1 00:00:38,163 --> 00:00:41,163 “アビイ・ロード・スタジオ〟 2 00:00:47,803 --> 00:00:49,363 私はメアリー 3 00:00:50,643 --> 00:00:52,603 アビイ・ロード・スタジオは 4 00:00:52,723 --> 00:00:56,003 物心ついた頃から 人生の一部です 5 00:00:59,443 --> 00:01:04,363 スタジオの廊下を歩くと 不思議な魔法を感じます 6 00:01:08,603 --> 00:01:11,643 初めて来たのは いつだったか… 7 00:01:11,763 --> 00:01:18,003 これが私です 第2スタジオで 写真家の母が撮ったもの 8 00:01:18,123 --> 00:01:21,043 父とバンドも組んでいました 9 00:01:24,843 --> 00:01:27,003 90年以上の歴史から—— 10 00:01:27,123 --> 00:01:31,523 伝説的なレコーディングの 逸話をご紹介します 11 00:01:31,643 --> 00:01:35,043 クラシックからポップ 映画音楽まで 12 00:01:38,683 --> 00:01:41,283 この映画を撮るきっかけは—— 13 00:01:41,403 --> 00:01:46,083 ママが“ジェット〟を引いて 横断歩道を渡る写真なの 14 00:01:46,203 --> 00:01:46,963 覚えてる? 15 00:01:46,203 --> 00:01:52,523 ポール・ マッカートニー 16 00:01:47,083 --> 00:01:49,123 ああ もちろんだとも 17 00:01:49,243 --> 00:01:52,763 当時は あの近くに 住んでいて—— 18 00:01:52,883 --> 00:01:57,123 ジェットという名前の ポニーを飼っていた 19 00:01:58,443 --> 00:02:00,843 彼女は馬が大好きで—— 20 00:02:00,963 --> 00:02:04,883 ジェットを連れて スタジオに来たんだ 21 00:02:05,323 --> 00:02:10,203 その時に横断歩道を 渡っているのを撮った写真だ 22 00:02:12,723 --> 00:02:16,643 スタジオの中でも 行儀は悪くなかった 23 00:02:18,323 --> 00:02:21,403 第2スタジオ 1974年 24 00:02:21,523 --> 00:02:23,323 “ジェット〟 25 00:02:39,483 --> 00:02:43,843 ウイングスと ここに戻る時 迷いはなかった? 26 00:02:43,963 --> 00:02:49,403 “音楽活動の次のステップを 同じスタジオでやるのか?〟と 27 00:02:49,523 --> 00:02:51,283 ああ 確かに… 28 00:02:52,123 --> 00:02:53,243 ロンドンでは—— 29 00:02:53,363 --> 00:02:57,443 アビイ・ロード以外の スタジオも使っていた 30 00:02:58,283 --> 00:03:00,843 だが ここが一番だった 31 00:02:58,443 --> 00:03:01,323 第2スタジオ 1974年 32 00:03:01,443 --> 00:03:04,803 だからウイングスと 録音する時も—— “西暦1985年〟 33 00:03:04,923 --> 00:03:09,003 “最高のスタジオだし 気心も知れてる〟と思った 34 00:03:09,643 --> 00:03:13,163 当時のスタッフが いまだに大勢 残ってる 35 00:03:27,083 --> 00:03:29,163 一流のスタジオだ 36 00:03:29,643 --> 00:03:32,403 どのマイクも機能する 37 00:03:33,283 --> 00:03:37,923 冗談みたいだが マイクが 使えないスタジオもある 38 00:03:38,923 --> 00:03:41,643 古巣に戻れて うれしかったよ 39 00:03:53,723 --> 00:04:00,723 IF THESE WALLS COULD SING: アビー・ロード・スタジオの伝説 40 00:04:10,963 --> 00:04:14,923 横断歩道の脇にある 小さな門を通ると—— 41 00:04:15,043 --> 00:04:16,603 いつもの風景だ 42 00:04:16,723 --> 00:04:19,603 外の落書きを 見るたび—— 43 00:04:17,803 --> 00:04:22,643 エルトン・ジョン 44 00:04:19,723 --> 00:04:22,643 “ここで 魔法が起きた〟と思う 45 00:04:24,163 --> 00:04:27,923 壁から染み出ている歴史を 感じる 46 00:04:31,843 --> 00:04:35,403 世界のどこかに 夢見ている子供がいる 47 00:04:36,883 --> 00:04:40,643 いつか このスタジオで 録音したいとね 48 00:04:36,883 --> 00:04:43,403 ノエル・ギャラガー 49 00:04:41,163 --> 00:04:44,003 その夢を潰してはダメだ 50 00:04:44,923 --> 00:04:47,123 神聖な存在なんだ 51 00:04:48,883 --> 00:04:50,723 すばらしいよ 52 00:04:50,923 --> 00:04:54,323 何百万年後も 残っていてほしい 53 00:04:50,923 --> 00:04:55,803 リアム・ギャラガー 54 00:04:56,083 --> 00:04:58,163 国宝級だ 55 00:05:00,163 --> 00:05:02,563 初めてスタジオに来た時—— 56 00:05:02,683 --> 00:05:05,363 “ついにやった〟と感じたの 57 00:05:05,483 --> 00:05:09,203 小さい頃 寝室で 思い描いていた夢が—— 58 00:05:05,643 --> 00:05:11,403 セレステ 59 00:05:09,323 --> 00:05:11,843 本当に実現したから 60 00:05:16,123 --> 00:05:17,883 アビイ・ロードは—— 61 00:05:18,003 --> 00:05:21,803 奏でられた音楽の 母親のような存在だ 62 00:05:20,203 --> 00:05:26,643 ジョン・ウィリアムズ 63 00:05:21,923 --> 00:05:24,163 音を大切に守り—— 64 00:05:24,283 --> 00:05:27,163 音を吸収して 包み込んでくれる 65 00:05:28,683 --> 00:05:31,363 天から我々へのギフトだ 66 00:05:32,243 --> 00:05:34,403 単なるスタジオではなく—— 67 00:05:34,923 --> 00:05:36,843 神聖な空間なんだ 68 00:05:42,883 --> 00:05:48,483 アビイ・ロード3番地 1931年 69 00:05:46,243 --> 00:05:48,483 1931年11月12日—— 70 00:05:49,323 --> 00:05:51,163 エドワード・エルガーにより 71 00:05:51,283 --> 00:05:54,843 録音スタジオの こけら落としが行われます 72 00:05:54,963 --> 00:05:58,923 その偉大な作曲家は 斬新な記録媒体を支持 73 00:05:59,043 --> 00:06:01,483 現在 準備を進めています 74 00:06:01,603 --> 00:06:02,883 直接 ディスクに… 75 00:06:03,003 --> 00:06:03,603 準備は? 76 00:06:03,723 --> 00:06:05,883 ロンドン交響楽団を指揮 77 00:06:09,163 --> 00:06:12,363 第1スタジオ 1931年 78 00:06:12,483 --> 00:06:15,683 “威風堂々 第1番〟 79 00:06:19,163 --> 00:06:21,723 3年前 グラモフォン社が—— 80 00:06:21,843 --> 00:06:25,923 セント・ジョンズ・ウッドの アビイ・ロード3番地を—— 81 00:06:26,043 --> 00:06:28,003 買い取りました 82 00:06:28,123 --> 00:06:30,523 “アビイ・ロード 3番地〟 83 00:06:28,643 --> 00:06:33,643 そこに建つ邸宅には 9つの寝室 5つの応接室 84 00:06:33,763 --> 00:06:37,643 使用人の住居施設 裏には大庭園があります 85 00:06:37,763 --> 00:06:40,523 その邸宅が 世界最大で—— 86 00:06:40,643 --> 00:06:45,123 最新機材を備えるスタジオに 生まれ変わります 87 00:06:52,763 --> 00:06:57,443 マスター・ディスクから 大量のコピーが製造され—— 88 00:06:57,563 --> 00:07:01,723 世界中で音楽が 楽しめるようになります 89 00:07:03,443 --> 00:07:09,683 EMI代表 ジョセフ・ロックウッド 90 00:07:04,523 --> 00:07:09,683 私が着任した時は 年間50万ポンドの赤字だった 91 00:07:11,123 --> 00:07:14,403 クラシックでは 売上が見込めず—— 92 00:07:14,523 --> 00:07:19,643 ポップに精通している人材を 探すことにした 93 00:07:23,163 --> 00:07:26,523 ムーヴ・イット・アンド・ グルーヴ・イット 94 00:07:23,843 --> 00:07:27,883 学生時代の14~15歳から 歌ってたんだ 95 00:07:26,643 --> 00:07:27,883 1958年 96 00:07:28,003 --> 00:07:31,603 アビイ・ロードで録音した時は 17歳だった 97 00:07:32,163 --> 00:07:36,323 ノリー・パラマーの オーディションを受けた 98 00:07:33,003 --> 00:07:37,123 クリフ・リチャード 99 00:07:36,443 --> 00:07:39,683 彼はEMIの プロデューサーだった 100 00:07:40,123 --> 00:07:44,003 彼の前で初めて “ムーヴ・イット〟を披露した 101 00:07:44,123 --> 00:07:47,123 スタジオでの録音は興奮したよ 102 00:07:47,243 --> 00:07:49,683 しかも かのアビイ・ロードだ 103 00:07:49,843 --> 00:07:54,083 その後 長い間 第2スタジオの常連となった 104 00:07:55,003 --> 00:08:00,243 第2スタジオ 1958年 “ムーヴ・イット〟 105 00:08:19,363 --> 00:08:21,123 アビイ・ロードが—— 106 00:08:21,243 --> 00:08:24,643 ロックンロールに命を与え 先駆者となって—— 107 00:08:24,803 --> 00:08:26,803 音楽を大きく変えた 108 00:08:26,923 --> 00:08:29,403 歴史的にも ロックンロールは—— 109 00:08:29,523 --> 00:08:33,883 最大かつ最速で 長きにわたって変化を遂げた 110 00:08:41,963 --> 00:08:44,403 1950年 イギリスの レコード売上額は—— 111 00:08:44,523 --> 00:08:46,443 わずか350万ポンド 112 00:08:47,203 --> 00:08:50,843 ところが1960年までに 1500万ポンドに 113 00:08:50,963 --> 00:08:53,483 売上の約半数を占めるのは—— 114 00:08:53,603 --> 00:08:57,043 業界最大手のEMIでした 115 00:08:57,163 --> 00:09:01,603 レーベルにはパーロフォン HMV キャピトルを擁し—— 116 00:09:01,723 --> 00:09:03,963 世界最大のレコード会社です 117 00:09:04,083 --> 00:09:08,243 ジョセフ・ロックウッドは 競合他社を見据えています 118 00:09:08,363 --> 00:09:11,883 他社と競うのは すばらしいことだ 119 00:09:12,003 --> 00:09:15,963 簡単な商売だと思うなら ぜひ挑戦したまえ 120 00:09:16,243 --> 00:09:21,483 プロデューサー ジョージ・マーティン 121 00:09:18,323 --> 00:09:22,043 この業界に入ったのは 1950年11月だ 122 00:09:22,163 --> 00:09:25,363 ギルドホール音楽演劇学校で 学び—— 123 00:09:25,483 --> 00:09:29,203 EMIスタジオへ 面接に行くことになった 124 00:09:29,563 --> 00:09:34,283 パーロフォンでは 重要なポジションを任された 125 00:09:34,403 --> 00:09:36,163 ロックウッドが—— 126 00:09:36,283 --> 00:09:40,803 “最年少のレーベル責任者だ 頑張ってくれ〟と 127 00:09:41,363 --> 00:09:46,203 私は発掘に乗り出した 第2のクリフ・リチャードをね 128 00:09:46,563 --> 00:09:50,083 第2のクリフ・ リチャード探し 129 00:09:50,203 --> 00:09:51,443 1962年 130 00:09:51,563 --> 00:09:52,563 ビートルズは—— 131 00:09:52,683 --> 00:09:56,043 デッカからは レコードを出せなかった 132 00:09:52,683 --> 00:09:58,843 プロデューサー ジャイルズ・マーティン 133 00:09:56,163 --> 00:10:00,323 ブライアン・エプスタインは 最後の手段として—— 134 00:10:00,443 --> 00:10:02,683 レコード会社に売り込んだ 135 00:10:02,803 --> 00:10:05,763 父はブライアンに 好感を持ち—— 136 00:10:05,883 --> 00:10:07,763 “彼らを連れてこい〟と 137 00:10:08,043 --> 00:10:11,003 そして このスタジオに来た 138 00:10:11,683 --> 00:10:16,203 ジョージ・マーティンが現われ “何を聴かせてくれる?〟と 139 00:10:16,603 --> 00:10:20,643 うまいと思わなかったそうだが 彼らといるのが好きで—— 140 00:10:20,763 --> 00:10:22,563 4人を見ながら—— 141 00:10:22,683 --> 00:10:25,363 “誰がクリフで ザ・シャドウズだ?〟と 142 00:10:26,563 --> 00:10:29,803 第2スタジオ 1962年 143 00:10:29,003 --> 00:10:33,123 何曲か聴いたが どれも今ひとつだった 144 00:10:29,923 --> 00:10:32,883 “ラヴ・ミー・ドゥ〟 145 00:10:33,243 --> 00:10:35,803 “ラヴ・ミー・ドゥ〟が 一番 マシだった 146 00:10:36,923 --> 00:10:39,443 ジョージ・マーティンは 偉大だった 147 00:10:37,883 --> 00:10:43,923 リンゴ・スター 148 00:10:39,563 --> 00:10:42,723 この一言に尽きる “ジョージは偉大だった〟 149 00:10:42,843 --> 00:10:46,083 僕らは 楽譜の 読み書きもできず—— 150 00:10:46,203 --> 00:10:47,723 ただの大道芸人 151 00:10:47,843 --> 00:10:50,563 “ラヴ・ミー・ドゥ〟は そこそこのヒットだった 152 00:10:50,843 --> 00:10:53,723 その次が “プリーズ・プリーズ・ミー〟だ 153 00:10:54,283 --> 00:10:55,283 何してる? 154 00:10:55,403 --> 00:10:58,363 難しすぎる 続けられない 155 00:10:59,123 --> 00:11:00,203 本当に… 156 00:11:00,323 --> 00:11:01,163 無理だ! 157 00:11:01,403 --> 00:11:04,123 ジョージ・マーティンは あきれ気味で—— 158 00:11:04,243 --> 00:11:05,763 “速く弾けない?