1
00:00:06,068 --> 00:00:07,945
‎NETFLIX オリジナルシリーズ

2
00:00:48,986 --> 00:00:50,905
１５８３年 日本

3
00:00:50,988 --> 00:00:56,243
‎天下統一を目指した侍
‎織田信長は世を去った

4
00:00:58,204 --> 00:01:02,958
‎信長の忠実な家臣 秀吉は
‎これを機に権力を掌握

5
00:01:04,918 --> 00:01:10,800
‎対立を深めた有力大名の
‎柴田勝家が出兵する

6
00:01:12,093 --> 00:01:17,098
‎勝家は秀吉が築いた
‎３つの‎砦(とりで)‎を攻め

7
00:01:18,182 --> 00:01:23,062
‎２つを落とし
‎残すは‎賤ヶ岳(しずがたけ)‎のみ

8
00:01:25,147 --> 00:01:28,359
‎攻めるのは勝家の‎甥(おい)
‎佐久間盛政

9
00:01:29,443 --> 00:01:32,696
‎砦が落ちれば秀吉は破滅する

10
00:01:36,283 --> 00:01:39,787
１５８３年 日本

11
00:01:43,791 --> 00:01:44,291
佐久間盛政
賤ヶ岳近郊

12
00:01:44,291 --> 00:01:47,461
佐久間盛政
賤ヶ岳近郊
盛政は賤ヶ岳の占領を
重要視していました

13
00:01:47,461 --> 00:01:50,297
盛政は賤ヶ岳の占領を
重要視していました

14
00:01:53,425 --> 00:01:55,594
‎しかし砦は持ちこたえます

15
00:02:02,434 --> 00:02:04,520
‎長く持ちこたえれば

16
00:02:04,603 --> 00:02:06,564
秀吉の援軍が来る
可能性が高まります

17
00:02:06,564 --> 00:02:08,648
秀吉の援軍が来る
可能性が高まります
豊臣秀吉
岐阜城近郊

18
00:02:08,648 --> 00:02:10,609
豊臣秀吉
岐阜城近郊

19
00:02:17,825 --> 00:02:21,203
‎攻める側は
‎敵の援軍に対して

20
00:02:21,287 --> 00:02:21,620
著しく無防備になる
傾向があります

21
00:02:21,620 --> 00:02:25,291
著しく無防備になる
傾向があります
アイザック･メイヤー
歴史学者

22
00:02:25,291 --> 00:02:25,374
アイザック･メイヤー
歴史学者

23
00:02:25,374 --> 00:02:25,624
アイザック･メイヤー
歴史学者
城を攻めるのに
意識が集中し

24
00:02:25,624 --> 00:02:28,043
城を攻めるのに
意識が集中し

25
00:02:28,127 --> 00:02:31,881
‎背後が手薄になって
‎しまうからです

26
00:02:35,843 --> 00:02:38,512
柴田勝家

27
00:02:38,512 --> 00:02:39,847
柴田勝家
柴田勝家は
事態を懸念します

28
00:02:39,847 --> 00:02:41,724
柴田勝家は
事態を懸念します

29
00:02:44,935 --> 00:02:48,522
‎使者を送り
‎盛政に指示を出しました

30
00:02:48,606 --> 00:02:51,025
‎賤ヶ岳の砦の包囲を解き

31
00:02:51,108 --> 00:02:51,525
先に落とした砦に入れ
という内容です

32
00:02:51,525 --> 00:02:54,904
先に落とした砦に入れ
という内容です
スティーブン･
ターンブル
歴史学者 作家

33
00:02:54,904 --> 00:02:55,571
先に落とした砦に入れ
という内容です

34
00:02:58,324 --> 00:03:02,244
‎盛政は攻撃を続ける
‎猶予があると考え

35
00:03:02,328 --> 00:03:02,745
勝家の命令を無視します

36
00:03:02,745 --> 00:03:05,623
勝家の命令を無視します
ネイサン･レドベター
歴史学者

37
00:03:12,796 --> 00:03:16,675
‎“夕方までに賤ヶ岳を
‎落とします”

