ 1468 01:40:17,177 --> 01:40:18,470 でも続けた 1469 01:40:31,066 --> 01:40:35,696 単なるアーティストの カムバックじゃない 1470 01:40:35,779 --> 01:40:37,948 人間のカムバックだ 1471 01:40:41,035 --> 01:40:43,620 あんな復活劇は初めてだ 1472 01:40:46,874 --> 01:40:49,418 ジャズフェスの感想は? 1473 01:40:49,501 --> 01:40:52,546 ヨーロッパは楽しかった 1474 01:40:52,629 --> 01:40:55,090 モルデでは遅刻を? 1475 01:40:55,591 --> 01:40:57,134 具合が悪かった 1476 01:40:57,551 --> 01:40:58,677 最初のツアーから 毎日 違う街で公演した 1477 01:40:58,677 --> 01:41:03,098 最初のツアーから 毎日 違う街で公演した 1478 01:40:58,677 --> 01:41:03,098 個人秘書 ミケル・エラム 1479 01:41:03,098 --> 01:41:03,474 最初のツアーから 毎日 違う街で公演した 1480 01:41:06,351 --> 01:41:08,729 夜8時に開演すると― 1481 01:41:10,397 --> 01:41:13,567 ホテルに戻るのは真夜中だ 1482 01:41:14,109 --> 01:41:16,195 そのあと絵を描く 1483 01:41:18,197 --> 01:41:22,785 持ち合わせの画材を使って 絵を描き始める 1484 01:41:26,205 --> 01:41:30,042 ツアー中は 飛行機でも 車の中でも 1485 01:41:30,125 --> 01:41:32,628 空港のラウンジでも描いた 1486 01:41:32,711 --> 01:41:35,631 会場に着けば楽屋でもね 1487 01:41:36,507 --> 01:41:40,552 彼の手は 紙の上を 流れるようだった 1488 01:41:42,137 --> 01:41:47,392 線を間違えることは 音楽のそれと同じですか? 1489 01:41:47,684 --> 01:41:51,271 悪いと感じる音と 隣り合う音が― 1490 01:41:51,980 --> 01:41:54,441 次の音を正してくれる 1491 01:42:02,783 --> 01:42:05,244 ランニングに出かけた時 1492 01:42:05,536 --> 01:42:10,249 画家 ジョー・ゲルバード 1493 01:42:05,536 --> 01:42:10,249 エレベーターが開くと 中に彼がいたの 1494 01:42:10,249 --> 01:42:10,707 エレベーターが開くと 中に彼がいたの 1495 01:42:11,458 --> 01:42:14,002 胸がドキドキしたわ 1496 01:42:15,504 --> 01:42:18,298 映画の一幕みたいだった 1497 01:42:18,382 --> 01:42:20,801 吸血鬼に出くわしたの 1498 01:42:21,635 --> 01:42:25,639 彼は“逃げるなら急げ 君をつかまえに行く” 1499 01:42:26,473 --> 01:42:29,351 一緒に絵を描きはじめた 1500 01:42:36,441 --> 01:42:40,404 彼の行動は あらゆる人の興味を引いた 1501 01:42:40,779 --> 01:42:42,865 なぜ絵画に興味が? 1502 01:42:42,948 --> 01:42:44,908 引っぱりだこだ 1503 01:42:44,992 --> 01:42:46,076 何者だ 1504 01:42:46,952 --> 01:42:49,746 昔の面影はなかった 1505 01:42:49,830 --> 01:42:51,331 新たな門出だ 1506 01:42:51,415 --> 01:42:52,791 トークショーや 1507 01:42:52,875 --> 01:42:55,586 どうも マイルス・デイビスだ 1508 01:42:55,627 --> 01:42:56,879 深夜番組も 1509 01:43:02,384 --> 01:43:06,680 訪れたすべての街で インタビューを受けた 1510 01:43:07,181 --> 01:43:10,017 まったくの別人だった 1511 01:43:17,816 --> 01:43:20,944 プリンスとも共演した 1512 01:43:21,028 --> 01:43:24,781 プリンスとは 出会う運命だったんだ 1513 01:43:32,080 --> 01:43:34,833 トミー・リピューマが言った 1514 01:43:34,917 --> 01:43:39,129 ワーナーブラザーズの A&R部門の副社長だ 1515 01:43:39,213 --> 01:43:42,841 “マイルスが ワーナーに移籍する” 1516 01:43:42,925 --> 01:43:45,719 “いい曲はあるか?”