1 00:00:02,918 --> 00:00:06,168 1944年10月 イタリア北部 2 00:00:08,043 --> 00:00:11,877 戦車駆逐小隊所属の カナダ軍の一等兵が 3 00:00:11,877 --> 00:00:14,209 独軍のパンター戦車に挑む 4 00:00:14,543 --> 00:00:16,418 武器はPIATピアット1挺だ 5 00:00:18,126 --> 00:00:22,460 有効射程は 18メートル以下となる 6 00:00:22,585 --> 00:00:24,835 まさに恐怖の試練 7 00:00:25,835 --> 00:00:29,710 仕留めるには 戦車の真ん前に立つしかない 8 00:00:32,334 --> 00:00:36,002 一等兵はギリギリまで 戦車の接近を待ち― 9 00:00:38,543 --> 00:00:39,877 砲弾を放つ 10 00:00:41,877 --> 00:00:44,585 1944年6月6日 11 00:00:44,585 --> 00:00:48,002 連合軍が ノルマンディーに上陸 12 00:00:49,002 --> 00:00:51,043 西からの進攻が始まる 13 00:00:53,710 --> 00:00:59,126 対するナチスも 命懸けの防戦を試みる 14 00:01:04,585 --> 00:01:06,209 Dデイは死闘だった 15 00:01:08,376 --> 00:01:10,793 負けられない戦いが続く 16 00:01:20,668 --> 00:01:23,668 1944年10月21日 17 00:01:24,334 --> 00:01:28,168 {\an8}Dデイから137日 18 00:01:29,793 --> 00:01:32,418 カナダ軍のシーフォース・ ハイランダー連隊が 19 00:01:32,418 --> 00:01:34,585 水の中を進んでいる 20 00:01:40,084 --> 00:01:44,084 連隊が川に入った時 辺りは真っ暗だった 21 00:01:45,002 --> 00:01:46,960 {\an8}激しい雨のせいで― 22 00:01:46,960 --> 00:01:51,084 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 23 00:01:51,084 --> 00:01:51,835 {\an8}サビオ川の水位も 急激に上昇し始めていた 24 00:01:53,626 --> 00:01:58,043 小隊長のマッケイ中尉が 注意深く対岸を見渡す 25 00:02:00,418 --> 00:02:04,710 苦戦しているのは 泥と寒流のせいだけではない 26 00:02:06,585 --> 00:02:10,251 敵の攻撃を避けながら 探しているのだ 27 00:02:10,251 --> 00:02:15,002 “パトリシア王女 カナダ軽歩兵連隊”の兵士を 28 00:02:18,084 --> 00:02:19,835 先に渡っていた隊だが 29 00:02:20,293 --> 00:02:26,251 激しい砲撃を受けており 安否すら定かではなかった 30 00:02:29,501 --> 00:02:33,002 カナダ軍が イタリアに上陸したのは 31 00:02:33,293 --> 00:02:36,002 Dデイのはるか前だった 32 00:02:36,835 --> 00:02:40,918 攻め込みやすさから シチリア島が選ばれた 33 00:02:40,918 --> 00:02:42,126 チャーチルは元々 34 00:02:42,334 --> 00:02:46,501 ノルマンディー上陸には 反対していた 35 00:02:46,501 --> 00:02:48,835 時期尚早との考えだった 36 00:02:48,835 --> 00:02:52,043 {\an8}でも東部戦線の 敵を後退させろとの― 37 00:02:52,043 --> 00:02:53,460 アレクサンドラ・リチー コレギウム・ シビタス大学 教授 38 00:02:53,460 --> 00:02:54,793 {\an8}ソ連からの圧力も 大きかった 39 00:02:57,168 --> 00:02:59,752 だが進展は遅かった 40 00:03:00,752 --> 00:03:04,418 {\an8}ドイツ軍が 自分たちの防衛線を 41 00:03:04,418 --> 00:03:05,626 ペーター・リーブ 軍事史学者 42 00:03:05,626 --> 00:03:06,334 {\an8}イタリアに築いたせいだ 43 00:03:06,793 --> 00:03:11,168 バンカーや有刺鉄線の柵 地雷原などを作った 44 00:03:13,002 --> 00:03:16,334 南から北へ進攻したい 連合軍にとって 45 00:03:16,334 --> 00:03:19,877 それが大きな妨げと なっていた 46 00:03:19,877 --> 00:03:23,334 そのため 激しい戦いは長引いた 47 00:03:23,334 --> 00:03:24,168 イタリア 48 00:03:24,168 --> 00:03:26,668 上陸から 15ヵ月経ってもなお― 49 00:03:26,668 --> 00:03:30,334 イタリア北部は 独軍の支配下にあった 50 00:03:30,334 --> 00:03:32,752 工業が盛んな地域も含まれた 51 00:03:33,960 --> 00:03:36,002 そして1944年10月 52 00:03:36,293 --> 00:03:39,126 英国の第8軍と共に 戦っていたカナダ兵が 53 00:03:39,126 --> 00:03:41,668 ようやく アペニン山脈を抜けた 54 00:03:42,334 --> 00:03:45,501 川が多く大変な道のりだった 55 00:03:46,543 --> 00:03:49,501 次はアドリア海の西岸から 北上する {\an8}リミニ チェゼーナ ボローニャ 56 00:03:49,793 --> 00:03:55,752 その先は平地続きで ボローニャは目前に見えた 57 00:03:57,752 --> 00:04:03,460 だが実際は 平原を流れる 幾本もの川が行く手を阻む 58 00:04:04,168 --> 00:04:07,585 しかしカナダ兵による 山脈の突破は 59 00:04:07,585 --> 00:04:13,376 ドイツ軍にとって 危機であることに違いはない 60 00:04:13,793 --> 00:04:18,293 カナダ兵の進攻を止めるべく 独軍は手を打った 61 00:04:19,334 --> 00:04:21,418 自然のとりでを生かすべく 62 00:04:21,418 --> 00:04:25,043 サビオ川の西岸まで 後退したのだ 63 00:04:34,877 --> 00:04:37,418 ドイツ軍の 第9装甲擲弾兵てきだんへい連隊 64 00:04:37,418 --> 00:04:40,251 彼らが守るのは チェゼーナ市の北― 65 00:04:40,251 --> 00:04:43,543 サビオ川沿い 約8キロの地域だ 66 00:04:44,418 --> 00:04:47,793 第2大隊長の エッケハルト・マウラーは 67 00:04:47,793 --> 00:04:51,084 士官訓練の一環で この地に配属された 68 00:04:51,084 --> 00:04:55,960 マウラー大尉は当時 まだ25歳という若さで 69 00:04:55,960 --> 00:04:59,002 今回の任務も 数日前に就いたばかり 70 00:04:59,002 --> 00:05:02,002 彼は参謀将校の道を 歩んでおり 71 00:05:02,002 --> 00:05:06,793 前線でのこの任務は 輪番制で回ってきたものだ 72 00:05:08,126 --> 00:05:11,543 マウラーは 川を渡ったカナダ兵の 73 00:05:11,793 --> 00:05:15,002 現在位置を把握できずにいる 74 00:05:17,752 --> 00:05:20,002 マウラーは 戦闘団の重装甲車を 75 00:05:20,002 --> 00:05:24,126 ピエベセスティーナ村から 川へ向かわせた 76 00:05:24,126 --> 00:05:26,543 敵を迎え撃つためだ 77 00:05:38,251 --> 00:05:41,209 暗闇の中 銃撃を受けながらも 78 00:05:41,209 --> 00:05:46,126 パトリシア隊との連携に マッケイ少尉は成功した 79 00:05:46,501 --> 00:05:49,501 シーフォース隊にとっては 大朗報だ 80 00:05:49,501 --> 00:05:51,877 対岸への足掛かりができた上 81 00:05:51,877 --> 00:05:56,543 ドイツ軍と戦う上で 味方がいるのは心強い 82 00:05:59,334 --> 00:06:02,460 パトリシア隊が 敵の位置を指し示す 83 00:06:04,626 --> 00:06:08,877 6つの機関銃巣の位置も 明らかになった 84 00:06:09,334 --> 00:06:11,668 ドレイク 銃を渡せ 85 00:06:13,002 --> 00:06:18,209 さらにはマッケイたちに 武器の交換まで申し出る 86 00:06:18,960 --> 00:06:23,043 ドイツ軍との交戦は シーフォース隊の役目だ 87 00:06:23,043 --> 00:06:25,460 だから きれいな武器を譲った 88 00:06:31,752 --> 00:06:32,585 行くぞ 89 00:06:32,585 --> 00:06:34,002 D中隊とB中隊は 90 00:06:34,002 --> 00:06:37,835 川岸から半キロ以内の 敵の掃討を任された 91 00:06:42,668 --> 00:06:46,334 周辺農家の建物は 既にドイツ兵に占拠され 92 00:06:46,334 --> 00:06:50,293 どこも複数の機関銃陣地に 守られている 93 00:06:53,209 --> 00:06:57,168 建物に接近して初めて その存在に気づく 94 00:07:07,793 --> 00:07:10,418 しかし銃器が放つ光で― 95 00:07:14,418 --> 00:07:17,126 機関銃巣の姿が露呈した 96 00:07:29,126 --> 00:07:32,168 おかげで敵を出し抜けた 97 00:07:48,918 --> 00:07:54,752 B中隊とD中隊が順調に 川の西岸の制圧を進める中 98 00:07:55,585 --> 00:07:59,585 A中隊とD中隊も 川を渡り切ることに成功 {\an8}マルトラーノ サビオ川 99 00:07:59,585 --> 00:08:02,877 態勢を整え 西へと進み続けた 100 00:08:03,376 --> 00:08:07,585 川と平行して南北に走る チェゼーナに続く道の 101 00:08:07,585 --> 00:08:09,710 分断が彼らの任務だ 102 00:08:09,710 --> 00:08:13,460 ドイツ軍にとっては 重要な輸送道路で 103 00:08:13,460 --> 00:08:16,043 厚い防御が予想された 104 00:08:19,585 --> 00:08:23,460 戦車駆逐が任務の小隊は C中隊の所属だ 105 00:08:24,877 --> 00:08:26,960 {\an8}カナダ軍の 戦車駆逐戦略は 106 00:08:26,960 --> 00:08:30,585 アレクサンドラ・リチー コレギウム・ シビタス大学 教授 107 00:08:35,710 --> 00:08:40,793 兵士は戦車を前にすると 恐怖に負け 我を失った 108 00:08:41,168 --> 00:08:44,585 だから 戦車を撃退するためには 109 00:08:44,585 --> 00:08:47,376 有効な戦略が必要になった 110 00:08:48,460 --> 00:08:52,710 戦車駆逐小隊が狙うのは 戦車や自走砲など 111 00:08:52,710 --> 00:08:55,002 装甲車両全般である 112 00:08:55,960 --> 00:08:58,084 武器は携帯可能な物のみ 113 00:08:58,084 --> 00:09:01,043 地雷や トンプソン短機関銃― 114 00:09:01,376 --> 00:09:06,501 徹甲弾を込めた 歩兵用対戦車投射機PIATなどだ 115 00:09:07,501 --> 00:09:10,626 戦略の第一段階は 敵の足止めだ 116 00:09:10,918 --> 00:09:15,543 装甲車の進行方向上に 事前に地雷を埋める 117 00:09:15,835 --> 00:09:19,793 通過する車両の 足を止めるためだ 118 00:09:19,793 --> 00:09:24,043 そこにPIATチームが現れ 車体に砲弾を放つ 119 00:09:24,043 --> 00:09:27,251 有効射程は18メートルほどだ 120 00:09:27,251 --> 00:09:30,668 短機関銃隊は PIATチームを援護しつつ 121 00:09:30,668 --> 00:09:33,501 装甲車に残る兵士を排除する 122 00:09:35,960 --> 00:09:38,002 ドイツ軍に橋を破壊され 123 00:09:38,002 --> 00:09:42,710 カナダ軍は自軍の装甲車を 戦いに投入できない 124 00:09:50,835 --> 00:09:54,418 戦車駆逐小隊だけが 頼みの綱なのだ 125 00:09:58,710 --> 00:10:01,002 C中隊が目指しているのは 126 00:10:01,002 --> 00:10:05,002 村の教区教会近くにある 交差路だ 127 00:10:09,501 --> 00:10:14,585 装甲車接近の報告があり 戦車駆逐小隊に出番が訪れる 128 00:10:14,585 --> 00:10:18,251 トンプソン軍曹が 隊員に指示を出す 129 00:10:21,585 --> 00:10:25,710 道の両脇にある塹壕ざんごうに 隊員を待機させ 130 00:10:25,877 --> 00:10:28,084 自身は道の中央へ急ぐ 131 