〟 159 00:11:05,883 --> 00:11:08,203 僕たちは“無理だ〟と 160 00:11:08,523 --> 00:11:10,403 …とは言わなかった 161 00:11:10,523 --> 00:11:13,803 頭では無理だと思ったが “やれる〟と答えた 162 00:11:13,923 --> 00:11:15,443 テイク7 163 00:11:21,923 --> 00:11:25,603 第2スタジオ 1962年 164 00:11:25,723 --> 00:11:28,443 “プリーズ・ プリーズ・ミー〟 165 00:11:30,163 --> 00:11:33,803 自信はなかったが 彼が“初ヒットになる〟と 166 00:11:33,923 --> 00:11:34,803 正しかった 167 00:11:47,003 --> 00:11:51,243 成功をつかむと ソングライターとして開花した 168 00:11:51,363 --> 00:11:54,403 “フロム・ミー・トゥ・ユー〟 “シー・ラヴズ・ユー〟 169 00:11:54,683 --> 00:11:55,723 名曲だ 170 00:11:57,043 --> 00:12:01,443 急いでアルバムを作るべきだと 早い段階で感じた 171 00:12:02,403 --> 00:12:06,603 1963年2月に たった1日で アルバムを録音した 172 00:12:06,363 --> 00:12:12,483 アルバムを1日で録音 1963年 173 00:12:06,723 --> 00:12:08,643 これを繰り返す? 174 00:12:08,763 --> 00:12:09,683 ああ 175 00:12:10,843 --> 00:12:11,923 聞いてる? 176 00:12:12,603 --> 00:12:15,283 早めにスタジオ入りして—— 177 00:12:15,403 --> 00:12:18,523 知ってる曲を 片っ端から演奏した 178 00:12:23,843 --> 00:12:26,563 上階のエンジニアが そのまま録った 179 00:12:27,523 --> 00:12:30,403 第2スタジオ 1963年 180 00:12:30,523 --> 00:12:33,883 “ツイスト・アンド・ シャウト〟 181 00:12:31,723 --> 00:12:33,883 ミックスしながら—— 182 00:12:35,203 --> 00:12:39,123 スネアやバスドラムの 音量を調節し—— 183 00:12:39,243 --> 00:12:41,443 全体のバランスを取った 184 00:12:41,563 --> 00:12:45,563 “バランス・エンジニア〟と 当時 呼ばれていた 185 00:12:46,883 --> 00:12:49,763 重視したのはライヴ感だ 186 00:12:50,163 --> 00:12:53,723 キャヴァーン・クラブが アビイ・ロードに移った 187 00:12:54,403 --> 00:12:56,123 かなり苦戦した 188 00:12:56,243 --> 00:13:01,243 ほとんど放送と同じで 2トラックしかなかった 189 00:13:05,483 --> 00:13:07,243 バンドのライヴだ 190 00:13:08,883 --> 00:13:10,483 トラック2には… 191 00:13:12,323 --> 00:13:14,963 ジョンの強烈なボーカルだ 192 00:13:15,763 --> 00:13:19,083 ポールとジョージも 一緒に歌ってる 193 00:13:26,363 --> 00:13:31,403 開始から12時間かからず レコーディング終了だ 194 00:13:31,523 --> 00:13:35,883 誰も“疲れた〟などと言わず ぶっ通しで演奏した 195 00:13:36,003 --> 00:13:40,163 ビートルズが すごいのは 音楽に没頭するところだ 196 00:13:40,283 --> 00:13:43,043 演奏こそが大事だった 197 00:13:43,563 --> 00:13:46,963 だから成功したんだ 198 00:13:55,963 --> 00:13:59,363 1音に込められた魂 1965年 199 00:14:11,883 --> 00:14:15,923 僕の人生において 音楽は大切なものだ 200 00:14:13,163 --> 00:14:19,043 声…プロデューサー スヴィ・ラジ・グラッブ 201 00:14:16,443 --> 00:14:20,043 だから思い切って 勝負をかけ—— 202 00:14:20,283 --> 00:14:24,923 イギリスまで渡ってきて 仕事を探した 203 00:14:27,403 --> 00:14:30,403 1960年9月19日のこと—— 204 00:14:30,723 --> 00:14:34,803 アビイ・ロード・スタジオに 正式に配属された 205 00:14:34,923 --> 00:14:36,723 それが始まりだ 206 00:14:40,763 --> 00:14:41,563 私は… 207 00:14:41,683 --> 00:14:43,003 もし彼女が… 208 00:14:43,123 --> 00:14:45,043 それが言いたかった 209 00:14:47,483 --> 00:14:49,563 そろそろ始めよう 210 00:14:49,763 --> 00:14:51,283 サウンドは満足? 211 00:14:51,403 --> 00:14:52,243 もちろん 212 00:14:52,363 --> 00:14:53,323 行こう 213 00:14:53,923 --> 00:14:58,083 ジャクリーヌ・デュ・プレとの 録音は いつも完ぺきだった 214 00:14:58,363 --> 00:15:03,603 彼女は納得がいくまで 妥協しないんだ 215 00:14:59,203 --> 00:15:05,643 第1スタジオ 1967年 リハーサル 216 00:15:03,723 --> 00:15:08,003 突然 音が激しくなるから 録るのも難しい 217 00:15:15,763 --> 00:15:17,163 バランスはいい 218 00:15:20,043 --> 00:15:22,923 尊敬する音楽家たちが ここで録り—— 219 00:15:23,043 --> 00:15:27,003 僕の好きなレコーディングも ここで生まれた 220 00:15:27,123 --> 00:15:30,843 ジャクリーヌ・デュ・プレや ダニエル・バレンボイム 221 00:15:30,963 --> 00:15:33,803 彼らの音楽を 聴いて育った 222 00:15:31,363 --> 00:15:36,763 シェク・ カネー=メイソン 223 00:15:34,643 --> 00:15:37,963 ここで録音された サウンドをね 224 00:15:57,483 --> 00:16:00,603 車で家族旅行した時 よく聴いた 225 00:16:00,723 --> 00:16:05,003 デュ・プレの “エルガー:チェロ協奏曲〟も 226 00:16:06,403 --> 00:16:09,363 僕は5~6歳だった 227 00:16:13,803 --> 00:16:16,563 彼女の演奏を聴くと—— 228 00:16:16,683 --> 00:16:20,363 1音ごとに 魂が こもっていると感じる 229 00:16:22,483 --> 00:16:26,683 “エルガー:チェロ協奏曲〟も ここで録音された 230 00:16:27,283 --> 00:16:31,763 数年前 僕も同じ曲を このスタジオで録った 231 00:16:31,883 --> 00:16:34,843 今 座ってる場所でね 232 00:16:35,603 --> 00:16:39,323 大変な名誉なのは もちろんだけど—— 233 00:16:40,003 --> 00:16:41,923 それ以上に特別だ 234 00:16:42,163 --> 00:16:44,603 第1スタジオ 2019年 235 00:16:44,723 --> 00:16:48,683 “エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品85〟 236 00:17:32,523 --> 00:17:34,523 1971年7月—— 237 00:17:34,643 --> 00:17:39,123 ジャクリーヌは心身疲労のため 1年間の休養を発表 238 00:17:39,443 --> 00:17:42,083 誰もが“多忙すぎた〟と 239 00:17:42,203 --> 00:17:45,803 しかし単なる 疲労ではなかったのです 240 00:17:45,163 --> 00:17:46,603 第1スタジオ 1967年 241 00:17:46,723 --> 00:17:50,203 多発性硬化症だと 分かったの 242 00:17:46,723 --> 00:17:49,803 “ブラームス:ピアノと チェロのためのソナタ〟 243 00:17:49,923 --> 00:17:51,563 “ヘ長調 作品99〟 244 00:17:51,083 --> 00:17:54,043 もちろん病気は怖いわ 245 00:17:54,763 --> 00:17:57,203 でも私は幸運だった 246 00:17:57,323 --> 00:18:01,803 自分の才能を 早くに開花できたからよ 247 00:18:01,923 --> 00:18:06,483 おかげで多発性硬化症が 深刻化して—— 248 00:18:07,323 --> 00:18:10,683 演奏が困難になる前に—— 249 00:18:10,803 --> 00:18:15,563 自分のすべてを出し切って 演奏することができた 250 00:18:15,683 --> 00:18:17,403 チェロを 251 00:18:39,123 --> 00:18:42,323 彼女が病魔に侵されたのち—— 252 00:18:43,243 --> 00:18:48,003 ダニエルから電話があり “明日の第1スタジオは?〟と 253 00:18:48,443 --> 00:18:53,083 “ダニエル・バレンボイムの テストとして押さえられる?〟 254 00:18:51,803 --> 00:18:54,323 “ピアノ・テスト〟 255 00:18:53,683 --> 00:18:56,563 彼は“録音をしたいが——〟 256 00:18:54,443 --> 00:18:56,563 “1971年12月10日〟 257 00:18:56,683 --> 00:19:00,643 “レコーディング・ シート〟 258 00:18:56,963 --> 00:19:00,283 “ムダでも 失望しないでほしい〟と 259 00:19:01,003 --> 00:19:03,003 これを見てほしいの 260 00:19:03,123 --> 00:19:03,803 何だろ? 261 00:19:03,923 --> 00:19:07,363 デュ・プレの 最後のレコーディング記録よ 262 00:19:07,803 --> 00:19:10,763 セッションが 2つ取り消されてる 263 00:19:11,163 --> 00:19:14,123 2セッションで終了した? 264 00:19:14,243 --> 00:19:16,683 “セッション後に体調不良〟と 265 00:19:16,803 --> 00:19:20,523 “2セッション後に デュ・プレが体調不良〟 266 00:19:17,403 --> 00:19:18,443 そうか 267 00:19:22,163 --> 00:19:25,923 途方もない はかなさと もろさを感じる 268 00:19:26,403 --> 00:19:30,683 僕は愛してやまないし これを聴けることは—— 269 00:19:31,683 --> 00:19:35,043 本当に幸せなことだと思う 270 00:19:42,283 --> 00:19:46,723 “作品5〟の数小節を弾いて 彼女はチェロを置き—— 271 00:19:46,843 --> 00:19:49,923 “今日は終わり〟と言った 272 00:19:50,443 --> 00:19:53,163 スタジオ来訪は それきりに 273 00:20:37,883 --> 00:20:42,203 ちょっとした魔法 1964年 274 00:20:42,963 --> 00:20:46,283 ブライアン・エプスタインと 父の関係は良好で—— 275 00:20:46,403 --> 00:20:48,083 2人は—— 276 00:20:48,203 --> 00:20:53,523 確か1964年に52週中 全英1位を36週 獲得してる 277 00:20:53,803 --> 00:20:56,483 二度とない奇跡だ 278 00:20:56,603 --> 00:20:58,363 クレイジーだよ 279 00:21:00,283 --> 00:21:02,283 シラ・ブラックに—— 280 00:21:02,403 --> 00:21:05,283 ジェリー&ペースメイカーズ ビートルズ 281 00:21:06,123 --> 00:21:09,243 全員 エプスタインが担当 父のプロデュースだ 282 00:21:09,443 --> 00:21:10,643 アビイ・ロードで 283 00:21:10,803 --> 00:21:14,323 シラ エプスタイン抜きでも トップになれた? 284 00:21:14,443 --> 00:21:15,643 無理ね 285 00:21:14,443 --> 00:21:20,603 シラ・ブラック 286 00:21:15,763 --> 00:21:16,443 なぜ? 287 00:21:16,563 --> 00:21:19,843 だって私は リヴァプール出身だから 288 00:21:19,963 --> 00:21:24,443 リヴァプール出身だと 誰も見向きしなかった 289 00:21:24,563 --> 00:21:26,763 エプスタインが現れるまではね 290 00:21:26,883 --> 00:21:31,483 リヴァプール出身者は なまりがあって不利なの 291 00:21:32,403 --> 00:21:34,283 よし 始めよう 292 00:21:35,043 --> 00:21:36,203 いいかな 293 00:21:36,323 --> 00:21:37,483 続けて 294 00:21:38,603 --> 00:21:41,883 第1スタジオ 1966年 295 00:21:42,003 --> 00:21:43,963 “アルフィー〟 296 00:21:59,083 --> 00:22:00,083 もう1回 297 00:22:00,203 --> 00:22:01,403 よかったが… 298 00:22:01,523 --> 00:22:02,443 ブライアン 299 00:22:02,563 --> 00:22:03,283 シラ 300 00:22:03,403 --> 00:22:04,323 元気かな? 301 00:22:04,443 --> 00:22:05,083 いいよ 302 00:22:05,203 --> 00:22:06,203 よかった 303 00:22:06,443 --> 00:22:07,803 いい感じだ 304 00:22:07,923 --> 00:22:08,603 ああ 305 00:22:08,723 --> 00:22:11,363 徹夜は勘弁してね 306 00:22:11,483 --> 00:22:12,403 徐々に… 307 00:22:12,523 --> 00:22:13,843 よくなってきた 308 00:22:13,963 --> 00:22:15,163 何がダメなの… 309 00:22:15,283 --> 00:22:17,123 分かるが もっと… 310 00:22:17,243 --> 00:22:21,723 バート・バカラックは 何度もテイクを重ねた 311 00:22:21,843 --> 00:22:24,523 彼なりの こだわりがあった 312 00:22:24,643 --> 00:22:26,563 微調整すれば… 313 00:22:28,443 --> 00:22:31,483 上出来なテイクもあったが—— 314 00:22:31,603 --> 00:22:33,803 15テイクまで続いた 315 00:22:33,923 --> 00:22:37,483 みんな 疲れてきて 楽団もイラつき始めた 316 00:22:38,323 --> 00:22:43,363 そこで私はバートに “何を求めてる?