38
00:03:16,759 --> 00:03:19,845
‎それが盛政からの返事でした

39
00:03:25,059 --> 00:03:27,269
‎勝家は苛立ちます

40
00:03:31,106 --> 00:03:36,153
‎盛政が秀吉軍の
‎背後からの攻撃に弱いことを

41
00:03:36,237 --> 00:03:38,155
‎知っていたからです

42
00:03:40,324 --> 00:03:44,161
‎侍としては
‎最も低い階級の出身ながら

43
00:03:44,245 --> 00:03:44,662
秀吉は信じられないほど
策略に長けた―

44
00:03:44,662 --> 00:03:47,915
秀吉は信じられないほど
策略に長けた―
マイケル･オースリン
歴史学者 作家

45
00:03:47,998 --> 00:03:49,667
‎戦術の達人でした

46
00:03:51,085 --> 00:03:55,631
‎極めて優れた武将として
‎高く評価されています

47
00:03:59,760 --> 00:04:04,682
‎ですから賤ヶ岳での状況を
‎知らされた時―

48
00:04:06,642 --> 00:04:10,479
‎絶好のチャンスだと
‎確信したのでしょう

49
00:04:17,026 --> 00:04:21,031
堀越祐一
歴史学者

50
00:04:29,873 --> 00:04:34,878
‎秀吉軍は機動力の高さで
‎知られていました

51
00:04:36,422 --> 00:04:39,300
‎ですから賤ヶ岳に
‎急行できれば

52
00:04:39,383 --> 00:04:44,263
‎反撃の突破口が開け
‎包囲軍を撃破できる

53
00:04:44,346 --> 00:04:46,640
‎秀吉はそう考えたのです

54
00:04:52,896 --> 00:04:57,192
‎何が起きているのかを
‎盛政が最初に知ったのは

55
00:04:57,735 --> 00:04:59,945
‎谷を見下ろした時でした

56
00:05:02,406 --> 00:05:08,162
‎秀吉の大軍が続々と
‎山道を進んできたのです

57
00:05:10,998 --> 00:05:13,667
‎盛政は激しく動揺し

58
00:05:13,751 --> 00:05:20,341
‎急いで軍を再編成し
‎守備を固めようとします

59
00:05:23,427 --> 00:05:25,429
‎しかし手遅れでした

60
00:05:32,519 --> 00:05:35,606
‎盛政の軍勢は
‎油断していたのです

61
00:05:39,151 --> 00:05:43,322
‎奇襲をかけた秀吉軍が
‎有利でした

62
00:05:55,209 --> 00:06:00,464
‎賤ヶ岳の戦いは
‎激しい白兵戦となります

63
00:06:02,174 --> 00:06:04,301
‎狭い戦場で―

64
00:06:05,344 --> 00:06:07,596
‎殺し合いが行われます

65
00:06:24,738 --> 00:06:27,866
‎盛政の兵は
‎すぐに山を駆け下りて

66
00:06:27,950 --> 00:06:30,786
‎勝家の城を守りに向かいます

67
00:06:30,869 --> 00:06:33,747
‎しかし秀吉軍が追撃します

68
00:06:44,341 --> 00:06:49,430
‎３日間の籠城の後
‎勝家は負けを悟りました

69
00:07:11,452 --> 00:07:16,206
‎賤ヶ岳の戦いでの勝利は
‎決定的でした

70
00:07:17,082 --> 00:07:21,420
‎秀吉は事実上
‎織田信長の後継者となり

71
00:07:21,503 --> 00:07:25,340
‎日本最大の権力を
‎握ったのです

72
00:07:42,191 --> 00:07:45,486
‎秀吉は政治史において
‎特別な存在です

73
00:07:46,069 --> 00:07:49,156
‎先見の明があり
‎従来の枠を超えた―

74
00:07:49,239 --> 00:07:49,656
新しい可能性を
察知できた人物です

75
00:07:49,656 --> 00:07:53,660
新しい可能性を
察知できた人物です
デビッド･スパフォード
歴史学者

76
00:07:53,660 --> 00:07:54,912
新しい可能性を
察知できた人物です

77
00:07:59,374 --> 00:08:01,001
‎事実として―

78
00:08:01,084 --> 00:08:04,796
‎日本では100年間
‎内戦が続いていました

79
00:08:05,297 --> 00:08:07,841
‎戦を知らない世代は
‎いません

80
00:08:07,925 --> 00:08:11,428
‎秀吉は安定した
‎政治体制を構築し

81
00:08:11,512 --> 00:08:13,764
‎内戦の終結を目指します

82
00:08:16,308 --> 00:08:20,103
‎しかし日本で最も有力な
‎大名となっても

83
00:08:20,687 --> 00:08:22,523
‎油断はできません

84
00:08:22,606 --> 00:08:26,318
‎天下を狙える有力大名が
‎残っています

85
00:08:27,277 --> 00:08:28,779
‎特に徳川家康とは

86
00:08:30,072 --> 00:08:31,198
強固な同盟を結ぶ
必要がありました

87
00:08:31,198 --> 00:08:33,367
強固な同盟を結ぶ
必要がありました
徳川家康

88
00:08:33,367 --> 00:08:35,368
徳川家康

89
00:08:37,204 --> 00:08:39,540
‎安全は保障されていません

90
00:08:43,627 --> 00:08:49,174
‎家康と秀吉は 共に
‎信長を支えて戦ってきました

91
00:08:51,969 --> 00:08:56,640
‎しかし家康は家臣というより
‎信長の同盟相手です

92
00:08:58,475 --> 00:09:01,979
‎ですから
‎信長の家臣だった秀吉が

93
00:09:02,062 --> 00:09:08,902
‎突然 日本の支配者のように
‎振る舞うことは不服でした