00:10:28,251 --> 00:10:32,002 戦車が来る前に 地雷を埋める必要がある 132 00:10:47,918 --> 00:10:52,793 戦略を成功させるには 迫り来る戦車の隊列を 133 00:10:52,793 --> 00:10:56,334 止めるか 減速させねばならない 134 00:11:05,376 --> 00:11:10,043 手始めに 対戦車手りゅう弾を道に埋め 135 00:11:10,043 --> 00:11:12,460 交差路への進路を断つ 136 00:11:26,251 --> 00:11:29,835 {\an8}“NO・75 MK2 手りゅう弾 12個入り” 137 00:11:29,835 --> 00:11:32,293 使用したのは対戦車用の ホーキンス手りゅう弾だ 138 00:11:33,585 --> 00:11:38,376 ダンケルクでの大撤退を受け 英軍が開発した物だ 139 00:11:40,376 --> 00:11:44,126 重さ1キロほどの この手りゅう弾は 140 00:11:44,126 --> 00:11:48,002 形状が長方形で スキットルに似ていた 141 00:11:48,002 --> 00:11:50,126 {\an8}埋めれば地雷になり 142 00:11:50,334 --> 00:11:53,543 {\an8}対象に付ければ 爆破薬になった 143 00:11:53,543 --> 00:11:55,877 {\an8}当然 投げても使えた 144 00:11:57,752 --> 00:12:02,543 複数をつなぎ 爆発させれば 威力は大きくなる 145 00:12:04,334 --> 00:12:08,752 1つでは成功するか怪しいが 複数でなら 146 00:12:08,752 --> 00:12:13,501 どんな種類の装甲車でも ダメージを与えられる 147 00:12:28,668 --> 00:12:31,251 トンプソンは 罠わなを仕掛け終えた 148 00:12:32,209 --> 00:12:35,126 装甲車が近づく音を聞き 149 00:12:35,126 --> 00:12:38,710 手りゅう弾を 落ち葉と泥で隠す 150 00:12:47,710 --> 00:12:49,084 作業は完ぺきだ 151 00:12:49,293 --> 00:12:54,752 トンプソンは隊員の元に戻り 自分も塹壕に身を隠した 152 00:13:01,209 --> 00:13:04,626 ドイツ軍の車両が 分岐路に接近する 153 00:13:06,710 --> 00:13:10,293 タイヤが手りゅう弾の 合間をすり抜け― 154 00:13:10,626 --> 00:13:13,334 爆破は失敗に終わった 155 00:13:14,543 --> 00:13:17,710 トンプソン軍曹は ぼうぜんとしたはず 156 00:13:17,835 --> 00:13:20,835 今さっき自分が作った 地雷原を 157 00:13:20,835 --> 00:13:24,835 敵は1つも爆発させずに 通過してしまった 158 00:13:27,418 --> 00:13:32,293 トンプソンは隊員と 走る車を機関銃で狙い始める 159 00:13:33,710 --> 00:13:36,960 そこに仲間が PIATを手に登場する 160 00:13:38,626 --> 00:13:43,251 絶好のタイミングで 至近距離から砲弾を放った 161 00:13:44,960 --> 00:13:49,293 {\an8}PIATが放つ 約1・1キロの砲弾には 162 00:13:49,293 --> 00:13:53,043 {\an8}RDXとTNTの 2種類の爆薬が含まれた 163 00:13:55,793 --> 00:14:00,960 {\an8}その装甲貫徹力は最大で 約100ミリに上る 164 00:14:04,501 --> 00:14:08,918 砲弾を受け 車両が止まり 運転手は死亡した 165 00:14:13,084 --> 00:14:18,251 脱出したドイツ兵が 後続車両への警告を試みるが 166 00:14:19,501 --> 00:14:22,501 トンプソンらが それを仕留める 167 00:14:24,460 --> 00:14:25,710 戻れ! 168 00:14:25,710 --> 00:14:27,710 そして態勢を立て直す 169 00:14:31,752 --> 00:14:35,793 先頭の乗用車と さほど距離を空けずに 170 00:14:35,793 --> 00:14:39,793 ドイツ軍の自走砲が 交差路に迫ってきた 171 00:14:42,668 --> 00:14:46,835 外見的には 戦車とよく似た自走砲だが 172 00:14:46,835 --> 00:14:51,418 旋回式の砲塔ではなく 固定の砲郭を備えている 173 00:14:51,418 --> 00:14:55,543 ただ どちらの車両も 視界不良には弱かった 174 00:14:55,543 --> 00:15:00,585 雨と暗闇のせいで この時の視界は最悪だった 175 00:15:00,918 --> 00:15:04,626 ペーター・リーブ 軍事史学者 176 00:15:04,626 --> 00:15:05,209 {\an8}自走砲の操縦士は 前方で起きていた状況を 177 00:15:05,376 --> 00:15:10,002 {\an8}把握できていなかったと 考えるのが自然だ 178 00:15:26,710 --> 00:15:31,585 一人のカナダ軍一等兵が PIATで自走砲を狙う 179 00:15:34,334 --> 00:15:36,126 だが砲弾は的を外れた 180 00:15:38,334 --> 00:15:42,877 ガラガラと音を立てながら 自走砲は突き進む 181 00:15:51,084 --> 00:15:54,084 独軍の自走砲が 接近する様子を― 182 00:15:54,835 --> 00:15:59,334 戦車駆逐小隊は かたずをのんで見守っている 183 00:15:59,334 --> 00:16:01,376 地雷は爆発するだろうか 184 00:16:04,710 --> 00:16:08,293 キャタピラが 地雷原の上を通過する 185 00:16:10,209 --> 00:16:12,710 今回は爆発成功だ 186 00:16:15,002 --> 00:16:17,793 恐らくトンプソン軍曹は この時― 187 00:16:17,793 --> 00:16:20,835 最初の不発に 感謝したことだろう 188 00:16:21,084 --> 00:16:24,293 {\an8}おかげで より大きなターゲットを 189 00:16:24,293 --> 00:16:26,334 {\an8}彼らは仕留められた 190 00:16:26,626 --> 00:16:31,334 キャタピラが損傷し 自走砲は動きを封じられた 191 00:16:31,334 --> 00:16:34,835 車両が動けないのは 理想的な状況だ 192 00:16:34,835 --> 00:16:38,835 動かない標的なら PIATで狙いやすく 193 00:16:38,835 --> 00:16:40,752 