〟と尋ねた 317 00:22:45,523 --> 00:22:48,603 “ちょっとした魔法だよ ジョージ〟と 318 00:22:49,683 --> 00:22:52,683 私は“魔法なら テイク4で起きた〟と 319 00:22:53,163 --> 00:22:56,523 それで決まった テイク4は完ぺきだった 320 00:23:22,123 --> 00:23:24,043 文句なしだ 321 00:23:25,603 --> 00:23:31,083 すべてを変えたレコード 1967年 322 00:23:36,083 --> 00:23:40,843 ビートルズを世に送り出した ブライアンの功績は大きい 323 00:23:40,963 --> 00:23:45,323 だが彼はボーイ・バンドと 見ていた節がある 324 00:23:45,443 --> 00:23:48,443 4人は恐怖を感じ 楽しめなかった 325 00:23:48,563 --> 00:23:51,763 だから別々に活動するか—— 326 00:23:51,883 --> 00:23:55,523 隠れ家に こもるかとなり それがアビイ・ロードだった 327 00:23:55,643 --> 00:23:56,963 ライヴ活動は休止? 328 00:23:57,083 --> 00:23:58,283 不安はない 329 00:23:58,403 --> 00:24:02,763 曲を聴いてもらえないと 僕たちも音を確認できなくて 330 00:24:02,883 --> 00:24:04,803 成長できない 331 00:24:05,163 --> 00:24:08,603 だからレコーディングで 磨きたい 332 00:24:08,963 --> 00:24:10,963 ひどい状況だった 333 00:24:11,283 --> 00:24:13,643 それでレコーディングに—— 334 00:24:13,763 --> 00:24:17,163 時間を たっぷり費やせると 思ったんだ 335 00:24:17,283 --> 00:24:21,283 アビイ・ロードの利点は 自由だったことだ 336 00:24:21,403 --> 00:24:25,363 契約により時間無制限で レコーディングができた 337 00:24:25,483 --> 00:24:26,763 必要ない 338 00:24:27,003 --> 00:24:29,683 また別の日に歌おう 339 00:24:29,803 --> 00:24:33,843 僕らにとっては我が家で 長い時間を過ごした 340 00:24:33,963 --> 00:24:35,683 感じる 感じる… 341 00:24:35,803 --> 00:24:38,963 今後 どう活動するか 話し合った 342 00:24:39,083 --> 00:24:40,723 今は自由だ! 343 00:24:40,923 --> 00:24:44,883 “アルバムを作るべきだ〟と 提案された 344 00:24:45,003 --> 00:24:46,843 “世に送り込もう〟と 345 00:24:47,043 --> 00:24:49,883 それが “サージェント・ペパー〟だ 346 00:24:58,083 --> 00:24:59,603 導入部が—— 347 00:24:58,563 --> 00:25:04,963 詩人 アレン・ギンズバーグ 348 00:24:59,723 --> 00:25:04,003 懐かしい演芸場のような 語り口で面白い 349 00:25:04,123 --> 00:25:05,403 古きよき時代だ 350 00:25:10,243 --> 00:25:14,083 “ウィズ・ア・リトル~〟は 共同目的の表明に感じる 351 00:25:19,363 --> 00:25:21,723 次は創造力の表明だ 352 00:25:21,843 --> 00:25:25,083 “ルーシー・イン・ザ~〟は 重要な要素だ 353 00:25:29,443 --> 00:25:33,123 “サージェント・ペパー〟で ルールが変わった 354 00:25:33,723 --> 00:25:38,643 スタジオが遊び場になり “音〟で色塗りしたんだ 355 00:25:40,363 --> 00:25:41,083 2! 356 00:25:41,203 --> 00:25:42,763 最高の出だしだ 357 00:25:42,883 --> 00:25:45,963 異常者が病院を 占拠したようだった 358 00:25:46,083 --> 00:25:49,443 第2スタジオの上の コントロール・ルームで—— 359 00:25:49,563 --> 00:25:51,723 ミックスしたかと思えば—— 360 00:25:51,843 --> 00:25:55,403 第3スタジオで 別の曲をやってた 361 00:25:55,523 --> 00:25:57,643 建物ごと使いたい放題だ 362 00:25:57,763 --> 00:26:00,563 機材に囲まれてたから—— 363 00:26:00,683 --> 00:26:03,443 “これ いじっていい?〟と 364 00:26:03,803 --> 00:26:05,443 ローリー・オルガンを—— 365 00:26:05,563 --> 00:26:08,803 “ルーシー・イン・ザ~〟で 使ってる 366 00:26:12,323 --> 00:26:15,843 “ミセス・ミルズ〟と 名付けたピアノも… 367 00:26:16,483 --> 00:26:17,363 あれだ! 368 00:26:19,403 --> 00:26:22,043 当時 弾いてみたら—— 369 00:26:22,163 --> 00:26:24,803 “いい音だ!〟と盛り上がった 370 00:26:24,923 --> 00:26:26,963 ロックンロール向きだ 371 00:26:34,283 --> 00:26:39,643 ダニエル・バレンボイムの スタインウェイもあった 372 00:26:42,443 --> 00:26:44,523 何でも そろってた 373 00:26:45,683 --> 00:26:50,603 こういった背景もあって ビートルズの音楽は—— 374 00:26:50,723 --> 00:26:54,643 楽器的な観点から見ても 面白味があったんだ 375 00:26:56,283 --> 00:27:00,363 当時 私は 62歳頃だったから—— 376 00:26:56,643 --> 00:27:03,203 ジョセフ・ロックウッド 377 00:27:01,283 --> 00:27:05,603 “~シックスティ・ フォー〟は愉快だったね 378 00:27:06,803 --> 00:27:10,803 最後の“ア・デイ・イン・ ザ・ライフ〟の詩は秀逸だ 379 00:27:13,163 --> 00:27:16,123 アルバムの中でも 極めて重要な曲だ 380 00:27:16,243 --> 00:27:18,363 出だしはシンプル 381 00:27:18,483 --> 00:27:22,643 リハーサル・テイクを テイク1として録った 382 00:27:22,963 --> 00:27:25,283 ピアノのマイクを下げて 383 00:27:25,403 --> 00:27:27,323 マラカスくらいに 384 00:27:27,443 --> 00:27:28,963 ジョンのカウントは—— 385 00:27:29,083 --> 00:27:31,723 “シュガー プラム フェアリー…〟 386 00:27:31,843 --> 00:27:35,043 シュガー プラム フェアリー… 387 00:27:38,483 --> 00:27:41,603 “ア・デイ・イン・ザ・ライフ〟は ジョンが うちに来て—— 388 00:27:41,723 --> 00:27:43,483 曲作りしてた時—— 389 00:27:43,723 --> 00:27:47,243 彼が新聞を読んでいたんだ 390 00:27:47,403 --> 00:27:52,523 “ギネス家の跡継ぎ事故死 車が大破〟 391 00:27:52,643 --> 00:27:58,003 新聞記事から着想を得て 曲に取り入れた 392 00:27:56,683 --> 00:28:00,243 第1&第2スタジオ 1967年 393 00:28:00,363 --> 00:28:03,283 “ア・デイ・イン・ ザ・ライフ〟 394 00:28:03,443 --> 00:28:07,723 “タラは同乗者を 救うために死亡?〟 395 00:28:04,363 --> 00:28:07,723 非常に複雑な曲に 聴こえるが—— 396 00:28:08,843 --> 00:28:12,643 手法としては 実にシンプルなんだ 397 00:28:12,803 --> 00:28:14,963 この4トラックだけで—— 398 00:28:15,083 --> 00:28:18,323 ウォール・オブ・サウンドを 作り出してる 399 00:28:18,443 --> 00:28:21,123 オーケストラでさえ 1トラックだ 400 00:28:21,483 --> 00:28:24,803 4つの“音〟が 1つになっている 401 00:28:28,523 --> 00:28:32,963 ここでジョンが歌うが あとから彼がオーバーダブした 402 00:28:35,203 --> 00:28:37,763 彼のボーカルの マスター・テイクだ 403 00:28:37,883 --> 00:28:40,363 サウンドが すばらしい 404 00:28:41,923 --> 00:28:43,483 この曲の肝だ 405 00:29:05,403 --> 00:29:08,403 あとから僕が追加したのが—— 406 00:29:08,643 --> 00:29:11,883 “目が覚めて ベッドから転げ落ちた〟 407 00:29:17,203 --> 00:29:20,283 現実に戻ったように ポールが歌う 408 00:29:20,403 --> 00:29:24,883 歌が うまくつながらず 空白があった 409 00:29:26,003 --> 00:29:28,803 どう締めくくるかも未定だった 410 00:29:28,923 --> 00:29:31,243 あれこれ考えて僕が—— 411 00:29:31,363 --> 00:29:34,563 “オーケストラを入れたら よくなる〟 412 00:29:34,683 --> 00:29:36,403 “アイデアがある〟と 413 00:29:38,603 --> 00:29:39,883 ポールは父に—— 414 00:29:40,003 --> 00:29:43,363 “音楽的なオーガズム〟を 聴きたいと言った 415 00:29:43,483 --> 00:29:45,043 父は“いいよ ポール〟 416 00:29:45,363 --> 00:29:48,563 このスタジオが 優れていたのは—— 417 00:29:48,683 --> 00:29:51,803 必要なツ•ー•ル•が そろっていたことだ 418 00:29:51,923 --> 00:29:54,923 ジョージ・マーティンに 第1スタジオ 419 00:29:55,963 --> 00:29:59,163 だから大いに活用した 420 00:29:59,803 --> 00:30:04,763 “ア・デイ・イン・ザ・ライフ〟で オーケストラを迎えた 421 00:30:04,883 --> 00:30:10,043 オーケストラに出した指示は それぞれが最低音から始め—— 422 00:30:10,283 --> 00:30:13,843 各楽器が 最高音に達するまで—— 423 00:30:13,963 --> 00:30:16,563 徐々に上げていくというものだ 424 00:30:16,683 --> 00:30:20,403 ギリギリまで 音を落として演奏し—— 425 00:30:20,523 --> 00:30:23,123 完ぺきなタイミングで 合わせる 426 00:30:23,443 --> 00:30:25,563 楽団員は僕を見て—— 427 00:30:25,683 --> 00:30:28,843 “普段 そんな指示されない〟 という顔だった 428 00:30:28,963 --> 00:30:32,123 ジョージ・マーティンが 具体的に説明した 429 00:30:32,243 --> 00:30:37,123 “この辺までは 半分くらいの音で——〟 430 00:30:37,243 --> 00:30:40,563 “そこから 迫力あるクレッシェンド〟と 431 00:30:47,643 --> 00:30:49,963 6 7… 432 00:30:50,643 --> 00:30:57,123 8 9 10 11 12… 433 00:30:57,843 --> 00:31:04,403 13 14 15 16 17… 434 00:31:05,003 --> 00:31:09,883 18 19 20 21… 435 00:31:14,483 --> 00:31:18,523 “ア・デイ・イン・ザ・ライフ〟 テイク8 最後のハミング 436 00:31:18,643 --> 00:31:19,843 ハミング? 437 00:31:19,963 --> 00:31:23,203 当初はハミングを 入れるつもりだった 438 00:31:23,563 --> 00:31:25,883 全員でハミングする 439 00:31:26,043 --> 00:31:28,843 音は? ダブルチェックする? 440 00:31:31,563 --> 00:31:34,923 これほど極端に 音が落ちる例もない 441 00:31:35,043 --> 00:31:38,043 大迫力の クレッシェンドの後… 442 00:31:43,083 --> 00:31:44,523 結局—— 443 00:31:44,643 --> 00:31:48,363 グランドピアノが 4台あったから… 444 00:31:48,483 --> 00:31:49,643 あれかな 445 00:31:50,563 --> 00:31:53,643 全員でカウントに合わせ… 446 00:32:01,523 --> 00:32:02,323 よし 447 00:32:02,443 --> 00:32:04,483 よかったよ ありがとう 448 00:32:04,603 --> 00:32:07,883 バック・ボーカルと合うと思う 449 00:32:08,003 --> 00:32:11,563 時代的に あの頃は 特別だったと思う 450 00:32:09,003 --> 00:32:15,203 声…ジョージ・ハリスン 451 00:32:11,683 --> 00:32:16,763 エネルギーと意識が 一気に高まっていた 452 00:32:18,563 --> 00:32:21,683 ミ•ニ•・ルネサンスのようだった 453 00:32:24,163 --> 00:32:29,923 僕らのように戦時中に 生まれた者たちは—— 454 00:32:30,043 --> 00:32:32,643 記憶が白黒だった 455 00:32:32,923 --> 00:32:37,443 だが徐々に世の中は進化し 60年代までには—— 456 00:32:37,803 --> 00:32:40,723 カラーになった 何もかもが… 457 00:32:45,763 --> 00:32:52,363 第1スタジオ 1967年 “愛こそはすべて〟 458 00:32:47,923 --> 00:32:52,363 ロンドンも 活気にあふれていて 459 00:32:52,483 --> 00:32:56,723 アーティスト 小説家 詩人 画家がいた “アワ・ワールド〟 世界同時中継 460 00:32:57,243 --> 00:33:01,603 アルバム・ジャケットを 作りたければ—— 461 00:33:01,723 --> 00:33:05,083 ピーター・ブレイク リチャード・ハミルトンがいた 462 00:33:05,203 --> 00:33:06,923 ピーターは奥さんと—— 463 00:33:07,043 --> 00:33:10,283 “サージェント・ペパー〟を 手がけてくれた 464 00:33:17,323 --> 00:33:21,603 60年代後半は エキサイティングだった 465 00:33:19,003 --> 00:33:22,003 “ミリー 帰ってきて!