94
00:09:14,700 --> 00:09:17,035
‎家康も野心家です

95
00:09:17,119 --> 00:09:18,829
あわよくば自分が
天下を取る気でいました

96
00:09:18,829 --> 00:09:21,206
あわよくば自分が
天下を取る気でいました
イーサン･シーガル
歴史学者

97
00:09:26,795 --> 00:09:29,631
‎家康は慎重な戦略家でした

98
00:09:29,715 --> 00:09:33,802
‎戦を起こすなら
‎圧倒的優位を確保すべきだと

99
00:09:33,885 --> 00:09:35,429
‎分かっていました

100
00:09:37,764 --> 00:09:42,519
‎秀吉を倒すにはそれなりの
‎同盟が必要でした

101
00:09:42,603 --> 00:09:46,148
‎家康は信長の次男 信雄を
‎支持することが

102
00:09:46,231 --> 00:09:49,693
‎最善の方法だと考えました

103
00:09:49,818 --> 00:09:52,362
織田信雄

104
00:09:52,362 --> 00:09:53,739
織田信雄
信雄は自分が正当な
後継者であり

105
00:09:53,739 --> 00:09:57,200
信雄は自分が正当な
後継者であり

106
00:09:57,576 --> 00:10:01,204
‎秀吉の行いは謀反だと
‎主張します

107
00:10:03,999 --> 00:10:09,630
‎家康は信雄と手を組むことで
‎秀吉が強くなりすぎる前に

108
00:10:09,713 --> 00:10:10,130
秀吉を倒せると
考えました

109
00:10:10,130 --> 00:10:13,717
秀吉を倒せると
考えました
オレグ･ベネシュ
歴史学者

110
00:10:17,804 --> 00:10:20,432
‎時が来れば信雄を切り捨て

111
00:10:20,515 --> 00:10:24,353
‎権力を奪うつもり
‎だったでしょう

112
00:10:27,272 --> 00:10:29,483
‎家康にとって賭けでした

113
00:10:29,566 --> 00:10:33,737
‎家康は辛抱強く
‎用心深いことで有名ですが

114
00:10:34,363 --> 00:10:38,283
‎時に危険を冒すことも
‎必要です

115
00:10:38,700 --> 00:10:42,704
‎家康にとって一世一代の
‎賭けでした

116
00:10:47,709 --> 00:10:50,337
‎信雄軍に支えられ―

117
00:10:50,420 --> 00:10:54,633
‎家康は兵を率い
‎秀吉の大軍に挑む

118
00:10:56,009 --> 00:11:00,263
‎激しい戦いが行われたが
‎膠(こう)‎着状態に陥った

119
00:11:00,347 --> 00:11:02,557
‎家康の計画は裏目に出た

120
00:11:04,267 --> 00:11:07,396
‎自軍の被害を
‎できるだけ食い止め―

121
00:11:07,479 --> 00:11:12,776
‎将来に望みを懸けようと
‎再び賭けに出る

122
00:11:13,568 --> 00:11:17,656
‎それは秀吉と面会し
‎和睦を申し出ることだった

123
00:11:36,758 --> 00:11:39,678
‎家康にとって
‎命懸けの会談です

124
00:11:39,761 --> 00:11:42,806
‎だまし討ちに
‎遭うかもしれません

125
00:11:57,362 --> 00:11:59,114
‎秀吉との面会は

126
00:11:59,197 --> 00:12:02,659
‎暗殺の機会を
‎与えるということです

127
00:12:05,245 --> 00:12:08,457
‎互いに信用していなかった
‎はずです

128
00:12:22,220 --> 00:12:27,058
‎秀吉は家康を味方につける
‎利点がありました

129
00:12:27,517 --> 00:12:31,146
‎家康は大規模な軍を持つ
‎優れた軍師です

130
00:12:31,229 --> 00:12:35,025
‎同盟を結ぶには好条件です

131
00:12:39,196 --> 00:12:41,865
‎家康は名目上は服従し

132
00:12:41,948 --> 00:12:45,327
‎秀吉を主君と認めます

133
00:12:45,410 --> 00:12:47,788
‎代わりに対立を解消し

134
00:12:47,871 --> 00:12:50,999
‎秀吉の側近の地位を
‎得たのです

135
00:12:56,213 --> 00:13:00,008
‎そして 伝統に倣い
‎人質を交換します

136
00:13:00,550 --> 00:13:04,095
‎家康は次男を養子として
‎差し出します

137
00:13:09,559 --> 00:13:14,356
‎一方の秀吉は愛する母を
‎差し出します

138
00:13:15,607 --> 00:13:19,152
‎人質交換の規則は
‎非常にシンプルです

139
00:13:19,861 --> 00:13:24,574
‎相手の武将が和睦を破れば
‎人質を処刑します

140
00:13:30,789 --> 00:13:35,001
‎家康との同盟を維持し
‎彼の力を抑制すれば―

141
00:13:35,085 --> 00:13:40,257
‎主権争いを阻止できるという
‎賭けに出たのです

142
00:13:42,300 --> 00:13:47,806
‎長く乱世が続き 大名は
‎互いを信用できませんでした

143
00:13:48,390 --> 00:13:53,645
‎殺し合いではなく
‎共存の道を受け入れる時―

144
00:13:54,271 --> 00:13:56,231
‎社会の変革が訪れます

145
00:13:56,314 --> 00:13:59,317
‎それがこの時
‎起きたことなのです

146
00:14:06,616 --> 00:14:11,663
‎この同盟によって
‎秀吉は東の守りを家康に任せ

147
00:14:12,372 --> 00:14:15,959
‎自身は中部の統一に
‎専念します

148