とどめを刺しやすい 194 00:16:43,376 --> 00:16:47,543 任務を全うすべく 戦車駆逐小隊は塹壕を出る 195 00:16:49,877 --> 00:16:52,543 PIATチームが 並んで砲を構える 196 00:16:58,084 --> 00:17:02,752 徹甲弾が命中した自走砲は もはや脅威ではない 197 00:17:05,835 --> 00:17:09,752 残りの隊員が 乗員にとどめを刺しに行く 198 00:17:14,334 --> 00:17:16,376 ハッチに 手りゅう弾を投げ込む 199 00:17:16,376 --> 00:17:17,835 投入する! 200 00:17:35,126 --> 00:17:39,793 操縦不能になった自走砲は 道を塞いでくれる 201 00:17:51,752 --> 00:17:55,710 この装甲部隊を ここまで送り込んだのは 202 00:17:55,710 --> 00:18:00,334 第9装甲擲弾兵連隊 第2大隊長のマウラー大尉だ 203 00:18:01,793 --> 00:18:07,418 第9装甲擲弾兵連隊は 旧第9歩兵連隊の後継 204 00:18:07,835 --> 00:18:12,960 {\an8}プロイセン軍の伝統を 色濃く受け継ぐ連隊だ 205 00:18:13,043 --> 00:18:15,626 上流階級出身の将校が 206 00:18:15,626 --> 00:18:20,168 数多く集まっていることでも 知られている 207 00:18:23,251 --> 00:18:27,168 彼らは1943年の夏に イタリアに上陸し 208 00:18:27,376 --> 00:18:32,501 44年9月に防衛線を張るため 東岸へ移動してきた 209 00:18:33,626 --> 00:18:38,543 カナダ兵の進攻を止めるには 情報が足りなかった 210 00:18:38,543 --> 00:18:41,251 この時点で独軍は劣勢だった 211 00:18:41,251 --> 00:18:44,460 そして想像よりはるか奥まで 212 00:18:44,460 --> 00:18:48,960 カナダ兵が進出してきている 事実に驚愕きょうがくした 213 00:18:49,585 --> 00:18:52,084 また 敵の集中砲撃により 214 00:18:52,084 --> 00:18:56,126 通信回線が破壊され 事態はさらに悪化した 215 00:18:56,126 --> 00:19:00,376 独軍は司令官同士で 連絡を取るすべを失い 216 00:19:00,501 --> 00:19:03,543 近くの隊の状況すら 分からない 217 00:19:03,543 --> 00:19:08,043 指揮系統の上層部に 連絡するのも不可能だ 218 00:19:10,209 --> 00:19:13,877 しかしマウラーには 切り札があった 219 00:19:13,877 --> 00:19:16,460 その1つがパンター戦車だ 220 00:19:20,418 --> 00:19:23,543 正確には “5号戦車パンター”といい 221 00:19:23,543 --> 00:19:27,543 ヒトラー軍が誇る 最強戦車の1つである 222 00:19:28,376 --> 00:19:32,793 ソ連軍のT-34戦車の 脅威に対抗すべく 223 00:19:32,793 --> 00:19:37,002 1941年から急ピッチで 開発された中戦車だ 224 00:19:37,168 --> 00:19:42,293 5号戦車パンター 225 00:19:42,293 --> 00:19:46,334 {\an8}威力も抜群の 75ミリ高速度戦車砲と 226 00:19:46,334 --> 00:19:49,002 {\an8}MG34機関銃を 2挺 搭載 227 00:19:49,002 --> 00:19:52,585 {\an8}すさまじい勢いで 弾を発した 228 00:19:53,126 --> 00:19:57,334 {\an8}約45トンと重かったが 速度は十分で 229 00:19:57,543 --> 00:20:02,918 {\an8}700馬力のエンジンで 時速55キロまで出せた 230 00:20:14,002 --> 00:20:16,918 ジワジワと迫るパンター戦車 231 00:20:19,918 --> 00:20:23,752 戦車駆逐小隊内の 別のチームが先を急ぐ 232 00:20:27,835 --> 00:20:31,668 その中に アーネスト・ スミス一等兵がいる 233 00:20:32,334 --> 00:20:35,334 勇敢で リーダーの資質を備えた― 234 00:20:35,334 --> 00:20:37,293 とても面白い男だ 235 00:20:37,418 --> 00:20:42,585 有事の際の行動力がすごく 皆が彼についていった 236 00:20:43,752 --> 00:20:48,418 闘争本能が評価され スミスは何度も昇格したが 237 00:20:49,084 --> 00:20:51,002 毎度 長続きしなかった 238 00:20:51,002 --> 00:20:55,918 やや反抗的な面もあり 問題児と見なされた 239 00:20:56,126 --> 00:21:01,209 9回 伍長に昇格し 9回 一等兵に戻されている 240 00:21:01,543 --> 00:21:03,752 階級的には低迷していた 241 00:21:04,918 --> 00:21:07,626 だが すばらしい兵士だった 242 00:21:07,877 --> 00:21:13,043 他の隊員が独軍の自走砲に 気を取られている中― 243 00:21:15,251 --> 00:21:18,752 スミスは視線の先に パンターを捉えた 244 00:21:28,002 --> 00:21:31,793 そして PIATチームを 塹壕へと誘導する 245 00:21:36,084 --> 00:21:37,918 迫るパンターを見て 246 00:21:37,918 --> 00:21:41,126 PIAT1挺では 不十分だと判断した 247 00:21:42,501 --> 00:21:43,960 射手を一人残し 248 00:21:43,960 --> 00:21:47,418 スミスらは追加のPIATを 確保しに走った 249 00:21:49,626 --> 00:21:53,293 射手を一人で残すのは 危険な行為だ 250 00:21:54,835 --> 00:21:59,543 PIATを構えていると 視界の半分が奪われる 251 00:22:02,877 --> 00:22:06,251 {\an8}忍び寄る敵の存在に 気づけるよう― 252 00:22:06,251 --> 00:22:08,501 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 253 00:22:08,501 --> 00:22:08,877 {\an8}通常は 2人1組で行動した 254 00:22:09,668 --> 00:22:14,043 南のチェゼーナ市への ドイツの援軍を断つため 255 00:22:14,043 --> 00:22:16,793 