〟 466 00:33:21,763 --> 00:33:26,043 音楽もロンドンも 何でもエキサイティングだった 467 00:33:28,443 --> 00:33:31,883 あの時代に立ち会えたことは 幸せだ 468 00:33:32,003 --> 00:33:34,723 ああいう時代は もう来ない 469 00:33:36,203 --> 00:33:39,163 ちょうど僕の旅も始まった頃だ 470 00:33:39,283 --> 00:33:42,283 3年間 ブルーソロジーと 旅回りし—— 471 00:33:42,603 --> 00:33:46,203 嫌気が差していて 曲を書きたかった 472 00:33:46,323 --> 00:33:50,883 “エルトン・ジョン〟になると 想像もしてなかったが—— 473 00:33:51,003 --> 00:33:52,883 セッションを始めた 474 00:33:54,123 --> 00:33:56,563 “兄弟の誓い〟 テイク1 475 00:33:56,683 --> 00:33:57,843 録ってくれ 476 00:33:57,963 --> 00:33:59,803 ここでセッションした 477 00:34:01,083 --> 00:34:05,083 恐怖の匂い 1968年 478 00:34:17,723 --> 00:34:20,803 レジー・ドワイトは ソングライターで—— 479 00:34:20,923 --> 00:34:24,603 “兄弟の誓い〟で ピアノを担当した 480 00:34:23,763 --> 00:34:30,323 トニー・ヒックス 481 00:34:24,723 --> 00:34:27,803 セッション・ ミュージシャンとしてね 482 00:34:27,923 --> 00:34:31,363 ギャラは12ポンドほどで 今なら高額だね 483 00:34:31,483 --> 00:34:34,003 “ホリーズ〟 484 00:34:32,323 --> 00:34:34,803 いや タダかもしれない 485 00:34:37,443 --> 00:34:42,003 レジーのピアノは階段付近で 僕のドラムと近かった 486 00:34:42,123 --> 00:34:45,043 調律を考慮し ピアノを動かさず—— 487 00:34:45,163 --> 00:34:47,403 ドラムをエルトンの横に 488 00:34:47,523 --> 00:34:50,003 バーニー・カルヴァートが ベース 489 00:34:47,523 --> 00:34:54,043 ボビー・エリオット 490 00:34:50,123 --> 00:34:51,363 これが基本だ 491 00:34:51,483 --> 00:34:54,043 クラーキーはボーカルも 492 00:34:54,163 --> 00:34:57,443 エルトンがカウントした テープにも残ってる 493 00:34:58,123 --> 00:35:02,003 第2スタジオ 1969年 494 00:35:02,123 --> 00:35:04,723 “兄弟の誓い〟 495 00:35:04,283 --> 00:35:08,283 レコードを聴くと 僕のピアノだと分かる 496 00:35:19,803 --> 00:35:20,883 幸運だった 497 00:35:21,243 --> 00:35:26,763 ピアノが弾けることが広まり “レジー〟の需要が高まった 498 00:35:29,563 --> 00:35:34,403 ディック・ジェイムズ・ ミュージックで楽曲も提供した 499 00:35:35,003 --> 00:35:36,203 週15ポンドで 500 00:35:36,323 --> 00:35:39,163 セッション・ミュージシャンの 報酬で—— 501 00:35:39,283 --> 00:35:41,723 好きなレコードを買えた 502 00:35:41,843 --> 00:35:44,963 実入りが多い時は 服代や家賃にあてた 503 00:35:45,083 --> 00:35:48,763 “ピアニスト レジー・ドワイト〟 504 00:35:48,883 --> 00:35:52,763 アビイ・ロードの匂いも 思い出の1つだ 505 00:35:53,603 --> 00:35:55,483 恐怖の匂いだが 506 00:35:56,723 --> 00:35:58,523 “失敗したら?〟と 507 00:36:02,603 --> 00:36:06,043 ここが僕を ミュージシャンにしてくれた 508 00:36:06,163 --> 00:36:10,123 3時間で 力を発揮しないとならない 509 00:36:11,603 --> 00:36:14,883 バロン・ナイツのセッションで 弾いてた頃—— 510 00:36:15,003 --> 00:36:17,043 “ヘイ・ジュード〟が 発売された 511 00:36:17,163 --> 00:36:19,963 バーニーと立っていたら… 512 00:36:20,123 --> 00:36:23,083 君の父上が来て 挨拶を交わした 513 00:36:23,203 --> 00:36:26,683 あんな有名な人を見たのは 人生初だった 514 00:36:27,003 --> 00:36:30,003 僕もバーニーもガチガチで—— 515 00:36:30,123 --> 00:36:35,163 バロン・ナイツがポールに “ヘイ・ジュード〟を頼んだ 516 00:36:35,283 --> 00:36:40,163 “発売時に 生で聴けるなんて〟と感激した 517 00:36:54,443 --> 00:36:55,723 想像できる? 518 00:36:56,203 --> 00:36:59,643 このミドルセックス出身の 若造は“ウソだろ!〟と 519 00:36:59,763 --> 00:37:03,523 とにかく度肝を抜かれて 圧倒された 520 00:37:04,483 --> 00:37:07,003 第2スタジオ 1968年 521 00:37:07,123 --> 00:37:10,803 “ヘイ・ジュード〟 リハーサル 522 00:37:12,843 --> 00:37:17,243 すごい秘話だろ? 今でもバーニーと話す 523 00:37:17,963 --> 00:37:20,523 夢のようだった 524 00:37:20,683 --> 00:37:24,643 君の父上からもらった喜びは 計り知れない 525 00:37:24,763 --> 00:37:29,203 それほど意味があったと 彼が知ってくれたら光栄だ 526 00:37:38,203 --> 00:37:42,203 ショービジネスは 冷酷な世界 1964年 527 00:37:44,483 --> 00:37:46,363 僕は元々—— 528 00:37:47,243 --> 00:37:49,603 スタジオ・ミュージシャンだ 529 00:37:50,043 --> 00:37:53,003 アビイ・ロードに来たのは 17歳頃だ 530 00:37:50,323 --> 00:37:56,803 ジミー・ペイジ 531 00:37:53,123 --> 00:37:55,123 17 18 19 20… 532 00:37:55,643 --> 00:37:57,483 もっと続いたかな 533 00:37:57,603 --> 00:37:59,723 セッション・ギタリストとは? 534 00:37:59,843 --> 00:38:04,523 レコードの制作時に 呼ばれるギタリストだ 535 00:38:04,643 --> 00:38:08,443 ヒットしてほしいけど ギャラは変わらない 536 00:38:08,643 --> 00:38:10,683 なぜセッション・ ギタリストに? 537 00:38:10,803 --> 00:38:13,003 さあ センスがあるのかな 538 00:38:13,123 --> 00:38:14,603 知ってのとおり—— 539 00:38:14,723 --> 00:38:19,243 僕はエレキ・ギタリストだが アコースティックも弾く 540 00:38:19,363 --> 00:38:24,483 ハーモニカも吹けたから セッションに呼ばれた 541 00:38:24,603 --> 00:38:27,123 ブルースハープをね 542 00:38:27,243 --> 00:38:31,043 フォーク・スタイルの ギターも弾いた 543 00:38:31,163 --> 00:38:34,043 当時は大流行だったからね 544 00:38:34,163 --> 00:38:37,563 その後 エレキや スライド・ギターなども 545 00:38:37,683 --> 00:38:41,403 ショービズ界のビッグネームと 組んだ感想は? 546 00:38:41,523 --> 00:38:42,643 ガッカリだ 547 00:38:42,763 --> 00:38:43,963 なぜです? 548 00:38:44,083 --> 00:38:47,683 期待してたほど うまくなかった 549 00:38:48,123 --> 00:38:50,443 だから何となくガッカリ 550 00:38:50,883 --> 00:38:54,123 ファンには 悪いニュースですね 551 00:38:54,803 --> 00:39:00,003 大きな第1スタジオでは 映画音楽も録音した 552 00:39:00,123 --> 00:39:02,163 “007/ ゴールドフィンガー〟で—— 553 00:39:02,283 --> 00:39:06,083 シャーリー・バッシーの セッションに参加した 554 00:39:06,203 --> 00:39:09,123 “ゴールドフィンガー〟 555 00:39:09,243 --> 00:39:12,043 “シャーリー・バッシー〟 556 00:39:12,323 --> 00:39:14,243 “1960年2月8日〟 557 00:39:14,683 --> 00:39:17,043 “ヴァイオリン…〟 558 00:39:17,483 --> 00:39:18,883 ごめんなさい 559 00:39:20,363 --> 00:39:22,403 テイク11 オーバーダブで 560 00:39:22,523 --> 00:39:25,043 ジョン・バリーが指揮した 561 00:39:27,043 --> 00:39:33,443 第1スタジオ 1964年 “ゴールドフィンガー〟 562 00:39:37,803 --> 00:39:41,523 いざ始まると 背筋がゾクゾクしたよ 563 00:39:41,923 --> 00:39:44,563 とにかく合わせて弾いてた 564 00:39:51,683 --> 00:39:54,043 スタジオに大画面があった 565 00:39:54,763 --> 00:40:01,203 シャーリー・バッシー 566 00:39:55,003 --> 00:39:59,643 “ゴールドフィンガー〟を 歌う時は—— 567 00:39:59,763 --> 00:40:03,563 映画のエンドロールに 合わせるの 568 00:40:13,723 --> 00:40:18,283 僕は彼女の近くにいて ほぼ最前列だった 569 00:40:18,403 --> 00:40:21,323 後ろにはオーケストラがいた 570 00:40:21,523 --> 00:40:22,763 テイク15 571 00:40:22,883 --> 00:40:26,483 テイク終わりまで 彼女のパワフルな声が響き—— 572 00:40:26,603 --> 00:40:28,803 最後の1音まで聞き取れた 573 00:40:31,763 --> 00:40:33,083 エンドロールが—— 574 00:40:33,203 --> 00:40:36,483 なかなか終わらなくて 声を張りっぱなし 575 00:40:36,843 --> 00:40:38,483 永遠に思えた 576 00:40:47,283 --> 00:40:49,083 エンドロールがグルグル… 577 00:40:49,203 --> 00:40:51,163 “終わり!〟と言われ… 578 00:40:53,123 --> 00:40:55,163 彼女は倒れ込んだ 579 00:40:55,283 --> 00:40:58,403 圧巻でドラマチックだった 580 00:40:58,643 --> 00:41:01,963 振りを付けて歌うから なおさらだ 581 00:41:02,083 --> 00:41:05,923 あの光景は 一生 忘れられない 582 00:41:06,163 --> 00:41:10,803 水をくれて私の手も パタパタ たたいてくれた 583 00:41:10,923 --> 00:41:12,763 冷たい水でね 584 00:41:13,403 --> 00:41:16,563 ショービジネスは 冷酷な世界よ 585 00:41:17,763 --> 00:41:20,323 でも世界で成功したわ! 586 00:41:21,723 --> 00:41:24,963 バンドよ もう一度 1968年 587 00:41:25,523 --> 00:41:28,643 エプスタインなしで ここまで来られた? 588 00:41:28,763 --> 00:41:29,963 分からない 589 00:41:30,323 --> 00:41:34,243 マハリシと話をしたと 思いますが—— 590 00:41:34,363 --> 00:41:37,283 何か助言はありましたか? 591 00:41:37,883 --> 00:41:42,883 悲しみに打ちのめされては いけないと言われた 592 00:41:43,003 --> 00:41:47,603 ブライアンを想う気持ちは 彼の元まで旅して届くと 593 00:41:47,723 --> 00:41:50,203 彼が どこにいようとね 594 00:41:50,323 --> 00:41:53,083 “エプスタイン 死去〟 595 00:41:51,803 --> 00:41:57,083 彼の死は“ザ・ビートルズ〟に 決定的な変化をもたらした 596 00:41:53,203 --> 00:41:57,483 “ビートルズをポップの プリンスに 享年32歳〟 597 00:41:57,683 --> 00:42:01,603 彼がいたから 地に足をつけていられた 598 00:42:01,723 --> 00:42:04,323 有名になる前からの仲だ 599 00:42:04,443 --> 00:42:09,283 元々 どんな若者だったか 知ってる人間が必要なんだ 600 00:42:09,923 --> 00:42:11,083 その彼を失った 601 00:42:12,323 --> 00:42:15,843 大げさに言っても足りないほど 衝撃を与えた 602 00:42:16,723 --> 00:42:20,123 “どうすればいい?