00:14:19,254 --> 00:14:23,174
‎しかし天下統一には
‎正当性が必要でした

149
00:14:30,140 --> 00:14:33,518
‎秀吉は実力で
‎地位を勝ち取りました

150
00:14:34,144 --> 00:14:39,482
‎しかし血統が重んじられた
‎当時の社会では まだ―

151
00:14:39,900 --> 00:14:43,528
‎秀吉には越え難い
‎壁があったのです

152
00:14:46,740 --> 00:14:51,119
‎当時は 支配者の権威は
‎天皇に由来します

153
00:14:51,202 --> 00:14:51,620
しかし天皇自身は
支配者というより

154
00:14:51,620 --> 00:14:55,874
しかし天皇自身は
支配者というより
フィリップ･ギャレット
歴史学者

155
00:14:55,957 --> 00:14:58,710
基本的に
象徴的な存在です

156
00:14:58,793 --> 00:15:03,924
‎実権を握っていたのは
‎摂政や関白でした

157
00:15:04,007 --> 00:15:07,427
‎関白になれば
‎権力を正当化できると

158
00:15:07,510 --> 00:15:08,929
‎秀吉は考えます

159
00:15:13,350 --> 00:15:17,479
‎しかし そのためには
‎正しい血統が必要です

160
00:15:17,562 --> 00:15:20,982
‎藤原氏の血筋でなくては
‎いけませんが

161
00:15:21,066 --> 00:15:24,152
‎秀吉は農民の子にすぎません

162
00:15:26,613 --> 00:15:32,786
‎藤原氏は400年以上
‎朝廷を支配してきた家系です

163
00:15:34,621 --> 00:15:38,625
‎秀吉の戦略は
‎朝廷に接近することでした

164
00:15:48,635 --> 00:15:53,723
‎彼は自らの権力の正統性を
‎裏付けるものを

165
00:15:53,807 --> 00:15:56,434
‎朝廷に対して求めました

166
00:15:59,270 --> 00:16:01,690
‎その見返りに朝廷を保護し

167
00:16:01,773 --> 00:16:06,027
‎破壊された御所の再建と
‎名声の確立を約束します

168
00:16:22,085 --> 00:16:26,840
‎すると朝廷は 秀吉が
‎藤原家の子孫であることを

169
00:16:26,923 --> 00:16:30,301
‎証明する文書を
‎見つけました

170
00:16:36,891 --> 00:16:41,563
‎秀吉は新しい家系を
‎でっちあげたのでした

171
00:16:47,569 --> 00:16:53,199
‎藤原秀吉と名を改めた彼は
‎関白に任ぜられました

172
00:17:03,460 --> 00:17:07,797
‎破竹の勢いで日本の
‎最高権力者となった秀吉

173
00:17:09,590 --> 00:17:09,840
１５８８年 日本

174
00:17:09,840 --> 00:17:13,636
１５８８年 日本

175
00:17:09,840 --> 00:17:13,636
‎わずか５年間で
‎国の３分の１から―

176
00:17:13,720 --> 00:17:16,556
‎約半分にまで領地を拡大

177
00:17:16,638 --> 00:17:19,267
‎今や全国統一を狙おうとする

178
00:17:19,850 --> 00:17:23,812
‎しかし行く手にはまだ
‎強敵が残っている

179
00:17:24,647 --> 00:17:29,694
‎東には関東の覇者を自認する
‎小田原の北条氏

180
00:17:29,778 --> 00:17:34,574
‎そして北には
‎急速に勢力を拡大する伊達家

181
00:17:35,658 --> 00:17:41,039
‎野心あふれる若き当主が
‎秀吉の支配に立ち向かう

182
00:17:42,624 --> 00:17:44,209
‎伊達政宗だ

183
00:17:52,383 --> 00:17:55,261
‎伊達家の長男 政宗には

184
00:17:55,553 --> 00:17:55,845
伊達政宗

185
00:17:55,845 --> 00:17:59,265
伊達政宗
それなりのプライドが
あったでしょう

186
00:18:00,600 --> 00:18:05,230
‎しかし 幼少期に
‎天然痘を患っていたため―

187
00:18:05,313 --> 00:18:08,399
‎そのプライドが
‎傷つくことになります

188
00:18:15,281 --> 00:18:18,576
‎当時は平民の病と
‎されていました

189
00:18:19,702 --> 00:18:20,745
後遺症で全身に
跡が残った上に

190
00:18:20,745 --> 00:18:22,413
後遺症で全身に
跡が残った上に
ダレン･アッシュモア
山梨学院大学 歴史家

191
00:18:22,413 --> 00:18:22,497
ダレン･アッシュモア
山梨学院大学 歴史家

192
00:18:22,497 --> 00:18:24,749
ダレン･アッシュモア
山梨学院大学 歴史家
片目の涙管に感染が及び
失明しました

193
00:18:24,749 --> 00:18:27,752
片目の涙管に感染が及び
失明しました

194
00:18:27,836 --> 00:18:30,880
‎さらに眼球が
‎飛び出したのです

195
00:18:35,885 --> 00:18:38,805
‎政宗は父から
‎家督を譲られます

196
00:18:39,889 --> 00:18:42,433
‎しかし母が政宗の暗殺を企て

197
00:18:42,517 --> 00:18:46,563
‎弟に継がせようとしたとも
‎言われます

198
00:18:48,648 --> 00:18:52,527
‎右目に障害の残る長男は
‎母親から見て

199
00:18:52,610 --> 00:18:56,322
‎好ましくないと
‎思われたのです

200
00:19:12,505 --> 00:19:17,677
‎政宗は片目をくり抜き
‎弱点を克服することを決心

201