スミスの中隊は 幹線道路へ向かう 256 00:22:18,793 --> 00:22:23,126 ところが独軍の 戦車部隊の一部と遭遇 257 00:22:23,626 --> 00:22:26,960 C中隊は 協調的に行動するため 258 00:22:26,960 --> 00:22:29,835 田舎の教区教会に 本部を設置した 259 00:22:31,793 --> 00:22:35,251 スミスとテナントは 準備を急ぐ 260 00:22:36,084 --> 00:22:39,126 本部にもう1台 PIATを配置し 261 00:22:40,002 --> 00:22:44,293 二人は武器を手に 自分たちの配置に戻る 262 00:22:51,209 --> 00:22:52,877 道路に近づくと― 263 00:22:57,293 --> 00:23:00,002 周囲に銃弾を撃ち込まれる 264 00:23:14,418 --> 00:23:16,251 カナダ人のスミス一等兵は 265 00:23:16,251 --> 00:23:19,877 塹壕に入り 自分の位置につく 266 00:23:20,501 --> 00:23:24,543 そこから戦車が 近づいてくるのが見える 267 00:23:25,918 --> 00:23:28,251 戦車は機関銃で道路を掃射 268 00:23:30,960 --> 00:23:33,084 スミスは心配事が2つある 269 00:23:33,084 --> 00:23:36,209 {\an8}友人の ジェームズ・テナントと 270 00:23:36,209 --> 00:23:37,293 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 271 00:23:37,293 --> 00:23:39,043 {\an8}残してきた PIATチームだ 272 00:23:42,084 --> 00:23:47,334 先ほど自走砲を止めたような 地雷原があれば助かるが 273 00:23:47,835 --> 00:23:49,334 もう手遅れだ 274 00:23:49,752 --> 00:23:53,710 テナントはPIATの 準備をする 275 00:23:55,126 --> 00:23:59,126 テナント一等兵は スミスの親しい友人だ 276 00:23:59,126 --> 00:24:02,543 彼らはかなり 親密だったようだ 277 00:24:05,084 --> 00:24:07,668 テナントが銃弾を受ける 278 00:24:12,585 --> 00:24:15,168 生きてはいるが重傷だ 279 00:24:16,168 --> 00:24:18,793 もうPIATは使えない 280 00:24:21,084 --> 00:24:23,668 スミスは選択肢を考える 281 00:24:24,543 --> 00:24:27,334 テナントと 塹壕に隠れて祈るか 282 00:24:28,043 --> 00:24:32,752 独軍の砲火にさらされながら 救護所に行くか 283 00:24:33,543 --> 00:24:36,251 あるいは自力で戦うか 284 00:24:36,877 --> 00:24:41,376 彼は一瞬の間に 独軍との交戦を決意した 285 00:24:44,418 --> 00:24:48,418 スミスはPIATを取り 塹壕の端で構える 286 00:24:53,877 --> 00:24:56,460 この瞬間 スミスはたった一人で 287 00:24:56,752 --> 00:25:01,334 第2次世界大戦で最も強力な 戦車と戦っている 288 00:25:03,251 --> 00:25:06,877 狙いを外せば 助かる見込みはない 289 00:25:09,002 --> 00:25:13,460 独軍の戦車を待ちながら 武器を補充する 290 00:25:15,960 --> 00:25:17,793 スミスに援護はない 291 00:25:17,793 --> 00:25:20,960 PIATは 徹甲弾の性能を持つが 292 00:25:20,960 --> 00:25:23,835 兵士からの評判は様々だ 293 00:25:25,877 --> 00:25:29,043 カナダ兵がシチリアで 初めて使ったが 294 00:25:29,043 --> 00:25:31,460 完ぺきではなかった 295 00:25:32,126 --> 00:25:34,668 {\an8}命中しても 爆発しない時もある 296 00:25:34,668 --> 00:25:36,168 アレクサンドラ・リチー コレギウム・ シビタス大学 教授 297 00:25:36,168 --> 00:25:36,793 {\an8}これは非常に危険だ 298 00:25:37,460 --> 00:25:42,626 つまりPIATの性能は 確実性に欠けていた 299 00:25:43,418 --> 00:25:48,002 そして信頼性が向上しても 変わらないのは― 300 00:25:48,793 --> 00:25:49,877 射程距離だ 301 00:25:49,877 --> 00:25:52,543 最高射程距離は 約90メートルだ 302 00:25:53,626 --> 00:25:57,668 夜間に命中させるための 最適距離は― 303 00:25:57,668 --> 00:26:00,418 わずか約18メートル 304 00:26:02,835 --> 00:26:06,626 戦車の目の前に立たなければ 当たらない 305 00:26:06,626 --> 00:26:10,293 このような恐ろしい試練に 306 00:26:10,626 --> 00:26:13,877 カナダ兵たちは 勇敢に立ち向かう 307 00:26:14,793 --> 00:26:17,126 短い射程距離に対応するため 308 00:26:17,126 --> 00:26:20,668 戦車駆逐小隊は 照準器の改造もした 309 00:26:23,585 --> 00:26:28,585 戦車が約9メートルまで 近づくのを待ち― 310 00:26:30,043 --> 00:26:33,084 塹壕から道路へ飛び出す 311 00:26:41,793 --> 00:26:44,668 何とか狙いを定めると 312 00:26:45,126 --> 00:26:48,002 戦車への攻撃を開始する 313 00:26:50,960 --> 00:26:53,585 この地区で戦ううちに 314 00:26:54,543 --> 00:26:58,251 独軍はカナダの攻撃規模を 理解し始める 315 00:26:59,501 --> 00:27:04,043 マウラー大尉は 守備の強化をせざるを得ない 316 00:27:06,918 --> 00:27:08,460 北側ではカナダ軍が 317 00:27:08,460 --> 00:27:10,877 独軍の戦線を突破していた 318 00:27:10,877 --> 00:27:14,084 {\an8}大隊本部を 投入せざるを得ないほど 319 00:27:14,084 --> 00:27:15,668 ペーター・リーブ 軍事史学者 320 00:27:15,668 --> 00:27:17,585 {\an8}独軍は絶望的な状況だ 