〟と 全員が思った 603 00:42:21,403 --> 00:42:25,323 自分の人生から 誰かが去ってしまうと—— 604 00:42:25,443 --> 00:42:28,723 悲しみに暮れる日々が続く 605 00:42:28,843 --> 00:42:34,083 その時期を乗り越えると “これをやろう〟と思えてくる 606 00:42:34,203 --> 00:42:38,683 “いいレコードを作り 前に進むんだ〟と 607 00:42:43,123 --> 00:42:45,683 どっちの声がいい? 608 00:42:45,923 --> 00:42:47,443 静かなほう 609 00:42:47,563 --> 00:42:48,643 私も 610 00:42:49,803 --> 00:42:51,243 少し悲しい 611 00:42:52,043 --> 00:42:54,803 これと似たギターを持ってた 612 00:42:54,923 --> 00:42:58,763 そのギターで曲を書いたんだ 613 00:42:58,883 --> 00:43:03,643 当時はスタッフが 床に布を敷いたから—— 614 00:43:03,763 --> 00:43:06,203 足のリズムは響かなかった 615 00:43:06,323 --> 00:43:08,203 だがレコードには—— 616 00:43:08,763 --> 00:43:11,483 この足の音が入ってる 617 00:43:16,363 --> 00:43:20,363 第2スタジオ 1968年 618 00:43:20,483 --> 00:43:22,883 “ブラックバード〟 619 00:44:02,363 --> 00:44:04,243 今のは ちょっと… 620 00:44:04,763 --> 00:44:06,563 フォーマットを忘れた 621 00:44:06,683 --> 00:44:08,483 “ビーブ・ダニエルズ〟 テイク1 622 00:44:08,603 --> 00:44:11,843 “ホワイト・アルバム〟は 大好きだった 623 00:44:11,963 --> 00:44:16,483 誰も口にしなかったが またバンドでやりたかった 624 00:44:16,603 --> 00:44:19,443 一番 好きな曲は “ヤー・ブルース〟だ 625 00:44:19,563 --> 00:44:23,243 収録の時は 全部 部屋に持ち込んで… 626 00:44:25,323 --> 00:44:27,163 この敷物より狭かった 627 00:44:30,083 --> 00:44:34,003 アビイ・ロード 倉庫 1968年 628 00:44:34,123 --> 00:44:36,483 “ヤー・ブルース〟 629 00:44:40,163 --> 00:44:41,963 最高に盛り上がった 630 00:44:42,643 --> 00:44:46,963 信じられないほど 親密なバンドに変わった 631 00:44:57,603 --> 00:45:00,403 懐かしい思い出の1つだ 632 00:45:01,603 --> 00:45:03,643 アビイ・ロード 1969年 633 00:45:05,323 --> 00:45:09,203 “アビイ・ロード〟が 作られることはないと思ってた 634 00:45:09,323 --> 00:45:10,963 それ以前に—— 635 00:45:11,083 --> 00:45:13,883 “レット・イット・ビー〟を 録っていたからだ 636 00:45:15,003 --> 00:45:16,843 不運なアルバムだ 637 00:45:16,963 --> 00:45:20,043 私は統制力を失い 意見も通らず—— 638 00:45:20,163 --> 00:45:22,523 さすがに気落ちした 639 00:45:22,643 --> 00:45:26,283 “レット・イット・ビー〟で 彼らはバラバラになり—— 640 00:45:26,403 --> 00:45:28,683 作品も放置された 641 00:45:29,443 --> 00:45:32,363 ポールが父に電話で—— 642 00:45:32,483 --> 00:45:35,483 “前みたいに レコードを作りたい〟 643 00:45:35,603 --> 00:45:37,523 “最後のアルバムになる〟と 644 00:45:37,763 --> 00:45:41,043 彼は“やるなら本気でやろう〟 645 00:45:41,163 --> 00:45:43,123 “スタジオに来るなら——〟 646 00:45:43,243 --> 00:45:47,003 “以前のようにアルバムを作る きちんとな〟と 647 00:45:47,643 --> 00:45:52,563 それで僕は曲を書き メンバーに電話した 648 00:45:52,923 --> 00:45:56,083 こんな感じだ “リンゴ 元気か?〟 649 00:45:56,203 --> 00:45:59,083 ポールからだと分かってた 650 00:45:59,923 --> 00:46:02,403 ポールは“調子はどうだ?〟 651 00:46:02,683 --> 00:46:05,883 “新しいアルバムを 作らないか?〟 652 00:46:06,243 --> 00:46:07,923 “スタジオに戻れって?〟 653 00:46:09,403 --> 00:46:11,683 彼らは日光浴を楽しんでた 654 00:46:11,803 --> 00:46:13,363 彼なしじゃ—— 655 00:46:13,483 --> 00:46:16,523 アルバム3枚で終わってたね 656 00:46:17,963 --> 00:46:23,723 ここに戻って作ったアルバムが “アビイ・ロード〟だ 657 00:46:29,003 --> 00:46:35,203 第2スタジオ 1969年 “サムシング〟 658 00:46:50,603 --> 00:46:56,243 コントロール・ルームで アルバムのミックスを始め—— 659 00:46:56,363 --> 00:46:58,283 タイトルを考えた 660 00:46:58,403 --> 00:47:01,523 “アビイ・ロード〟と 名付ける気はなかった 661 00:47:01,643 --> 00:47:04,403 エジプトのピラミッドか—— 662 00:47:04,523 --> 00:47:08,003 ハワイの火山に行こうと 話してた 663 00:47:08,123 --> 00:47:11,243 僕らは いつも デカい話をしてた 664 00:47:11,843 --> 00:47:15,043 “もういい 道路でも渡るか〟と 665 00:47:15,163 --> 00:47:19,523 第3スタジオ 1969年 666 00:47:19,643 --> 00:47:21,563 “ジ・エンド〟 667 00:47:31,243 --> 00:47:35,203 横断歩道を渡る4人の 絵を描いた 668 00:47:35,563 --> 00:47:39,603 今は観光客がいて 車は足止めを食う 669 00:47:48,403 --> 00:47:52,283 スタッフはEMIスタジオを “アビイ・ロード〟と呼びます 670 00:47:50,603 --> 00:47:53,963 “EMIレコーディング・ スタジオ〟 671 00:47:52,403 --> 00:47:56,323 このアルバムの発売後に ケン・タウンゼンドが—— 672 00:47:54,083 --> 00:47:59,443 “アビイ・ロード・ スタジオ〟 673 00:47:56,443 --> 00:47:59,443 正式に名称を変えました 674 00:48:01,803 --> 00:48:05,323 ケンはアビイ・ロードに 人生の大半を捧げました 675 00:48:05,443 --> 00:48:08,563 エンジニアの見習いで 1950年に入社 676 00:48:08,683 --> 00:48:13,803 最終的には代表を務め 1995年に退任しました 677 00:48:14,683 --> 00:48:18,043 アビイ・ロードは 私には家族同然です 678 00:48:18,163 --> 00:48:19,923 多くのスタッフが—— 679 00:48:20,043 --> 00:48:23,803 ここで腕を磨き 成長していくからでしょう 680 00:48:24,763 --> 00:48:28,923 スタジオの技術者は 時を選ばず一流ぞろいです 681 00:48:29,363 --> 00:48:32,123 彼らの技術革新のおかげで—— 682 00:48:32,243 --> 00:48:35,523 今もなお 高い評価を得ているのです 683 00:48:36,683 --> 00:48:39,283 オタク級の天才科学者で—— 684 00:48:39,403 --> 00:48:42,483 その分野のアーティストだ 685 00:48:43,003 --> 00:48:48,123 僕たちが難題を突きつけると 腕が鳴ったはずだ 686 00:48:48,563 --> 00:48:50,883 “やったことはないが——〟 687 00:48:51,003 --> 00:48:53,563 “こうすれば可能かも!〟と 688 00:48:53,683 --> 00:48:57,883 天才科学者だから 暗号機でも いじるさ 689 00:49:01,003 --> 00:49:04,403 問題が起きると “レスターに聞け〟と 690 00:49:05,923 --> 00:49:11,483 バッテリーやナットなど 部品が必要な時も—— 691 00:49:06,763 --> 00:49:13,163 技術者 レスター・スミス 692 00:49:11,603 --> 00:49:13,883 “レスターなら 持ってる〟と 693 00:49:14,443 --> 00:49:16,483 何の作業中? レスター 694 00:49:17,363 --> 00:49:23,443 60年代のマイクロフォンが 落とされて壊れたから—— 695 00:49:23,563 --> 00:49:25,883 接着してるところだ 696 00:49:26,003 --> 00:49:27,643 誰が落としたの? 697 00:49:27,763 --> 00:49:29,883 誰も白状しない 698 00:49:30,883 --> 00:49:33,483 最高の機材がそろってる 699 00:49:33,603 --> 00:49:36,843 “サージェント・ペパー〟や “狂気〟が—— 700 00:49:36,963 --> 00:49:40,403 名盤と言われ続けるのは 高度な技術で—— 701 00:49:40,523 --> 00:49:42,963 古臭く聴こえないからだ 702 00:49:48,083 --> 00:49:52,243 アス・アンド・ゼム 1967年 703 00:49:52,683 --> 00:49:55,243 第3スタジオ 1967年 704 00:49:55,363 --> 00:49:57,563 “星空のドライブ〟 705 00:49:59,083 --> 00:50:02,883 シドがバンド名を “ザ・ティー・セット〟と付けた 706 00:50:03,523 --> 00:50:07,563 だがギグで その名前は ダメだと言われた 707 00:50:05,883 --> 00:50:10,603 ロジャー・ ウォーターズ 708 00:50:07,683 --> 00:50:10,603 “同じ名前のバンドが すでにいる〟と 709 00:50:12,363 --> 00:50:16,083 それでシドが “ピンク・フロイド〟を考えた 710 00:50:25,203 --> 00:50:28,203 EMIと契約を結び—— 711 00:50:28,803 --> 00:50:31,963 アビイ・ロードにやって来た 712 00:50:32,083 --> 00:50:36,443 第3スタジオだったから ちょうど ここだ 713 00:50:33,003 --> 00:50:36,443 ニック・メイスン 714 00:50:37,883 --> 00:50:40,683 ビートルズは 第2スタジオにいた 715 00:50:41,483 --> 00:50:44,523 “謁見えっけんを賜る〟とまで 言わないが—— 716 00:50:44,643 --> 00:50:47,923 ビートルズの見学を 許されていた 717 00:50:48,643 --> 00:50:53,523 こっちは新人の若造で 向こうは監督生という感じだ 718 00:50:56,843 --> 00:51:00,723 今 振り返っても あの状況は貴重な歴史だ 719 00:51:00,843 --> 00:51:04,083 “サージェント・ペパー〟を 彼らが録ってて—— 720 00:51:04,203 --> 00:51:06,283 僕らはデビュー・アルバムだ 721 00:51:08,683 --> 00:51:10,683 アルバム発売後—— 722 00:51:11,803 --> 00:51:16,483 ギグで北部まで ゼファー・シックスで行った 723 00:51:17,043 --> 00:51:20,643 ジューン・チャイルドが 運転してくれて—— 724 00:51:20,763 --> 00:51:23,443 途中 駐車スペースで休んだ 725 00:51:23,563 --> 00:51:26,763 そこで車を停めて 聴いたのが—— 726 00:51:27,323 --> 00:51:29,603 “サージェント・ペパー〟で… 727 00:51:30,363 --> 00:51:31,643 “マジかよ〟と 728 00:51:32,003 --> 00:51:36,923 最高傑作だ 当時も今も変わらない 729 00:51:38,123 --> 00:51:40,563 あのアルバムによって—— 730 00:51:41,163 --> 00:51:45,043 イギリスの若い男女が 解放されたと思う 731 00:51:45,163 --> 00:51:49,043 身近なことを 曲にしていいんだと感じ—— 732 00:51:49,163 --> 00:51:51,563 自分の感情を—— 733 00:51:51,963 --> 00:51:55,643 受け入れる勇気を もらったはずだ 734 00:52:06,763 --> 00:52:09,763 ピンク・フロイドの メンバーになったのは—— 735 00:52:09,883 --> 00:52:13,243 前任者で友人の シド・バレットが—— 736 00:52:13,363 --> 00:52:17,923 精神不安定に陥ったからだが 細かい話は伏せよう 737 00:52:20,883 --> 00:52:23,443 彼のバンドだったとも言える 738 00:52:23,563 --> 00:52:27,363 創設メンバーではないが 多才だった 739 00:52:24,283 --> 00:52:29,323 デヴィッド・ ギルモア 740 00:52:27,483 --> 00:52:32,683 詩人であり 画家であり 才能あふれる男だった 741 00:52:32,803 --> 00:52:37,803 他のメンバーより少し年下で 活動期間も短かったが—— 742 00:52:38,443 --> 00:52:40,923 リーダー的な存在だった 743 00:52:44,803 --> 00:52:49,083 見る見るうちに 彼の心は不調をきたし—— 744 00:52:49,523 --> 00:52:54,123 完全に病んでしまい 回復しなかった 745 00:52:54,803 --> 00:52:56,483 あのことは… 746 00:52:57,843 --> 00:53:01,843 あまりにショッキングで 今でも引きずってる 747 00:53:19,523 --> 00:53:23,243 アビイ・ロードの すばらしかった点は—— 748 00:53:23,363 --> 00:53:28,163 1枚目を録った時のスタッフが そのまま残っていたことだ 749 00:53:28,283 --> 00:53:30,323 “狂気〟を録ったのは—— 750 00:53:31,243 --> 00:53:35,043 1枚目から 約6年後だったがね 751 00:53:37,603 --> 00:53:40,003 “ルナティック〟 752 00:53:42,483 --> 00:53:45,323 “虚空のスキャット〟 753 00:53:46,683 --> 00:53:49,523 “アス・アンド・ゼム〟 754 00:53:49,803 --> 00:53:51,843 あらゆる点で優れてる 755 00:53:51,963 --> 00:53:53,603 歌詞も見事だ 756 00:53:53,723 --> 00:53:57,283 ロジャーのコンセプトと 歌詞が… 757 00:53:57,923 --> 00:54:02,763 彼の才能が さらに広がったように思える 758 00:54:02,923 --> 00:54:06,083 そういう すべての要素が—— 759 00:54:06,963 --> 00:54:11,763 しっかり結びついて 質の高い作品が生まれた 760 00:54:16,443 --> 00:54:17,603 苦闘もあった 761 00:54:17,723 --> 00:54:18,723 フィードバックが… 762 00:54:18,843 --> 00:54:19,963 だが それが… 763 00:54:20,083 --> 00:54:21,523 心配ない 764 00:54:21,763 --> 00:54:25,283 曲に面白味を与え 功を奏した 765 00:54:25,563 --> 00:54:26,603 いいよ 766 00:54:27,283 --> 00:54:29,483 フィードバックなしでロック? 