00:19:30,148 --> 00:19:31,065
政宗は奥州の〝独眼竜〞
と呼ばれました

202
00:19:31,065 --> 00:19:35,361
政宗は奥州の〝独眼竜〞
と呼ばれました
デビッド･イーソン
関西学院大学 歴史家

203
00:19:40,116 --> 00:19:45,079
‎政宗は服従と権力
‎そして敬意を重視しました

204
00:19:48,291 --> 00:19:51,336
‎それが政宗の
‎原動力になりました

205
00:19:51,419 --> 00:19:56,174
‎傷と痘痕のある政宗に対し
‎忠誠を尽くす者には

206
00:19:56,257 --> 00:19:57,467
‎信頼を置きます

207
00:19:58,218 --> 00:20:01,596
‎そうでない者に
‎容赦は無用です

208
00:20:01,679 --> 00:20:05,558
‎力づくで
‎ねじ伏せるまででした

209
00:20:13,775 --> 00:20:17,820
‎政宗は若くして
‎最初の試練に直面します

210
00:20:20,490 --> 00:20:25,495
父の同盟相手でもあった
大内定綱が―

211
00:20:25,578 --> 00:20:28,998
‎宿敵の‎蘆名(あしな)‎氏と
‎接触したのです

212
00:20:29,082 --> 00:20:32,085
‎そして政宗から離反しました

213
00:20:32,835 --> 00:20:38,758
‎定綱は 若い政宗に
‎一族の統括は難しいと―

214
00:20:38,841 --> 00:20:40,927
‎考えたのでしょう

215
00:20:43,930 --> 00:20:48,393
‎定綱の裏切りは
‎ただちに報いを受けます

216
00:20:51,271 --> 00:20:53,940
‎政宗は強硬姿勢で臨み

217
00:20:54,023 --> 00:20:56,776
‎定綱の討伐を決めました

218
00:20:58,486 --> 00:21:02,824
‎そして‎小手森(おでもり)‎城への
‎攻撃を命じます

219
00:21:04,951 --> 00:21:07,161
‎この大内攻めでは

220
00:21:07,245 --> 00:21:13,334
‎残酷なまでの厳しい態度を
‎示す必要がありました

221
00:21:13,918 --> 00:21:18,506
‎大きな衝撃を与えて
‎自分を印象づけるためです

222
00:21:20,758 --> 00:21:23,303
‎城を攻め落とした後―

223
00:21:24,429 --> 00:21:29,309
‎政宗は城内にいる者全員の
‎殺害を命じました

224
00:21:38,318 --> 00:21:40,028
‎政宗は手紙に

225
00:21:40,111 --> 00:21:45,199
‎“女も子供も犬も殺した”と
‎書いています

226
00:21:55,710 --> 00:22:00,631
‎政宗が全員を容赦なく
‎殺したのには

227
00:22:00,715 --> 00:22:03,009
‎意味がありました

228
00:22:03,092 --> 00:22:06,471
‎それは恐怖を
‎かき立てることです

229
00:22:07,680 --> 00:22:14,479
‎独眼竜に逆らえば
‎恐ろしい報いを受けることを

230
00:22:14,562 --> 00:22:16,606
‎思い知らせたのです

231
00:22:23,154 --> 00:22:26,282
政宗が東北地方で
台頭していることは

232
00:22:26,282 --> 00:22:26,824
政宗が東北地方で
台頭していることは
イーサン･シーガル
歴史家

233
00:22:26,824 --> 00:22:26,908
イーサン･シーガル
歴史家

234
00:22:26,908 --> 00:22:29,911
イーサン･シーガル
歴史家
秀吉の耳にも
入っていました

235
00:22:29,994 --> 00:22:34,415
いずれ政宗と手を結ぶか
戦うかになると

236
00:22:34,499 --> 00:22:38,086
‎秀吉は気づいていたでしょう

237
00:22:41,589 --> 00:22:42,590
１５８８年

238
00:22:42,590 --> 00:22:44,092
１５８８年

239
00:22:42,590 --> 00:22:44,092
‎秀吉が懸念したとおり
‎伊達政宗は

240
00:22:44,092 --> 00:22:45,927
‎秀吉が懸念したとおり
‎伊達政宗は

241
00:22:46,010 --> 00:22:50,139
‎ライバルに次々と
‎攻撃を仕掛けた

242
00:22:51,099 --> 00:22:53,810
そして北部は
内戦状態に陥った

243
00:22:55,228 --> 00:22:56,646
‎そんな中―

244
00:22:56,729 --> 00:23:00,566
‎秀吉は新しい方策に
‎取り組み始める

245
00:23:01,234 --> 00:23:04,904
‎100年以上続く
‎乱世を終わらせ

246
00:23:04,987 --> 00:23:08,157
‎天下を統一するための
‎大胆な方策だ

247
00:23:08,783 --> 00:23:13,538
‎その実現の手段となるのは
‎武力以外の方法だった

248
00:23:16,833 --> 00:23:21,671
‎権力者としての地位を
‎確実にして 間もなく

249
00:23:21,754 --> 00:23:25,133
‎秀吉は法令作りに着手します

250
00:23:25,216 --> 00:23:26,217
日本の社会の仕組みを
大幅に再編する法令です

251
00:23:26,217 --> 00:23:29,887
日本の社会の仕組みを
大幅に再編する法令です
デビッド･スパフォード
歴史学者

252
00:23:49,740 --> 00:23:54,412
‎秀吉が初期に行った
‎斬新な改革の１つが

253
00:23:55,121 --> 00:23:59,375
‎“刀狩り”と呼ばれる
‎法令です

254
00:24:10,928 --> 00:24:14,765
‎秀吉は使者を地方に送り―

255
00:24:14,849 --> 00:24:18,478