321 00:27:23,626 --> 00:27:25,626 マウラーは攻撃に気づく 322 00:27:33,376 --> 00:27:37,251 本部の部隊が 投入されるということは 323 00:27:37,501 --> 00:27:41,002 極めて 危機的状況ということだ 324 00:27:41,460 --> 00:27:45,626 そしてこれは防御側の 最後のとりでだ 325 00:27:47,168 --> 00:27:49,209 カナダ軍の攻撃により― 326 00:27:50,626 --> 00:27:53,251 マウラーは手りゅう弾で負傷 327 00:27:56,918 --> 00:27:59,002 戦線離脱を余儀なくされる 328 00:28:12,501 --> 00:28:15,835 教区教会の近くの 道路脇で― 329 00:28:17,501 --> 00:28:19,460 スミス一等兵が構える 330 00:28:22,793 --> 00:28:26,084 独軍の戦車に直撃弾を当てた 331 00:28:27,710 --> 00:28:30,668 巨大な獣は停止した 332 00:28:31,626 --> 00:28:34,835 大破した戦車が反転を試みる 333 00:28:34,835 --> 00:28:37,835 スミスは戦車の動きを止めた 334 00:28:37,835 --> 00:28:42,626 {\an8}問題は後ろに乗っていた 10人のドイツ兵が 335 00:28:43,002 --> 00:28:46,002 {\an8}スミスに 向かってくることだ 336 00:28:48,710 --> 00:28:53,960 至近距離で しかも一人では 彼の選択肢は少ない 337 00:28:58,418 --> 00:29:02,710 スミス一等兵が 使ったPIATは 338 00:29:02,710 --> 00:29:06,334 複数の敵兵の攻撃には 役に立たない 339 00:29:07,626 --> 00:29:10,501 彼は トンプソン短機関銃を取る 340 00:29:16,334 --> 00:29:18,626 スミスは大胆な行動に出る 341 00:29:20,543 --> 00:29:24,376 {\an8}彼は退却することなく 道を進んでいき 342 00:29:24,376 --> 00:29:26,626 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 343 00:29:26,626 --> 00:29:27,418 {\an8}短機関銃で独軍の 擲弾兵と交戦した 344 00:29:29,293 --> 00:29:32,334 悪名高い トンプソン短機関銃は― 345 00:29:33,168 --> 00:29:39,626 兵士が一人で使えるように 設計された自動小銃である 346 00:29:40,334 --> 00:29:47,334 トンプソンM1A1 347 00:29:47,334 --> 00:29:48,376 {\an8}コンパクトになっている 348 00:29:49,084 --> 00:29:52,002 {\an8}装弾数は30発で 発射速度は 349 00:29:52,002 --> 00:29:56,501 {\an8}1分間に700発という 驚異的な速度を誇る 350 00:29:58,002 --> 00:30:01,376 このアメリカの兵器は 1940年に 351 00:30:01,376 --> 00:30:05,418 英軍に1台あたり 約225ドルで販売された 352 00:30:06,501 --> 00:30:08,835 ウィンストン・チャーチルは こう述べている 353 00:30:08,835 --> 00:30:11,877 “トミーガンは 戦争用に考案された―” 354 00:30:11,877 --> 00:30:15,002 “最も破壊的な武器だ”と 355 00:30:17,752 --> 00:30:19,918 効率的なコストダウンで 356 00:30:19,918 --> 00:30:23,084 トミーガンは 欧州の同盟国に普及する 357 00:30:27,376 --> 00:30:31,835 スミスは攻めてくる独軍に 至近距離から発砲 358 00:30:41,877 --> 00:30:44,626 銃撃戦で4人を殺害する 359 00:30:45,835 --> 00:30:48,293 他の兵士は後退した 360 00:30:59,835 --> 00:31:02,460 スミスが戦線を 維持し続ける中― 361 00:31:03,960 --> 00:31:07,668 近くで75ミリ戦車の 砲弾が爆発 362 00:31:11,209 --> 00:31:13,668 さらに別の戦車が接近し 363 00:31:14,084 --> 00:31:17,752 独軍の歩兵が 向かってくるのが見える 364 00:31:18,376 --> 00:31:22,126 彼は2両目の戦車は 射程外と判断する 365 00:31:22,126 --> 00:31:26,960 一番の問題は 立ちはだかる独軍の擲弾兵だ 366 00:31:30,418 --> 00:31:33,960 スミスは絶え間なく 射撃を続ける 367 00:31:39,960 --> 00:31:42,251 銃弾がなくなるまで撃った 368 00:31:43,877 --> 00:31:46,501 塹壕に戻ったスミスは 369 00:31:47,126 --> 00:31:50,877 テナントの近くで 予備の弾倉を見つけた 370 00:31:51,251 --> 00:31:54,835 スミスはシーフォース連隊が 守った陣地と 371 00:31:54,835 --> 00:31:58,960 負傷したテナントを 守るために戦っている 372 00:31:59,918 --> 00:32:04,126 銃弾を補充し テナントの近くで銃を構える 373 00:32:14,501 --> 00:32:16,418 撤退するドイツ兵 374 00:32:23,209 --> 00:32:26,793 そして再度 戦車から攻撃を受ける 375 00:32:30,418 --> 00:32:33,043 スミスは考え直す 376 00:32:36,460 --> 00:32:37,543 この時点で彼は 377 00:32:38,002 --> 00:32:42,543 友人を医療救護所に 連れていくと決めた 378 00:32:45,126 --> 00:32:48,585 戦いと聞くと 顔の見えない兵士たちが 379 00:32:48,585 --> 00:32:53,418 乱戦を繰り広げている イメージがあるだろう 380 00:32:53,418 --> 00:32:57,960 しかし戦いは小さな 人間模様で成り立っている 381 00:32:57,960 --> 00:32:59,585 これはその一つだ 382 00:33:00,126 --> 00:33:01,626 スミスは慎重に― 383 00:33:02,585 --> 00:33:06,209 テナントを 運ばなければならない 384 00:33:07,835 --> 00:33:11,460 彼は戦車の攻撃が 止まった隙に 385 00:33:11,460 --> 00:33:14,918 