767 00:54:33,883 --> 00:54:38,203 こうして振り返ると 懐かしさも こみ上げてくる 768 00:54:38,483 --> 00:54:41,003 “醜いケンカをしたな〟と 769 00:54:41,123 --> 00:54:44,123 だが翌日もケンカを繰り返す 770 00:54:44,243 --> 00:54:48,283 最高の曲を目指しすぎて モメたり—— 771 00:54:48,403 --> 00:54:51,323 意見が食い違ったりした 772 00:54:51,443 --> 00:54:53,483 パイとクリームを取って 773 00:54:53,603 --> 00:54:55,923 あの時は酔ってた 774 00:54:57,243 --> 00:55:00,683 デイヴは いつも小声で話した 775 00:55:00,803 --> 00:55:03,683 だから“もっと声を出せ!〟と 776 00:55:03,803 --> 00:55:06,443 “聞こえなきゃ意味ない〟とか 777 00:55:06,563 --> 00:55:08,923 ギャーギャー言い合ってた 778 00:55:12,483 --> 00:55:15,563 まだ若くて傲慢で—— 779 00:55:15,683 --> 00:55:20,643 自分たちでやれると思って 忠告の半分は無視した 780 00:55:23,243 --> 00:55:24,163 それだ 781 00:55:24,283 --> 00:55:30,403 自分を信じて突き進めばいい 傲慢と言われようがね 782 00:55:35,843 --> 00:55:38,243 納得のいくアルバムになった 783 00:55:38,363 --> 00:55:41,283 こだわり抜いた一作だ 784 00:55:41,403 --> 00:55:46,283 リックが作った “虚空のスキャット〟は最高だ 785 00:55:46,403 --> 00:55:48,723 “アス・アンド・ゼム〟も 786 00:55:50,163 --> 00:55:51,403 名曲だ 787 00:55:51,523 --> 00:55:56,163 リックと組めたことは これ以上ない幸せだ 788 00:55:56,283 --> 00:55:59,043 特別な才能の持ち主だった 789 00:56:02,083 --> 00:56:05,483 第2スタジオ 1973年 790 00:56:05,603 --> 00:56:08,483 “アス・アンド・ゼム〟 791 00:56:07,923 --> 00:56:12,163 アルバムを作る時は 別録りで進める 792 00:56:12,603 --> 00:56:18,883 だから完成するまでは 全体像が分からない 793 00:56:21,123 --> 00:56:25,683 “再生〟を押して アルバム全曲を聴いたら… 794 00:56:27,003 --> 00:56:30,363 魔法が起きたとしか 思えなかった 795 00:56:30,483 --> 00:56:33,963 それまで聴いた中で 最高だった 796 00:56:34,363 --> 00:56:36,963 アルバムを自宅に持ち帰り—— 797 00:56:37,083 --> 00:56:40,323 最初の妻 ジュディに聴かせた 798 00:56:41,243 --> 00:56:43,043 聴き終わって—— 799 00:56:44,403 --> 00:56:48,283 妻に“感想は?〟と聞くと 泣いていた 800 00:56:48,923 --> 00:56:52,283 今も感極まってるが あの時 心の中で—— 801 00:56:52,403 --> 00:56:55,243 “成功だ 見ろよ〟と 802 00:56:56,683 --> 00:56:58,883 特別なアルバムだ 803 00:57:06,323 --> 00:57:10,203 第2スタジオ 1973年 804 00:57:08,603 --> 00:57:10,203 あのアルバムで—— 805 00:57:10,323 --> 00:57:13,923 ピンク・フロイドとして 快挙を成し遂げた 806 00:57:10,323 --> 00:57:12,883 “狂気日食〟 807 00:57:14,163 --> 00:57:16,883 “やり切った〟と やめてもよかった 808 00:57:17,003 --> 00:57:18,603 ビートルズみたいに 809 00:57:18,723 --> 00:57:21,763 だが怖くてできなかった 810 00:57:21,883 --> 00:57:25,803 メンバーと もがき苦しんで よかったと思う 811 00:57:26,043 --> 00:57:28,883 あの後も いいアルバムを作った 812 00:57:29,003 --> 00:57:31,683 “炎~ あなたが ここにいてほしい〟 813 00:57:31,803 --> 00:57:35,443 “アニマルズ〟“ザ・ウォール〟 “ファイナル・カット〟の4作だ 814 00:57:35,563 --> 00:57:41,003 どのアルバムも傑作だし 満足のいく出来だ 815 00:57:50,723 --> 00:57:52,163 そうだな… 816 00:57:52,563 --> 00:57:57,443 これほどの幸運に 恵まれたことは大きな喜びだ 817 00:57:57,563 --> 00:58:03,083 世界中の音楽リスナーの 心をつかむことができたんだ 818 00:58:03,283 --> 00:58:06,163 心の奥底まで こんなに長い間ね 819 00:58:06,283 --> 00:58:12,323 あのアルバムが世に出てから 約50年も経つから… 820 00:58:13,363 --> 00:58:18,443 尋常ではないことを 成し遂げたと思うと感無量だ 821 00:58:19,883 --> 00:58:23,003 “ピンク・フロイド 狂気〟 822 00:58:31,043 --> 00:58:34,723 フェラの音楽は至る所に 1971年 823 00:58:38,603 --> 00:58:43,803 フェラに初めて会ったのは 第3スタジオだった 824 00:58:44,443 --> 00:58:50,043 見るからにリーダー格で カリスマ性を感じた 825 00:58:50,163 --> 00:58:54,403 個性も強いが チャーミングな男だった 826 00:58:50,163 --> 00:58:56,443 プロデューサー ジェフ・ジャラット 827 00:58:54,523 --> 00:58:57,603 だがスタジオに入った途端—— 828 00:58:58,003 --> 00:58:59,603 別人に変わった 829 00:58:59,723 --> 00:59:04,163 天才的な音楽家に 変わったんだ 830 00:59:04,283 --> 00:59:05,163 ジェフ 831 00:59:05,683 --> 00:59:06,563 テイクを… 832 00:59:06,683 --> 00:59:07,963 録るよ フェラ 833 00:59:08,083 --> 00:59:08,683 そうか 834 00:59:08,803 --> 00:59:14,323 レコーディング初日に アルバムの大半を録った 835 00:59:10,683 --> 00:59:12,843 “フェラ・クティ〟 836 00:59:14,443 --> 00:59:16,323 点灯したら始めて 837 00:59:21,243 --> 00:59:27,803 第3スタジオ 1971年 “EKO ILE〟 838 00:59:29,763 --> 00:59:32,723 少し疲れた 聴かせて 839 00:59:35,483 --> 00:59:39,803 ナイジェリア ラゴス 840 00:59:43,443 --> 00:59:45,563 私は1936年に生まれ—— 841 00:59:45,683 --> 00:59:50,203 フェラのバンドには 1965年2月に加わった 842 00:59:46,043 --> 00:59:50,203 ババ・アニ 843 00:59:52,483 --> 00:59:55,803 私はバリトンサックスだった 844 00:59:59,763 --> 01:00:04,723 当時 ナイジェリアで レコーディングしようとしたが 845 01:00:04,963 --> 01:00:08,243 スタジオの環境が よくなかった 846 01:00:10,843 --> 01:00:15,483 そこでフェラが 強く推したスタジオが—— 847 01:00:15,723 --> 01:00:19,203 ロンドンの アビイ・ロード・スタジオだった 848 01:00:19,883 --> 01:00:21,963 レコーディングは—— 849 01:00:22,083 --> 01:00:26,563 一流のスタジオでしたいと 彼が主張したんだ 850 01:00:26,883 --> 01:00:29,883 “EMI アビイ・ロード・スタジオ〟 851 01:00:30,763 --> 01:00:34,283 2度目にスタジオに 集まった時—— 852 01:00:35,163 --> 01:00:38,243 ジンジャー・ベイカーも 来ていた 853 01:00:38,363 --> 01:00:43,283 だからライヴにして アルバムを録ることにした 854 01:00:43,403 --> 01:00:44,763 その夜にね 855 01:00:44,883 --> 01:00:48,483 ジンジャー・ベイカー 拍手をどうぞ! 856 01:00:47,883 --> 01:00:54,363 第3スタジオ 1971年 “YE YE DE SMELL〟 857 01:00:48,963 --> 01:00:54,603 フェラが行くことは すでに知れ渡っていた 858 01:00:54,723 --> 01:00:59,123 彼や私たちの友人が 現地にいたから—— 859 01:00:59,243 --> 01:01:02,723 そのニュースは 一気に広がった 860 01:01:02,843 --> 01:01:06,003 “フェラとバンドが来る!〟と 861 01:01:06,963 --> 01:01:09,083 心配ない 十分だ 862 01:01:07,403 --> 01:01:08,923 “フェラ・クティ ライヴ〟 863 01:01:09,203 --> 01:01:12,003 レコードは回ってる 始めよう 864 01:01:26,563 --> 01:01:31,003 トニー・アレンがいた 彼はドラムだ 865 01:01:31,123 --> 01:01:35,243 ジンジャー・ベイカーも ドラムだった 866 01:01:36,643 --> 01:01:42,083 ロンドンに発つ前に リハーサルは済ませていた 867 01:01:42,803 --> 01:01:44,723 とても重要なことだ 868 01:01:44,843 --> 01:01:49,323 スタジオに行くまでの間に—— 869 01:01:49,603 --> 01:01:52,963 すべての音が 全員の体に入っている 870 01:02:22,603 --> 01:02:25,643 世界中で受け入れられた 871 01:02:26,123 --> 01:02:30,243 アフリカやナイジェリアに 留まらず世界中でね 872 01:02:30,363 --> 01:02:35,443 今ではフェラの音楽が至る所で 聴かれている 873 01:02:44,243 --> 01:02:48,163 EMIとタイタニック号の 違いは? 874 01:02:48,283 --> 01:02:51,083 タイタニックには 名バンドがいたこと 875 01:02:56,483 --> 01:03:00,483 1979年はレコード業界にとって 絶望の年です 876 01:03:00,603 --> 01:03:05,243 60年代のバンドのレコードは もう売れません 877 01:03:12,043 --> 01:03:14,643 セール・オブ・ ザ・センチュリー 878 01:03:14,763 --> 01:03:16,043 1979年 879 01:03:17,243 --> 01:03:20,603 入社は1979年5月でした 880 01:03:21,443 --> 01:03:24,923 当時は 小さなスタジオが増え—— 881 01:03:22,083 --> 01:03:28,683 スタジオ・マネージャー コレット・バーバー 882 01:03:25,043 --> 01:03:28,883 正直 このスタジオの 料金は高かった 883 01:03:30,403 --> 01:03:35,163 ケン・タウンゼンドから 電話で こう言われた 884 01:03:35,283 --> 01:03:38,443 “所有権が別グループに 渡ることに〟 885 01:03:38,563 --> 01:03:41,723 先方の会計士が スタジオに来て—— 886 01:03:41,843 --> 01:03:43,883 “こんなゴミが必要?〟 887 01:03:44,043 --> 01:03:46,323 “全部 売り払おう〟と 888 01:03:46,763 --> 01:03:47,683 ケンが—— 889 01:03:47,803 --> 01:03:52,043 “引き取ってくれる? 