と 1517 01:43:51,516 --> 01:43:55,479 すぐに“TUTU”の ベースラインが浮かんだ 1518 01:44:05,864 --> 01:44:08,325 誰かに曲を書く時は― 1519 01:44:09,034 --> 01:44:11,745 その人がノッてるかを見る 1520 01:44:17,626 --> 01:44:20,462 スタジオでマイルスは― 1521 01:44:20,796 --> 01:44:23,715 急にピアノを弾き始めた 1522 01:44:25,717 --> 01:44:30,722 マイルスにとっては 初めての録音スタイルだ 1523 01:44:30,806 --> 01:44:35,894 ヘッドホンを使ったり トラックにかぶせたりね 1524 01:44:39,273 --> 01:44:43,986 楽しそうだった 何も恐れてない感じだ 1525 01:44:46,863 --> 01:44:49,950 本質は若い頃の彼のまま 1526 01:44:50,033 --> 01:44:53,745 ニューヨークに来た時の 気持ちを忘れてない 1527 01:44:57,833 --> 01:45:01,044 過去のレコードの話はしない 1528 01:45:01,128 --> 01:45:03,505 家にも置かない 1529 01:45:01,128 --> 01:45:03,505 息子 エリン・デイビス 1530 01:45:03,505 --> 01:45:04,131 息子 エリン・デイビス 1531 01:45:04,131 --> 01:45:06,008 息子 エリン・デイビス 1532 01:45:04,131 --> 01:45:06,008 1枚もだ 父が望まない 1533 01:45:06,008 --> 01:45:07,009 1枚もだ 父が望まない 1534 01:45:07,092 --> 01:45:09,553 “今”しか見てなかった 1535 01:45:19,730 --> 01:45:23,734 僕がバンドに入った時 彼はクールだった 1536 01:45:23,817 --> 01:45:26,236 やり手で 頂点にいる男 1537 01:45:26,320 --> 01:45:30,240 でも すぐに 顔色が悪くなっていった 1538 01:45:31,366 --> 01:45:35,871 「サタデー・ナイト・ ライブ」を見れば分かる 1539 01:45:35,954 --> 01:45:39,708 ただ歩き回り 音も弱々しい 1540 01:45:41,084 --> 01:45:43,045 苦しそうだった 1541 01:45:43,128 --> 01:45:45,339 音が出せない 1542 01:45:47,299 --> 01:45:49,718 足を引きずって歩く 1543 01:45:49,843 --> 01:45:52,346 それでもマイルスだった 1544 01:45:57,059 --> 01:46:00,937 今夜 M(マイルス)・デイビスと Q(クインシー)・ジョーンズが― 1545 01:46:01,021 --> 01:46:03,690 この舞台で初共演します 1546 01:46:04,608 --> 01:46:07,235 15年間越しの夢だった 1547 01:46:07,611 --> 01:46:08,070 マイルスに 何度も持ちかけたんだ 1548 01:46:08,070 --> 01:46:11,740 マイルスに 何度も持ちかけたんだ 1549 01:46:08,070 --> 01:46:11,740 プロデューサー/作曲家 クインシー・ジョーンズ 1550 01:46:11,740 --> 01:46:11,823 プロデューサー/作曲家 クインシー・ジョーンズ 1551 01:46:11,823 --> 01:46:12,824 プロデューサー/作曲家 クインシー・ジョーンズ 1552 01:46:11,823 --> 01:46:12,824 ようやく承諾した 1553 01:46:12,824 --> 01:46:14,201 ようやく承諾した 1554 01:46:15,243 --> 01:46:16,828 もう吹かなくてもいい 1555 01:46:16,828 --> 01:46:17,704 もう吹かなくてもいい 1556 01:46:16,828 --> 01:46:17,704 1991年 モントルー・ ジャズ・フェスティバル 1557 01:46:17,704 --> 01:46:17,788 1991年 モントルー・ ジャズ・フェスティバル 1558 01:46:17,788 --> 01:46:20,624 1991年 モントルー・ ジャズ・フェスティバル 1559 01:46:17,788 --> 01:46:20,624 50年間も 新しい道を切り開いてきた 1560 01:46:20,624 --> 01:46:22,667 50年間も 新しい道を切り開いてきた 1561 01:46:22,918 --> 01:46:28,090 65歳のマイルスが 25歳の自分に挑戦する 1562 01:46:28,173 --> 01:46:29,591 すごいことだ 1563 01:46:30,175 --> 01:46:33,970 私の愛であり兄弟 憧れのミュージシャン 1564 01:46:34,054 --> 01:46:35,514 M・デイビス 1565 01:46:37,099 --> 01:46:38,809 愛していたよ 1566 01:46:39,601 --> 01:46:42,896 思い出すと胸が温かくなる 1567 01:46:47,818 --> 01:46:48,860 “ザ・パン・パイパー”は― 1568 01:46:48,860 --> 01:46:50,237 “ザ・パン・パイパー”は― 1569 01:46:48,860 --> 01:46:50,237 トランペット ウォレス・ルーニー 1570 01:46:50,237 --> 01:46:50,612 トランペット ウォレス・ルーニー 1571 01:46:50,612 --> 01:46:53,657 トランペット ウォレス・ルーニー 1572 01:46:50,612 --> 01:46:53,657 苦しい曲だと知っていた 1573 01:46:53,657 --> 01:46:54,366 苦しい曲だと知っていた 1574 01:46:54,991 --> 01:46:58,578 