‎庶民から武器を
‎取り上げたのです

256
00:24:18,561 --> 00:24:19,645
庶民にも武器が
普及していたことが

257
00:24:19,645 --> 00:24:21,814
庶民にも武器が
普及していたことが
フィリップ･ギャレット
歴史学者

258
00:24:21,814 --> 00:24:21,898
フィリップ･ギャレット
歴史学者

259
00:24:21,898 --> 00:24:23,316
フィリップ･ギャレット
歴史学者
政治的な抵抗の
要因となっていました

260
00:24:23,316 --> 00:24:27,278
政治的な抵抗の
要因となっていました

261
00:24:27,361 --> 00:24:32,658
‎武器を持たなければ
‎武士に逆らえなくなります

262
00:24:33,409 --> 00:24:37,455
‎秀吉は階級間に
‎大きな隔たりを作ることで

263
00:24:37,538 --> 00:24:41,834
‎社会構造の
‎固定化を試みたのです

264
00:24:41,918 --> 00:24:46,964
‎武器を持ったごく少数の
‎エリート層である武士と

265
00:24:47,048 --> 00:24:50,218
‎それ以外の大多数の
‎一般庶民です

266
00:24:50,301 --> 00:24:54,847
‎庶民は突然 武士に
‎逆らえなくなりました

267
00:24:56,557 --> 00:24:59,185
‎皮肉な政策でした

268
00:24:59,268 --> 00:25:03,731
‎庶民から頂点に
‎上り詰めた秀吉が―

269
00:25:03,814 --> 00:25:08,569
‎かつての自分と同じ庶民から
‎力を奪いました

270
00:25:09,153 --> 00:25:12,406
‎彼らの出世の道を
‎閉ざしたのです

271
00:25:21,624 --> 00:25:23,417
秀吉は法令を制定し
兵農分離と―

272
00:25:23,417 --> 00:25:24,669
秀吉は法令を制定し
兵農分離と―
マイケル･オースリン
歴史学者

273
00:25:24,669 --> 00:25:24,752
マイケル･オースリン
歴史学者

274
00:25:24,752 --> 00:25:27,171
マイケル･オースリン
歴史学者
庶民の武装解除を
実現します

275
00:25:27,171 --> 00:25:27,255
庶民の武装解除を
実現します

276
00:25:27,338 --> 00:25:31,759
‎また“‎惣無事令(そうぶじれい)‎”という
‎重要な命令も出します

277
00:25:31,842 --> 00:25:36,138
‎これは大名が勝手に
‎戦を行うことを禁じ

278
00:25:36,222 --> 00:25:42,144
‎秀吉だけが戦の内容を
‎決められるとする法令です

279
00:25:56,033 --> 00:25:59,620
‎秀吉の私戦禁止令の効果は

280
00:25:59,704 --> 00:26:00,121
奥州では
長続きしませんでした

281
00:26:00,121 --> 00:26:03,291
奥州では
長続きしませんでした
デビッド･イーソン
関西学院大学 歴史学者

282
00:26:06,627 --> 00:26:12,133
‎1580年代の後半までに
‎政宗が急速に―

283
00:26:12,216 --> 00:26:14,885
‎伊達家の権力を拡大しました

284
00:26:28,149 --> 00:26:31,694
‎秀吉の家臣たちが
‎政宗に伝えます

285
00:26:31,777 --> 00:26:36,282
‎“今後も近隣諸国との
‎戦を続けるなら―”

286
00:26:36,365 --> 00:26:38,868
‎“必要な措置を講じる”

287
00:26:43,372 --> 00:26:44,582
秀吉は政宗が命令に
従うと思っていました

288
00:26:44,582 --> 00:26:48,502
秀吉は政宗が命令に
従うと思っていました
ダレン･アッシュモア
山梨学院大学 歴史家

289
00:26:48,502 --> 00:26:49,003
秀吉は政宗が命令に
従うと思っていました

290
00:27:01,974 --> 00:27:06,228
‎しかし 政宗は
‎屈服しようとしません

291
00:27:15,404 --> 00:27:20,076
‎政宗は西の勢力に対抗して
‎北の守りを固め

292
00:27:21,077 --> 00:27:25,122
‎自分や同盟国の領地を
‎守りたかったのでしょう

293
00:27:26,707 --> 00:27:30,878
‎秀吉だけでなく
‎あらゆる人に主張したのです

294
00:27:30,961 --> 00:27:33,798
‎“奥州を侮るな”と

295
00:27:36,967 --> 00:27:41,347
‎政宗が最優先したのは
‎蘆名氏の討伐です

296
00:27:43,307 --> 00:27:47,520
‎葦名氏は由緒ある血統を誇る
‎奥州の名家です

297
00:27:47,603 --> 00:27:50,106
‎地域の武士たちの間でも

298
00:27:50,189 --> 00:27:53,609
‎とりわけ尊敬され
‎認められていました

299
00:27:54,777 --> 00:27:57,780
‎政宗は蘆名氏のことを―

300
00:27:57,863 --> 00:28:01,701
‎脅威的な宿敵であると
‎認識していました

301
00:28:02,284 --> 00:28:06,831
‎蘆名氏を倒し
‎領地を奪うことができれば

302
00:28:06,914 --> 00:28:13,295
‎政宗は 日本有数の
‎有力大名の１人になれます

303
00:28:13,379 --> 00:28:18,092
‎東北地方全域の支配権を
‎握ることができるでしょう

304
00:28:28,310 --> 00:28:31,313
‎1580年代の終わりに―

305
00:28:31,397 --> 00:28:35,443
‎政宗に思いがけない
‎チャンスがやってきます

306
00:28:36,277 --> 00:28:37,528
猪苗代盛国(いなわしろもりくに)