大切にしてくれる人がいい〟と 890 01:03:52,163 --> 01:03:54,563 かなりの機材を引き取ったよ 891 01:03:54,843 --> 01:03:59,843 1980年の出来事だ 物が大量にあったから—— “世紀の大売り出しセール・オブ・ザ・センチュリー〟 892 01:04:00,243 --> 01:04:03,923 2日間にわたって セールを実施した “EMIスタジオ/ アビイ・ロード〟 893 01:04:04,083 --> 01:04:08,323 アビイ・ロードのために ケンは全力を尽くした 894 01:04:08,563 --> 01:04:10,763 力の限り奮闘してくれたわ 895 01:04:10,963 --> 01:04:14,283 暇を持て余す状態だったから 896 01:04:17,123 --> 01:04:20,883 第1スタジオは 何ヵ月も空いていた 897 01:04:21,003 --> 01:04:25,883 白いテープで印を付け バドミントンのコートを作った 898 01:04:26,363 --> 01:04:29,243 昼休憩に よく行ったものだ 899 01:04:34,043 --> 01:04:36,083 ウワサも飛び交った 900 01:04:36,203 --> 01:04:40,323 スタジオを細かく区切って 小部屋を作るとか—— 901 01:04:40,443 --> 01:04:45,083 駐車場にするって話まで バカらしかったけど—— 902 01:04:45,203 --> 01:04:47,123 計画書を見た人がいたの 903 01:04:47,243 --> 01:04:48,403 “第1スタジオ計画書〟 904 01:04:48,523 --> 01:04:52,283 新規開拓するべく 手を打つ必要があった 905 01:05:00,563 --> 01:05:04,603 “スター・ウォーズ〟を 誰が断る? 1980年 906 01:05:04,723 --> 01:05:09,003 アビイ・ロードに来られて 光栄だった 907 01:05:07,523 --> 01:05:12,963 ジョン・ウィリアムズ 908 01:05:09,123 --> 01:05:12,003 ハリソン・フォードも 映画も見事で—— 909 01:05:12,123 --> 01:05:13,563 いい雰囲気だった 910 01:05:13,683 --> 01:05:15,963 トランペットの轟音が—— 911 01:05:14,363 --> 01:05:16,763 第1スタジオ 1981年 砂漠 912 01:05:16,083 --> 01:05:20,283 屋根を吹き飛ばしそうで 楽しかったよ 913 01:05:16,883 --> 01:05:19,243 “レイダース/ 失われたアーク 聖櫃〟 914 01:05:26,603 --> 01:05:32,243 デンハムにある映画撮影用の 防音スタジオが閉鎖と聞き—— 915 01:05:32,363 --> 01:05:36,563 ケンがアビイ・ロードとの 業務提携を持ちかけたの 916 01:05:37,283 --> 01:05:41,643 35ミリの映写機を 第1スタジオに設置した 917 01:05:41,763 --> 01:05:45,403 巨大スクリーンも準備した 918 01:05:45,523 --> 01:05:51,123 生き残りをかけて 収益を上げるための手段だった 919 01:05:54,243 --> 01:05:56,643 私たちは ロンドンが気に入り—— 920 01:05:56,763 --> 01:06:01,203 アビイ・ロードに着いた時は みんなで喜んだよ 921 01:06:01,323 --> 01:06:03,563 スタジオの雰囲気が—— 922 01:06:03,683 --> 01:06:05,203 まるで違った 923 01:06:05,683 --> 01:06:10,123 アビイ・ロードは明るく新鮮で 楽しく過ごせた 924 01:06:10,403 --> 01:06:13,603 映画も公開後 観客に愛された 925 01:06:13,723 --> 01:06:16,723 何もかもが うまくいった 926 01:06:17,403 --> 01:06:20,403 再び訪れるだろうと確信した 927 01:06:20,843 --> 01:06:23,843 必ず戻るって分かってた 928 01:06:24,163 --> 01:06:27,323 “スター・ウォーズ/ ジェダイの復讐〟で—— 929 01:06:27,443 --> 01:06:29,803 再会できて感激だった 930 01:06:29,923 --> 01:06:33,683 “スター・ウォーズ〟の仕事を 断る人がいる? 931 01:06:45,523 --> 01:06:49,043 “スター・ウォーズ〟の作曲に 着手した頃—— 932 01:06:49,283 --> 01:06:53,403 書けば書くほど 交響楽団が必要だと感じた 933 01:06:53,523 --> 01:06:57,443 大人数のバンド程度では 足りなかった 934 01:06:58,003 --> 01:07:00,203 すると音楽ディレクターが—— 935 01:07:00,483 --> 01:07:03,923 “ロンドンで 交響楽団を雇っては?〟と 936 01:07:04,203 --> 01:07:08,643 私は“名案だ ロンドン交響楽団とやろう〟と 937 01:07:09,403 --> 01:07:12,723 ゾクゾクしたよ 当時から言ってるが—— 938 01:07:12,843 --> 01:07:15,603 ロールス・ロイスを 運転するように—— 939 01:07:15,723 --> 01:07:20,683 “最高だ! サウンドも響きも バランスも すばらしい〟と 940 01:07:25,243 --> 01:07:29,043 まずアビイ・ロードで 感動したのは—— 941 01:07:30,163 --> 01:07:33,603 フルオーケストラで 聴いた時だ 942 01:07:30,403 --> 01:07:35,723 ジョージ・ルーカス 943 01:07:33,723 --> 01:07:36,683 一度 通してから 調整していく 944 01:07:37,123 --> 01:07:39,483 6M7ニュー テイク106 945 01:07:39,603 --> 01:07:43,443 思わず息をのんだ プレゼントを開けた時と同じだ 946 01:07:46,483 --> 01:07:52,043 第1スタジオ 1999年 “運命の闘い〟 947 01:08:05,923 --> 01:08:09,843 アビイ・ロードで録ろうと 思ったのは—— 948 01:08:09,963 --> 01:08:14,123 前回の成功もあり 必ず戻りたいと思ったからだ 949 01:08:14,763 --> 01:08:18,843 今日に至るまで 他のスタジオは考えられない 950 01:08:19,083 --> 01:08:20,203 完ぺきだ 951 01:08:20,523 --> 01:08:22,043 今のが欲しかった 952 01:08:22,163 --> 01:08:22,963 よかった 953 01:08:23,083 --> 01:08:26,603 ジョニーとのレコーディングが 一番 楽しかった 954 01:08:26,723 --> 01:08:29,083 2つ目の我が家のようだった 955 01:08:30,083 --> 01:08:33,683 食堂へ行ったり 壁の写真を見たり 956 01:08:33,803 --> 01:08:37,643 スタジオで 1日8~10時間を過ごす 957 01:08:38,003 --> 01:08:41,083 居心地いいことが 何より大切だ 958 01:08:41,203 --> 01:08:44,923 あの食堂はイギリス流で アメリカとは違う 959 01:08:45,083 --> 01:08:49,523 アメリカのスタジオにも 食堂はあるが酒は出さない 960 01:08:49,883 --> 01:08:53,443 かと言って休憩が 長引くこともなかった 961 01:08:53,563 --> 01:08:59,323 みんな 昼食から戻ると リラックスしてて効果的だね 962 01:09:03,443 --> 01:09:04,363 美しい曲だ 963 01:09:04,483 --> 01:09:05,323 問題ない? 964 01:09:05,443 --> 01:09:08,243 もちろん 重要なシーンだ 965 01:09:10,723 --> 01:09:14,443 アビイ・ロードは とても独特なスタジオだ 966 01:09:15,363 --> 01:09:18,443 第1スタジオ 2005年 967 01:09:16,003 --> 01:09:20,603 スタジオ自体が 音を作ってくれる 968 01:09:18,563 --> 01:09:21,803 “アナキン対 オビ=ワン〟 969 01:09:21,923 --> 01:09:25,723 サイズや構造は完ぺきに見えず 狭く感じた 970 01:09:27,843 --> 01:09:29,923 まるで靴箱だ 971 01:09:30,123 --> 01:09:31,923 それに対して—— 972 01:09:32,043 --> 01:09:37,523 ハリウッドにあるような 古い撮影所だと大音量になる 973 01:09:37,643 --> 01:09:41,123 いつまでも音が響き 広がりは出るが—— 974 01:09:41,603 --> 01:09:46,203 アーティキュレーションや 楽器の音色が損なわれる 975 01:09:53,283 --> 01:09:56,083 アビイ・ロードは ほどよく乾燥していて 976 01:09:56,203 --> 01:09:57,803 反響しすぎない 977 01:09:57,923 --> 01:10:01,403 乾燥しすぎてもいないから 音が広がらず—— 978 01:10:01,523 --> 01:10:03,843 ちょうどいい響きになる 979 01:10:04,083 --> 01:10:05,843 ショーン 録ろう 980 01:10:05,963 --> 01:10:10,883 あの規模の楽団と映画音楽には 理想的なスタジオだ 981 01:10:11,243 --> 01:10:13,163 音楽へのギフトだよ 982 01:10:14,323 --> 01:10:17,323 第1スタジオ 2005年 983 01:10:17,443 --> 01:10:20,763 “新たなる希望/ エンド・クレジット〟 984 01:10:27,643 --> 01:10:31,283 考えもしなかったが 提案は正しかった 985 01:10:31,963 --> 01:10:36,243 匹敵するスタジオは 知る限りロンドンにはない 986 01:10:36,363 --> 01:10:38,043 恐らく世界中にね 987 01:10:42,803 --> 01:10:44,643 ブラボー 休憩しよう 988 01:10:47,323 --> 01:10:49,123 “ビートルズ 愛してる〟 989 01:10:55,323 --> 01:11:00,443 ブリット・ポップ世代 1996年 990 01:11:00,563 --> 01:11:06,083 “オアシス〟 991 01:11:00,963 --> 01:11:06,083 1997年に“ビィ・ヒア・ナウ〟を アビイ・ロードで録った時—— 992 01:11:06,203 --> 01:11:08,123 騒いで追い出された 993 01:11:08,243 --> 01:11:14,523 ノエル・ギャラガー 994 01:11:10,003 --> 01:11:13,083 当時は出禁を食らって 自慢した 995 01:11:13,203 --> 01:11:15,203 ストーンズは一度もない 996 01:11:15,443 --> 01:11:17,283 ここでパーティして—— 997 01:11:17,403 --> 01:11:21,283 追い出されたってウワサだが それは違う 998 01:11:21,363 --> 01:11:27,683 リアム・ギャラガー 999 01:11:21,363 --> 01:11:27,683 リアム・ギャラガー 1000 01:11:21,563 --> 01:11:24,083 俺たちが物を壊したとか… 1001 01:11:24,203 --> 01:11:29,523 ここで物を壊すヤツは 自分をブン殴れってんだ 1002 01:11:29,643 --> 01:11:34,363 アビイ・ロードから 退去させられた理由は… 1003 01:11:34,763 --> 01:11:37,043 ある晩 電気を消して—— 1004 01:11:37,483 --> 01:11:41,843 ビートルズのアルバムを ぶっ通しで流してた 1005 01:11:42,403 --> 01:11:44,003 大音量でガンガン 1006 01:11:44,123 --> 01:11:46,363 その時 壊れた物もある 1007 01:11:50,603 --> 01:11:53,763 俺たちは深夜まで残って—— 1008 01:11:53,883 --> 01:11:57,163 あの辺で飲みながら 聴き入ってた 1009 01:11:57,283 --> 01:12:00,883 “ラバー・ソウル〟や “サージェント・ペパー〟を 1010 01:12:01,003 --> 01:12:02,603 そりゃ ヤバいよな 1011 01:12:04,323 --> 01:12:07,843 最後のアルバムは ここで作った 1012 01:12:08,083 --> 01:12:10,043 第2スタジオ 2007年 1013 01:12:10,163 --> 01:12:11,643 “ショック・オブ・ ザ・ライトニング〟 1014 01:12:10,283 --> 01:12:13,883 2回目に オアシスが来た時は—— 1015 01:12:14,003 --> 01:12:17,443 心地よく過ごせる場所を 用意したの 1016 01:12:17,883 --> 01:12:21,363 リラックスできるように 長椅子も置いた 1017 01:12:23,563 --> 01:12:26,883 朝9時頃 スタジオに 下りていったら—— 1018 01:12:27,003 --> 01:12:30,163 リアムがステキな帽子を かぶってた 1019 01:12:30,883 --> 01:12:35,763 私が“こんな早い時間に 予想外だわ〟と言うと—— 1020 01:12:35,883 --> 01:12:40,723 “アビイ・ロード初日だから 早起きして服を考えてた〟と 1021 01:12:49,043 --> 01:12:52,003 最初にスタジオ入りして 最後に出た 1022 01:12:52,283 --> 01:12:54,283 テンション 上げないとな 1023 01:12:54,403 --> 01:12:59,403 駆け込んで来たり “出番で呼べ〟なんてダメだ 1024 01:12:59,523 --> 01:13:04,643 ここの空気を 血管に染み込ませて臨む 1025 01:13:04,763 --> 01:13:06,563 魂までな 1026 01:13:08,083 --> 01:13:11,123 アビイ・ロードは教会と同じだ 1027 01:13:11,883 --> 01:13:15,043 あれが最後のアルバムになった 1028 01:13:15,163 --> 01:13:16,763 “ディグ・アウト・ ユア・ソウル〟 1029 01:13:26,003 --> 01:13:30,523 収集したレコードの大半は ここで作られた 1030 01:13:30,963 --> 01:13:33,563 自分の音楽も ここから生まれ—— 1031 01:13:33,683 --> 01:13:35,803 髪形も ここからだ 1032 01:13:36,683 --> 01:13:40,083 俺たちを超える ビートルズファンはいない 1033 01:13:44,123 --> 01:13:46,683 もし 60年代に—— 1034 01:13:46,883 --> 01:13:49,723 自分が20代だったら 最高だった 1035 01:13:49,843 --> 01:13:51,683 ビートルズに出会い—— 1036 01:13:51,803 --> 01:13:54,323 ストーンズ ザ・フー ザ・キンクスと… 1037 01:13:54,443 --> 01:13:55,883 すごい時代だ 1038 01:13:56,003 --> 01:13:57,843 音楽はドラッグだ 1039 01:13:58,963 --> 01:13:59,883 分かる? 1040 01:14:00,003 --> 01:14:01,643 分からないかもな 1041 01:14:01,763 --> 01:14:05,883 スウィングでもいいが 音楽っていうのは… 1042 01:14:06,003 --> 01:14:08,923 戦争の時代が過ぎて… 1043 01:14:09,443 --> 01:14:13,843 音楽はドラッグとか ミニスカートとか… 1044 01:14:13,963 --> 01:14:18,443 何でもいいが 誰もが リラックスして音楽を楽しんだ 1045 01:14:20,483 --> 01:14:24,803 あとに続いた世代は 過去を振り返りがちだ 1046 01:14:24,923 --> 01:14:28,923 だが戦争の惨禍を 経験した世代は—— 1047 01:14:29,283 --> 01:14:31,643 ノスタルジーに浸らない 1048 01:14:32,723 --> 01:14:37,123 食べ物の配給や電撃戦には うんざりで 前を向いた 1049 01:14:37,243 --> 01:14:38,643 感謝しかない 1050 