友人を連れて 比較的安全な塹壕を出た 386 00:33:34,543 --> 00:33:38,209 周囲ではC中隊と 戦車駆逐小隊が 387 00:33:38,209 --> 00:33:43,793 独軍の反撃を食い止めようと 戦闘を続けている 388 00:33:49,168 --> 00:33:52,752 二人は急いで 近くの教会へ移動する 389 00:33:53,168 --> 00:33:57,126 シーフォース連隊 C中隊司令官のリンチ少佐は 390 00:33:57,126 --> 00:34:01,126 交差道路に 本部と救護所を設置した 391 00:34:02,918 --> 00:34:07,376 スミスはテナントと共に 救護班の元に到着 392 00:34:09,376 --> 00:34:11,585 {\an8}負傷した兵士は通常― 393 00:34:11,585 --> 00:34:15,334 {\an8}仮設の医療施設で 治療を受ける 394 00:34:15,334 --> 00:34:16,918 アレクサンドラ・リチー コレギウム・ シビタス大学 教授 395 00:34:16,918 --> 00:34:18,501 {\an8}もしくは 病院に運ばれる 396 00:34:18,710 --> 00:34:20,835 しかしサビオ川では 397 00:34:20,835 --> 00:34:24,793 川が増水し 大量の水が流れていた 398 00:34:24,793 --> 00:34:27,793 そのため負傷者は戻せない 399 00:34:27,793 --> 00:34:31,877 負傷者はひどく 無防備な状態で取り残された 400 00:34:32,877 --> 00:34:36,960 川を渡れないため 負傷者は避難できない 401 00:34:36,960 --> 00:34:40,334 そして洪水は 別の困難をもたらす 402 00:34:40,501 --> 00:34:43,251 {\an8}リンチ少佐の 最大の懸念は 403 00:34:43,251 --> 00:34:45,752 {\an8}援軍があるかどうかだ 404 00:34:45,752 --> 00:34:48,960 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 405 00:34:48,960 --> 00:34:52,585 {\an8}援軍が 渡ってこられなくなった 406 00:34:53,710 --> 00:34:58,168 これはイタリアでの戦闘でも 繰り返された問題だ 407 00:35:04,168 --> 00:35:08,543 イタリアの橋は 高い位置に架けられていたが 408 00:35:08,835 --> 00:35:10,793 多くは破壊された 409 00:35:10,960 --> 00:35:16,668 連合軍や独軍が互いの アクセスを遮断するために 410 00:35:16,668 --> 00:35:19,209 爆破してしまったのだ 411 00:35:19,626 --> 00:35:22,918 どちらにせよ 代償を払うのは市民だ 412 00:35:24,752 --> 00:35:28,084 連合軍は 水の流れが激しい雨季に 413 00:35:28,084 --> 00:35:30,293 復旧作業を強いられる 414 00:35:32,710 --> 00:35:37,251 連合軍は独軍の他に 天候とも戦っている 415 00:35:37,710 --> 00:35:39,501 サビオ川の洪水も一例だ 416 00:35:39,501 --> 00:35:43,543 ぬかるみで 橋を架けられる場所がない 417 00:35:43,543 --> 00:35:47,209 だから歩兵は渡れず 物資も防具も運べない 418 00:35:48,293 --> 00:35:50,543 シーフォース連隊は 単独行動だ 419 00:35:53,251 --> 00:35:54,918 不利な状況だ 420 00:35:55,543 --> 00:35:58,835 スミスはその悲惨な状況を こう振り返る 421 00:35:59,334 --> 00:36:02,585 教会でリンチ少佐が 彼に言ったそうだ 422 00:36:02,585 --> 00:36:06,209 “我々は囲まれた どうしたらいい?”と 423 00:36:06,209 --> 00:36:10,418 スミスは“窓のそばに 隠れろ”と答えた 424 00:36:12,209 --> 00:36:15,084 そのとおりだったかは 分からない 425 00:36:15,084 --> 00:36:17,585 しかしこの厳しい状況で 426 00:36:17,585 --> 00:36:21,293 彼が頼りになる男だったのは 間違いない 427 00:36:22,501 --> 00:36:27,209 スミスは さらなる敵の 攻撃に備え教会を離れる 428 00:36:31,793 --> 00:36:35,126 カナダ軍は独軍の 機甲部隊を減速させたが 429 00:36:35,293 --> 00:36:37,126 壊滅させる必要がある 430 00:36:37,126 --> 00:36:43,501 トンプソン軍曹と 戦車駆逐小隊は教会の外で 431 00:36:43,501 --> 00:36:46,835 迫る独軍の歩兵を食い止める 432 00:36:55,752 --> 00:36:59,752 独軍の自走砲が こちらに向かってくる 433 00:37:06,626 --> 00:37:08,543 雨が降り続く中 434 00:37:09,002 --> 00:37:13,668 トンプソン軍曹は暗闇の中で 脅威に立ち向かう 435 00:37:17,293 --> 00:37:22,168 独軍の自走砲は戦闘部隊の 残骸をよける必要がある 436 00:37:26,168 --> 00:37:30,168 {\an8}独軍の自走砲は道路で 立ち往生している 437 00:37:30,168 --> 00:37:32,002 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 438 00:37:32,002 --> 00:37:32,251 {\an8}大破した戦車や 死体のせいだ 439 00:37:33,752 --> 00:37:38,585 そこで独軍は 教会の裏に回ろうと試みる 440 00:37:45,877 --> 00:37:47,585 部隊がPIATを準備すると 441 00:37:48,002 --> 00:37:52,168 戦車駆逐小隊が 短機関銃で砲撃する 442 00:37:57,460 --> 00:38:00,752 しかし弾丸は装甲に 跳ね返される 443 00:38:03,626 --> 00:38:06,501 自走砲が射程に入ると― 444 00:38:07,960 --> 00:38:10,918 戦車駆逐小隊は PIATを放つ 445 00:38:21,626 --> 00:38:22,585 命中した 446 00:38:23,002 --> 00:38:26,002 2両目の自走砲は動かない 447 00:38:37,418 --> 00:38:39,835 マウラー大尉が負傷したため 448 00:38:40,793 --> 