マイルスに吹けるか 疑わしかった 1575 01:47:04,584 --> 01:47:06,378 本人は言わない 1576 01:47:11,758 --> 01:47:16,012 だから曲が始まって 僕が割って入った 1577 01:47:29,985 --> 01:47:34,573 “あの曲を吹いたら 死んじまう”と話してた 1578 01:47:36,491 --> 01:47:41,997 テレビで見て思った “具合が悪いんだ”と 1579 01:47:53,550 --> 01:47:54,885 彼は言ってた 1580 01:47:54,968 --> 01:47:58,054 “神が罰を与えても それは…” 1581 01:48:00,056 --> 01:48:01,308 悲しいわ 1582 01:48:02,309 --> 01:48:04,644 “無意味な罰はない” 1583 01:48:06,146 --> 01:48:10,901 “必要なことを与えられた 残された時間がない” 1584 01:48:18,658 --> 01:48:19,951 M・デイビス 1585 01:48:20,827 --> 01:48:22,287 Q・ジョーンズ 1586 01:48:28,752 --> 01:48:33,006 1991年9月に マイルスは入院した 1587 01:48:34,466 --> 01:48:36,968 彼と音楽を聴きながら― 1588 01:48:37,177 --> 01:48:41,765 ふと見ると 彼の表情が固まってた 1589 01:48:41,973 --> 01:48:45,310 病室に医師が入ってきて 1590 01:48:45,393 --> 01:48:48,939 ベッドまで来て… ほんの一瞬だった 1591 01:48:49,022 --> 01:48:51,566 私はひざ枕をしてた 1592 01:48:52,025 --> 01:48:56,780 心臓マッサージが始まり 別の医師も現れて― 1593 01:48:56,863 --> 01:48:59,241 大勢のスタッフが来た 1594 01:48:59,324 --> 01:49:02,953 私は座ったままで 彼は意識がなく… 1595 01:49:03,036 --> 01:49:06,373 でも息はあったから 生きてたけど 1596 01:49:06,456 --> 01:49:08,041 怖かったわ 1597 01:49:08,124 --> 01:49:12,212 医師がマッサージや 注射をしながら― 1598 01:49:12,295 --> 01:49:17,133 そのまま廊下を通って エレベーターに運ばれた 1599 01:49:17,217 --> 01:49:22,222 でもベッドの上にいる私に 誰も気付かないの 1600 01:49:22,305 --> 01:49:27,394 スタッフに囲まれたまま エレベーターに入り… 1601 01:49:27,936 --> 01:49:30,981 そこで“脳卒中です”と 1602 01:49:46,830 --> 01:49:49,291 元妻のデボラが電話で― 1603 01:49:49,374 --> 01:49:52,043 “何かにつかまってね”と 1604 01:49:52,127 --> 01:49:54,129 “どうした?” 1605 01:49:55,714 --> 01:49:58,008 “マイルスが亡くなった” 1606 01:50:06,725 --> 01:50:09,102 あの時は… 1607 01:50:13,023 --> 01:50:14,316 頭を― 1608 01:50:16,484 --> 01:50:18,236 殴られた気がした 1609 01:50:30,165 --> 01:50:34,461 マイルスは誰よりも 個性的な人だった 1610 01:50:39,924 --> 01:50:43,303 人とは違ったことをして 1611 01:50:43,386 --> 01:50:46,348 人とは違うように物を見た 1612 01:50:49,142 --> 01:50:53,229 自分に正直であることが 彼の哲学だった 1613 01:51:00,737 --> 01:51:04,157 あんなに美しい音楽を 作った人よ 1614 01:51:04,240 --> 01:51:05,950 人生は真逆でもね 1615 01:51:07,285 --> 01:51:09,245 つらい時もあれば 1616 01:51:09,329 --> 01:51:11,873 完璧な時もあった 1617 01:51:16,127 --> 01:51:19,589 後悔はないし 忘れもしない 1618 01:51:20,757 --> 01:51:22,300 でも愛してる 1619 01:51:28,723 --> 01:51:32,519 会いたいよ よく彼の夢を見るんだ 1620 01:51:34,729 --> 01:51:35,730 彼は… 1621 01:51:37,399 --> 01:51:38,733 偉大だった 1622 01:51:49,577 --> 01:51:51,121 愛してるさ 1623 01:51:52,956 --> 01:51:54,374 兄弟同然だ 1624 01:51:55,125 --> 01:51:58,795 バカをやっても 受け入れる兄弟だ 1625 01:52:05,969 --> 01:52:07,262 本物だった 1626 01:52:11,766 --> 01:52:12,767 本物だ 1627 01:52:15,937 --> 01:52:19,149 彼のような人間は そうはいない 1628 01:52:20,817 --> 01:52:23,194 カメラを止めてくれ 1629 01:55:00,977 --> 01:55:05,189 日本語字幕 大前 留奈