01:14:38,763 --> 01:14:43,323 60年代のバンドが 究極の音楽芸術を与えてくれた 1051 01:14:55,603 --> 01:14:58,883 アビイ・ロードは 過去のスタジオではなく—— 1052 01:14:59,003 --> 01:15:01,603 未来のスタジオでもある 1053 01:15:05,523 --> 01:15:09,403 俺の考えが古いのか ここを愛するがゆえか—— 1054 01:15:06,683 --> 01:15:12,443 ナイル・ロジャース 1055 01:15:09,523 --> 01:15:12,843 アビイ・ロードを 分かち合いたいと思う 1056 01:15:14,003 --> 01:15:18,603 他人が影響を受けた音楽を 分かち合うことで—— 1057 01:15:17,283 --> 01:15:20,323 アイヴァー・アカデミー ライジング・スター 1058 01:15:18,723 --> 01:15:20,923 俺は音楽を学んできた 1059 01:15:20,443 --> 01:15:23,803 ソングライティング・ キャンプ 1060 01:15:21,043 --> 01:15:21,643 君は? 1061 01:15:21,763 --> 01:15:22,363 エリス 1062 01:15:22,483 --> 01:15:24,363 そう発音するのか 1063 01:15:25,043 --> 01:15:30,683 膨大な数のロックンロールの レコードが ここで作られた 1064 01:15:32,003 --> 01:15:36,283 たまたま そうだったとは 人々は思わない 1065 01:15:39,723 --> 01:15:43,963 アビイ・ロードでは 魔法が起きると思われてる 1066 01:15:44,323 --> 01:15:49,003 でも正直 魔法は アーティストの中にあるものだ 1067 01:15:50,923 --> 01:15:54,883 だがアーティストというのは 迷信深い 1068 01:15:55,643 --> 01:15:59,603 アビイ・ロードに一歩入ると 不思議にも—— 1069 01:15:59,843 --> 01:16:04,723 プロデューサーと アーティストの間に—— 1070 01:16:04,843 --> 01:16:09,123 求められる絆が ほぼ瞬時に生まれるんだ 1071 01:16:12,363 --> 01:16:15,963 だから俺が思うに アビイ・ロードは—— 1072 01:16:16,083 --> 01:16:19,283 それぞれの関係を 対等にしてくれる 1073 01:16:24,323 --> 01:16:26,923 音楽の好みは 人それぞれで… 1074 01:16:27,043 --> 01:16:27,643 情熱も 1075 01:16:27,763 --> 01:16:31,443 そう 情熱は ここの壁の中や—— 1076 01:16:28,283 --> 01:16:31,443 アシェイン・ホワイト 1077 01:16:31,563 --> 01:16:35,323 机の上や ここのすべての物に宿ってる 1078 01:16:31,563 --> 01:16:34,003 マチルダ・マン 1079 01:16:35,443 --> 01:16:39,123 そこから あふれ出てるというか—— 1080 01:16:39,243 --> 01:16:41,523 インスピレーションの 匂いがする 1081 01:16:41,643 --> 01:16:46,203 “伝説の人がいた部屋に 自分がいる〟と思うと—— 1082 01:16:46,323 --> 01:16:49,763 アビイ・ロードの 歴史の一部になれた気がする 1083 01:16:52,203 --> 01:16:53,443 楽しみ 1084 01:16:53,923 --> 01:16:56,243 そろそろ行くよ 1085 01:16:56,363 --> 01:16:57,483 ありがとう! 1086 01:16:58,323 --> 01:16:59,203 見て 1087 01:16:59,323 --> 01:17:01,083 いいね 1088 01:17:07,323 --> 01:17:12,363 この壁の中でアーティストは インスパイアされ—— 1089 01:17:12,483 --> 01:17:15,803 自分の創作の限界を 押し上げたのです 1090 01:17:14,963 --> 01:17:21,003 1981年 アビイ・ロード 50周年 1091 01:17:16,643 --> 01:17:19,083 ケイト・ブッシュも その1人で—— 1092 01:17:19,203 --> 01:17:23,723 3枚目のアルバムを 自身でプロデュース 1093 01:17:26,963 --> 01:17:29,003 第2スタジオには—— 1094 01:17:27,363 --> 01:17:32,563 声…ケイト・ブッシュ 1095 01:17:29,123 --> 01:17:32,563 ビートルズが使った 真空管コンソールが残ってた 1096 01:17:33,803 --> 01:17:38,043 ライヴ・ルームも 彼らの時代から そのまま 1097 01:17:38,163 --> 01:17:39,643 塗装し直すと—— 1098 01:17:39,763 --> 01:17:44,123 サウンドが変わってしまうと 懸念されたからよ 1099 01:17:48,443 --> 01:17:51,643 第2スタジオ 1981年 1100 01:17:51,763 --> 01:17:54,923 “サット・イン・ ユア・ラップ〟 1101 01:17:52,883 --> 01:17:57,003 第2スタジオで MVを撮影した 1102 01:18:07,603 --> 01:18:11,443 すごく楽しかったし 初の監督作だった 1103 01:18:11,963 --> 01:18:15,963 多くのスタジオが閉鎖される中 アビイ・ロードは—— 1104 01:18:16,083 --> 01:18:19,963 生き残ってきた上に 進化し続けてる 1105 01:18:24,683 --> 01:18:28,683 第1スタジオは オーケストラ演奏用でした 1106 01:18:29,163 --> 01:18:30,683 初演奏は—— 1107 01:18:30,803 --> 01:18:34,763 エドワード・エルガーと ロンドン交響楽団 1108 01:18:35,403 --> 01:18:38,643 あれから約70年後 カニエ・ウェストと—— 1109 01:18:38,763 --> 01:18:41,563 ジョン・レジェンドが 原点に戻します 1110 01:18:44,883 --> 01:18:49,243 アビイ・ロードの歴史は もちろん知っていた 1111 01:18:45,963 --> 01:18:52,203 声…カニエ・ウェスト 1112 01:18:49,763 --> 01:18:53,603 だからこそ意義があると 感じたんだ 1113 01:18:53,723 --> 01:18:56,243 膨大な時間と労力を費やし—— 1114 01:18:56,363 --> 01:19:00,403 この日を迎えるために 練習を重ねてきた 1115 01:19:00,523 --> 01:19:02,843 伝統に恥じぬようにね 1116 01:19:02,963 --> 01:19:07,323 伝説のスタジオの神秘性に 応えたかった 1117 01:19:15,523 --> 01:19:17,403 第1スタジオ 2005年 1118 01:19:17,523 --> 01:19:20,203 “ハード・エム・セイ 客演 ジョン・レジェンド〟 1119 01:19:34,843 --> 01:19:37,403 アビイ・ロードでの パフォーマンスは—— 1120 01:19:37,523 --> 01:19:41,963 ミュージシャンやラッパーに 憧れるのと同じで—— 1121 01:19:42,083 --> 01:19:44,243 雲の上の話なんだ 1122 01:19:44,363 --> 01:19:48,083 この話が持ち上がった時 “本当に?〟と 1123 01:19:52,123 --> 01:19:57,443 オーケストラ演奏も多く 弦楽器とも絡むから—— 1124 01:19:57,563 --> 01:20:01,923 別次元のパフォーマンスを 披露できると思った 1125 01:20:02,043 --> 01:20:04,523 異世界のヒップホップだ 1126 01:20:11,363 --> 01:20:13,483 アビイ・ロードにいると—— 1127 01:20:13,603 --> 01:20:17,963 菓子屋にいる子供や 画材屋にいる芸術家と同じで 1128 01:20:18,083 --> 01:20:21,283 “あれも! これも!〟と 興奮してくる 1129 01:20:21,403 --> 01:20:25,803 ジョンのピアノに インストにオーケストラ 1130 01:20:26,803 --> 01:20:30,683 やりたいことが 頭の中を駆け巡るんだ 1131 01:20:36,323 --> 01:20:37,563 ありがとう 1132 01:20:58,363 --> 01:21:01,723 第1スタジオ 2021年 1133 01:21:01,843 --> 01:21:04,683 “ヒア・マイ・ ヴォイス〟 1134 01:21:03,923 --> 01:21:07,563 初めて ここに来た時の 衝撃は忘れない 1135 01:21:07,683 --> 01:21:11,323 何でも初めてのことは 忘れないでしょ? 1136 01:21:11,443 --> 01:21:14,883 多くの人が この場所を経て—— 1137 01:21:15,003 --> 01:21:18,963 人の見方を変えるような 音楽を残し—— 1138 01:21:19,083 --> 01:21:22,123 大きな影響を与えてきた 1139 01:21:22,603 --> 01:21:25,683 その音楽が 自分のパフォーマンスを—— 1140 01:21:25,803 --> 01:21:29,283 もっと高めようと 奮い立たせてくれる 1141 01:21:30,123 --> 01:21:32,843 この空間には何かがある 1142 01:21:33,683 --> 01:21:37,763 それを読み解き 受け止められたら—— 1143 01:21:35,683 --> 01:21:41,443 セレステ 1144 01:21:37,883 --> 01:21:42,323 人の心を揺さぶる 純粋に美しいものを生み出せる 1145 01:21:59,363 --> 01:22:02,803 これほどの 歴史が刻まれた場所は—— 1146 01:22:02,923 --> 01:22:06,963 まさに聖地であり 伝説の先人が経ていった 1147 01:22:07,203 --> 01:22:09,363 誰もが ここに来たがるのは—— 1148 01:22:09,483 --> 01:22:12,483 アビイ・ロードのサウンドが 欲しいからだ 1149 01:22:18,963 --> 01:22:22,523 過ぎゆく時間の中で—— 1150 01:22:22,643 --> 01:22:26,083 人とつながり合えることは 貴重だ 1151 01:22:26,203 --> 01:22:30,683 感情や愛に 心が満たされることも 1152 01:22:30,803 --> 01:22:33,803 それがアビイ・ロードで起きた 1153 01:22:33,923 --> 01:22:36,003 とても特別だった 1154 01:22:40,243 --> 01:22:43,843 僕は第2スタジオの隅で 生まれたと感じる 1155 01:22:44,163 --> 01:22:46,763 このアビイ・ロードが—— 1156 01:22:46,883 --> 01:22:50,523 僕に命を与えて 生き方を教えてくれた 1157 01:22:52,523 --> 01:22:55,683 ここで始まり いつか ここで終わりたい 1158 01:22:55,803 --> 01:22:58,923 それほど僕には大きな存在だ 1159 01:23:06,443 --> 01:23:10,403 スタジオには 同じ志を持つ者が集まる 1160 01:23:10,523 --> 01:23:14,163 レコード店やパブ サッカー場と同じだ 1161 01:23:14,283 --> 01:23:15,883 スタジオで—— 1162 01:23:16,683 --> 01:23:20,483 他のミュージシャンと 音楽を作るのは—— 1163 01:23:21,243 --> 01:23:25,843 スピリチュアルなことだ 大げさでも何でもない 1164 01:23:30,443 --> 01:23:33,603 アビイ・ロードには 遺のこすべきものがある 1165 01:23:33,723 --> 01:23:38,163 ティーポットを きれいに 洗わないのと似ている 1166 01:23:38,283 --> 01:23:42,763 あえて茶渋を残すことで 風味が増していく 1167 01:23:42,883 --> 01:23:44,683 スタジオもそうだ 1168 01:23:46,163 --> 01:23:49,203 第2スタジオに 下りていくと—— 1169 01:23:49,323 --> 01:23:53,403 偉大な音楽が 壁に染み込んでる気がする 1170 01:23:56,163 --> 01:23:58,723 ここで録ってきた曲は—— 1171 01:23:59,443 --> 01:24:03,363 どれも忘れがたく 大切な思い出だ 1172 01:24:03,523 --> 01:24:07,043 一緒に仕事してきた人々は すばらしかった 1173 01:24:08,923 --> 01:24:12,443 かけがえのない思い出が 詰まってる 1174 01:24:15,483 --> 01:24:18,163 壁が歌ってくれたらね 1175 01:24:30,003 --> 01:24:32,363 会ってほしい人がいるの 1176 01:24:32,483 --> 01:24:33,123 誰かな? 1177 01:24:33,243 --> 01:24:34,283 やあ! 1178 01:24:35,763 --> 01:24:37,363 撮影はどうだ? 1179 01:24:37,483 --> 01:24:38,403 順調よ 1180 01:24:38,523 --> 01:24:39,523 終わった 1181 01:24:39,643 --> 01:24:40,283 もう? 1182 01:24:40,403 --> 01:24:41,563 ああ 1183 01:24:41,683 --> 01:24:43,363 愛してる 元気で 1184 01:24:43,483 --> 01:24:44,163 ああ 1185 01:24:44,283 --> 01:24:46,163 それじゃ また 1186 01:24:46,363 --> 01:24:48,083 あの音楽のファンで? 1187 01:24:48,203 --> 01:24:48,923 あら 1188 01:24:49,043 --> 01:24:50,763 もう1回 聞いて 1189 01:24:53,403 --> 01:24:54,923 これは うれしい 1190 01:24:56,843 --> 01:24:57,963 すばらしい 1191 01:25:00,163 --> 01:25:03,003 すごい顔ぶれだ 俺の写真は? 1192 01:25:06,563 --> 01:25:08,803 轢ひかれちゃう! 1193 01:25:10,243 --> 01:25:12,483 電源が切れてる 無理だ 1194 01:25:12,603 --> 01:25:13,523 “15〟を 1195 01:25:13,643 --> 01:25:14,323 そうか 1196 01:25:14,443 --> 01:25:15,803 次は“Play〟 1197 01:25:22,203 --> 01:25:23,483 おしまい! 1198 01:28:10,563 --> 01:28:12,563 日本版字幕 渡邉 貴子