00:38:44,334 シュトランゲン少尉が 大隊の指揮を執る 449 00:38:44,334 --> 00:38:46,752 彼が唯一の独軍将校だ 450 00:38:48,084 --> 00:38:51,043 {\an8}手りゅう弾の爆発で マウラーが負傷し 451 00:38:51,043 --> 00:38:52,626 ペーター・リーブ 軍事史学者 452 00:38:52,626 --> 00:38:55,460 {\an8}副官である少尉が 指揮を執る 453 00:38:55,460 --> 00:39:00,543 少尉が全体の指揮を執るのは かなり珍しいことだ 454 00:39:01,002 --> 00:39:05,626 いかに絶望的な状況に 置かれていたかが分かる 455 00:39:08,668 --> 00:39:11,376 カナダ軍は 粘り強さを見せる 456 00:39:15,126 --> 00:39:17,126 戦いは終わっていない 457 00:39:19,334 --> 00:39:24,376 トンプソン軍曹と部下は 先の攻撃の後始末をする 458 00:39:26,126 --> 00:39:29,668 彼らは暗闇の敵に目を凝らす 459 00:39:31,835 --> 00:39:38,043 やがて教会の裏に別の戦車が はうように前進してくる 460 00:39:42,376 --> 00:39:45,501 PIATチームは再装填する 461 00:39:47,918 --> 00:39:53,084 戦車は破壊された自走砲に 進路を阻まれ速度を落とす 462 00:39:54,209 --> 00:39:58,293 通常でも45トン戦車の 操縦は難しいのに 463 00:39:58,877 --> 00:40:01,168 外は暗闇という状況だ 464 00:40:03,710 --> 00:40:07,501 がれきが散乱する戦場で 操縦するのは 465 00:40:07,501 --> 00:40:09,752 至難の業だっただろう 466 00:40:21,626 --> 00:40:24,043 状況は最悪だった 467 00:40:24,877 --> 00:40:30,168 雨で地面がぬかるみ 戦車は塹壕にはまってしまう 468 00:40:33,543 --> 00:40:38,043 トンプソンは PIATチームを前進させる 469 00:40:39,501 --> 00:40:40,376 戦車だ 470 00:40:40,501 --> 00:40:42,168 PIATを! 471 00:40:47,084 --> 00:40:49,084 機関銃で脇を固める 472 00:40:54,710 --> 00:40:57,126 PIATで戦車を撃破した 473 00:41:08,334 --> 00:41:11,960 逃げ出そうとしたドイツ兵 2人が殺され― 474 00:41:11,960 --> 00:41:14,293 他の兵士は闇の中へ逃げた 475 00:41:25,877 --> 00:41:28,460 朝6時までに独軍は撤退 476 00:41:28,460 --> 00:41:32,126 100人以上の兵士を失い 自走砲2両― 477 00:41:32,376 --> 00:41:35,877 戦車2両を含む 多くの車両を失った 478 00:41:39,209 --> 00:41:44,376 作戦中 シーフォース部隊の 死傷者は106人 479 00:41:44,376 --> 00:41:48,002 うち18名が死亡 61名が負傷した 480 00:42:00,752 --> 00:42:04,084 カナダ兵の勝利は 素早く完ぺきだ 481 00:42:04,585 --> 00:42:05,460 おい 482 00:42:06,126 --> 00:42:09,626 暗闇の中で迂回した ドイツ兵たちが 483 00:42:09,626 --> 00:42:12,668 朝食を取りに 司令部に戻ってきた 484 00:42:12,668 --> 00:42:15,585 占領されたと 知らなかったのだ 485 00:42:21,960 --> 00:42:26,043 56人のドイツ兵が 捕虜として連行された 486 00:42:39,084 --> 00:42:42,418 トンプソン軍曹は その冷静さと 487 00:42:42,418 --> 00:42:45,002 粘り強さにより勲章を受章 488 00:42:45,752 --> 00:42:48,960 彼は猛反撃に遭いながらも 489 00:42:48,960 --> 00:42:53,168 カナダの拠点を守ったと 認められた 490 00:42:56,293 --> 00:42:58,710 スミスには 英国で最高の栄誉勲章― 491 00:42:58,710 --> 00:43:02,543 ビクトリア十字章が 授与された 492 00:43:03,293 --> 00:43:05,585 {\an8}スミスは 第2次世界大戦中に 493 00:43:05,835 --> 00:43:08,418 {\an8}唯一 これを受章した カナダ人一等兵だ 494 00:43:08,418 --> 00:43:09,960 デビッド・ボリス 軍事史学者 ランガラ・カレッジ 495 00:43:09,960 --> 00:43:10,626 {\an8}とてつもない快挙だ 496 00:43:10,626 --> 00:43:12,752 彼は面白い男だった 497 00:43:13,209 --> 00:43:16,543 例えばジョージ6世に 会う前日 498 00:43:16,710 --> 00:43:19,626 仲間は 彼が確実に来るように― 499 00:43:19,960 --> 00:43:22,585 ビールを持たせて 閉じ込めたとか 500 00:43:22,710 --> 00:43:27,168 そして彼は頭を下げず 代わりに敬礼をした 501 00:43:27,168 --> 00:43:30,209 これは権威との 複雑な関係を― 502 00:43:30,209 --> 00:43:32,501 物語るものだと思う 503 00:43:40,668 --> 00:43:42,501 {\an8}スミスは ビクトリア十字章で 504 00:43:42,501 --> 00:43:45,293 {\an8}生存する最後の カナダ人受章者だった 505 00:43:45,293 --> 00:43:46,710 {\an8}2005年に他界 506 00:43:47,752 --> 00:43:50,418 {\an8}彼は国民的英雄として 称えられた 507 00:43:52,334 --> 00:43:55,668 {\an8}ボローニャは 北イタリアでの 508 00:43:55,668 --> 00:43:58,501 {\an8}早期の勝利が 期待されていた 509 00:43:59,002 --> 00:44:03,376 {\an8}だが1945年4月まで 解放されなかった 510 00:44:03,376 --> 00:44:06,293 {\an8}その頃カナダの シーフォース連隊は 511 00:44:06,293 --> 00:44:08,835 {\an8}オランダで 独軍と戦っていた 512 00:44:08,835 --> 00:44:09,877 日本語字幕 池田 由香 ベレスフォード 由紀江