307
00:28:37,528 --> 00:28:41,282
猪苗代盛国(いなわしろもりくに)
蘆名氏の家臣だった
猪苗代盛国が

308
00:28:41,282 --> 00:28:41,449
蘆名氏の家臣だった
猪苗代盛国が

309
00:28:41,532 --> 00:28:44,118
‎政宗側に寝返ったのです

310
00:28:44,201 --> 00:28:48,956
‎蘆名家では家督を巡る
‎内紛が起きていて

311
00:28:49,540 --> 00:28:53,335
‎大幅に勢力が
‎落ちていたのです

312
00:28:55,504 --> 00:28:59,800
‎秀吉により大名同士の戦は
‎禁じられていました

313
00:28:59,884 --> 00:29:02,762
‎それでも政宗は この状況を

314
00:29:02,845 --> 00:29:09,685
‎見逃すには惜しい機会と
‎考えたに違いありません

315
00:29:18,194 --> 00:29:24,074
‎葦名氏に勝てば政宗が
‎奥州の覇者になれる

316
00:29:24,533 --> 00:29:26,869
‎しかし勝てる保証はない

317
00:29:27,244 --> 00:29:32,041
‎蘆名氏は強敵であり
‎負けは死を意味する

318
00:29:33,459 --> 00:29:38,047
‎政宗は危険を承知で
‎２万以上の兵で攻め込んだ

319
00:29:38,631 --> 00:29:41,717
‎蘆名軍は兵力で劣ったが

320
00:29:41,842 --> 00:29:44,053
‎政宗軍を迎え撃つ

321
00:29:44,136 --> 00:29:49,016
‎戦国時代を代表する残酷な
‎戦いが始まろうとしていた

322
00:29:57,441 --> 00:30:00,861
‎伊達軍は会津に進軍し

323
00:30:00,945 --> 00:30:05,491
‎摺上原(すりあげはら)‎という場所で
‎葦名軍と対峙しました

324
00:30:09,036 --> 00:30:13,290
‎政宗は騎馬隊とともに
‎後方に本陣を置き

325
00:30:13,374 --> 00:30:19,255
‎両軍はその夜のうちに
‎陣形を整えます

326
00:30:20,422 --> 00:30:24,635
‎この戦が葦名氏にとっては
‎大惨事になると

327
00:30:24,718 --> 00:30:27,847
‎政宗は確信していました

328
00:30:29,598 --> 00:30:34,019
‎夜が明けると両軍は
‎正面から激突しました

329
00:30:35,980 --> 00:30:42,278
‎両軍は至近距離で
‎激しい攻防を繰り広げました

330
00:30:48,617 --> 00:30:52,538
‎しかし早朝
‎強い向かい風が起こり

331
00:30:54,748 --> 00:30:58,335
‎砂埃が伊達軍の
‎兵士の目を襲います

332
00:31:03,382 --> 00:31:05,426
‎戦況は悪化します

333
00:31:10,347 --> 00:31:15,060
‎午前中のうちに 伊達軍の
‎前線は崩れ始めます

334
00:31:25,988 --> 00:31:28,991
‎政宗は はっきりと
‎自覚しました

335
00:31:29,074 --> 00:31:32,202
‎伊達家存亡の危機が
‎迫っています

336
00:31:35,080 --> 00:31:38,042
‎そして護衛の騎馬隊を率いて

337
00:31:38,125 --> 00:31:41,462
‎敵の左側面に
‎切り込んだといいます

338
00:31:52,723 --> 00:31:57,937
‎そして蘆名軍に
‎大きな打撃を与えます

339
00:32:11,367 --> 00:32:15,204
‎政宗は敵軍を取り囲み―

340
00:32:15,287 --> 00:32:17,164
‎その場で斬殺します

341
00:32:20,960 --> 00:32:24,546
‎もはや戦ではなく虐殺でした

342
00:32:46,443 --> 00:32:49,571
‎記録によれば この戦の後―

343
00:32:49,655 --> 00:32:54,201
‎2500人の兵の首が
‎斬られたようです

344
00:32:54,284 --> 00:32:58,122
‎それらの首は政宗に
‎献上されたといいます

345
00:32:58,789 --> 00:33:02,793
‎彼は 望むものは
‎勝ち取ろうとする男なのです

346
00:33:06,380 --> 00:33:11,135
‎奥州の有力者 葦名氏との
‎戦いに勝利したことで

347
00:33:11,218 --> 00:33:16,849
‎政宗は今や東北地方で最も
‎強大な大名となりました

348
00:33:19,893 --> 00:33:24,606
‎政宗の勢力は拡大し
‎侮りがたい存在となります

349
00:33:25,441 --> 00:33:30,154
‎秀吉にとって政宗の存在は
‎無視できなくなりました

350
00:33:38,287 --> 00:33:39,830
１５９０年

351
00:33:39,913 --> 00:33:43,417
‎摺上原の戦いから
‎１年も経たずに

352
00:33:43,500 --> 00:33:48,005
‎秀吉は大軍を率いて
‎東‎へ‎進軍した

353
00:33:48,714 --> 00:33:51,717
‎最後まで秀吉への
‎服従を拒む―

354
00:33:51,800 --> 00:33:54,928
‎北条氏の討伐が狙いだ

355
00:33:55,804 --> 00:34:00,726
‎秀吉軍は北条氏の
‎居城である小田原城を包囲

356
00:34:01,351 --> 00:34:07,608
‎秀吉は忠誠の証に
‎北部の全大名に忠義を求め―

357
00:34:07,691 --> 00:34:10,235
‎合戦への参加を命じた

358
00:34:10,736 --> 00:34:15,865
‎諸大名が応じる中
‎１人だけが返事を遅らせた

359
00:34:22,956 --> 00:34:29,046
‎秀吉の度重なる上洛命令を
‎無視してきた政宗に

360
00:34:29,129 --> 00:34:33,508
‎秀吉から１通の
‎書状が届きます

361
00:34:38,222 --> 00:34:43,519
‎小田原征伐に
‎参戦せよという命令でした

362
00:34:46,479 --> 00:34:50,400
‎出陣は単なる建前で
‎実際の要求は

363
00:34:50,484 --> 00:34:52,903
‎秀吉への服従です

364
00:34:53,737 --> 00:34:56,323
‎これは最後の賭けでした

365
00:35:00,160 --> 00:35:05,207
‎政宗は 秀吉が北条氏を倒し
‎次の標的が自分になれば

366
00:35:05,290 --> 00:35:08,919
‎勝ち目はないと
‎分かっていました

367
00:35:16,510 --> 00:35:19,805
‎政宗は小田原行きを
‎決意します

368
00:35:22,516 --> 00:35:24,560
‎しかし服従はしません

369
00:35:30,232 --> 00:35:32,234
‎政宗は兵を連れて

370
00:35:32,317 --> 00:35:36,530
‎時間をかけて
‎小田原へと向かいます

371
00:35:37,239 --> 00:35:41,702
‎政宗は出発が遅れた言い訳を
‎あれこれと並べます

372
00:35:42,452 --> 00:35:46,665
‎秀吉の勝利に
‎確信が持てなかったので

373
00:35:46,748 --> 00:35:52,337
‎有利な方を見極めようと
‎思ったのかもしれません

374
00:36:00,053 --> 00:36:03,682
‎秀吉は大量の物資と
‎兵を動員し―

375
00:36:03,765 --> 00:36:09,146
‎小田原城を落とし
‎北条氏を滅ぼします

376
00:36:34,838 --> 00:36:40,719
‎ようやく政宗は
‎秀吉のもとに参上しました

377
00:36:42,679 --> 00:36:49,645
‎政宗は白装束を身にまとい
‎脇差(わきざし)‎だけを持っていました

378
00:36:49,728 --> 00:36:52,522
‎白は無垢の象徴ですが

379
00:36:52,606 --> 00:36:55,609
‎この場合は
‎死に装束を表します

380
00:36:55,692 --> 00:36:58,820
‎脇差も覚悟を表すものです

381
00:37:00,614 --> 00:37:06,328
‎秀吉に命じられれば
‎切腹するという意味なのです

382
00:37:10,540 --> 00:37:13,835
‎なかなか
‎参陣しなかった罰として―

383
00:37:13,919 --> 00:37:18,465
‎死も覚悟しているという
‎意思表示だったのでしょう

384
00:37:19,049 --> 00:37:22,511
‎秀吉の同情を引く
‎作戦かもしれません

385
00:37:22,594 --> 00:37:26,556
‎政宗は堂々としていました

386
00:37:39,486 --> 00:37:42,114
‎秀吉は重臣たちの前で

387
00:37:42,739 --> 00:37:45,993
‎政宗に申し開きをさせました

388
00:37:46,076 --> 00:37:48,412
‎徳川家康もいました

389
00:37:51,957 --> 00:37:56,670
‎秀吉は 反抗的な態度や
‎書状への対応が遅れた理由を

390
00:37:56,753 --> 00:37:58,547
‎政宗に問いました

391
00:37:59,131 --> 00:38:01,675
‎政宗はこう取り繕います

392
00:38:01,758 --> 00:38:03,802
‎“私は田舎者で―”

393
00:38:03,885 --> 00:38:07,472
‎“皆様のように礼儀を
‎知らないのです”

394
00:38:18,942 --> 00:38:24,489
‎死を目の前にしても
‎政宗は動じませんでした

395
00:38:25,741 --> 00:38:26,992
‎呼び出され

396
00:38:27,701 --> 00:38:29,328
‎申し開きをし

397
00:38:29,411 --> 00:38:32,664
‎それが通らなければ
‎死ぬまでです

398
00:38:35,917 --> 00:38:38,420
‎誰にも屈しませんでした

399
00:38:51,224 --> 00:38:53,560
‎秀吉は彼を許します

400
00:39:04,237 --> 00:39:07,324
‎秀吉は政宗を生かしておけば

401
00:39:07,407 --> 00:39:12,871
‎将来 役立つだろうと
‎直感したようです

402
00:39:26,218 --> 00:39:29,012
‎秀吉は政宗を従わせました

403
00:39:29,096 --> 00:39:31,640
‎しかしそれは従来のような

404
00:39:31,723 --> 00:39:36,603
‎破壊と殺‎戮(りく)‎によるものでは
‎ありませんでした

405
00:39:36,686 --> 00:39:39,231
‎秀吉は敵を
‎交渉の場に引き出し

406
00:39:39,314 --> 00:39:43,110
‎政治における均衡を
‎受け入れさせました

407
00:39:43,193 --> 00:39:48,573
‎つまり乱世は終わったと
‎認めさせたのです

408
00:39:50,117 --> 00:39:54,121
‎秀吉は政宗を従わせ
‎北条氏を破り―

409
00:39:54,204 --> 00:39:57,666
‎信長も果たせなかったことを
‎成し遂げた

410
00:39:58,667 --> 00:39:59,584
１５９０年

411
00:39:59,584 --> 00:40:01,461
１５９０年

412
00:39:59,584 --> 00:40:01,461
‎120年以上続いた
‎乱世は終わり

413
00:40:01,461 --> 00:40:03,296
‎120年以上続いた
‎乱世は終わり

414
00:40:03,380 --> 00:40:05,757
‎日本全国が統一された

415
00:40:07,968 --> 00:40:11,972
‎軍事力や政治力
‎そして外交力を駆使し

416
00:40:12,055 --> 00:40:15,767
‎農民出身の男がついに
‎頂点に立ったのだ

417
00:40:30,365 --> 00:40:36,455
‎1590年頃 秀吉は
‎皮肉な問題に直面します

418
00:40:36,538 --> 00:40:40,041
‎あっという間に
‎成功した秀吉は

419
00:40:40,125 --> 00:40:44,546
‎配下に多くの大名を
‎従えています

420
00:40:44,629 --> 00:40:48,133
‎彼らに役割を
‎与えねばなりません

421
00:40:52,345 --> 00:40:53,972
‎彼らは征服者です

422
00:40:55,807 --> 00:40:58,643
‎彼らが育ってきたのは

423
00:40:58,727 --> 00:41:03,523
‎征服しないと一族を滅ぼされ
‎領地を奪われる社会です

424
00:41:11,198 --> 00:41:14,451
‎征服すべき土地は
‎もうありません

425
00:41:14,534 --> 00:41:19,789
‎戦を終わらせるために
‎努力してきた秀吉にとって

426
00:41:19,873 --> 00:41:21,541
‎大問題でした

427
00:41:32,427 --> 00:41:33,929
‎思いついたのは

428
00:41:34,012 --> 00:41:38,058
‎ほとんど誇大妄想的な
‎途方もない計画です

429
00:41:40,018 --> 00:41:43,188
‎彼は百戦錬磨の男です

430
00:41:43,271 --> 00:41:46,483
‎しかし人生最大の
‎戦略ミスを犯し

431
00:41:46,566 --> 00:41:49,945
‎日本を大混乱に
‎陥れようとしていました

432
00:42:18,306 --> 00:42:21,560
‎日本語字幕　大西 健作